10日先までの風況・波浪を高精度で予測 ~ 総合技術コンサルタント 西日本技術開発 火力本部 ~
2025/02/06

九州電力グループの西日本技術開発が、10日先までの風況・波浪を高精度で予測するシステムを開発した。比較的低コストで洋上風車の安全な作業期間を判定し、漁業への活用も視野に入れている。
メイン画像:北九州市響灘の建設工事(写真提供 ひびきウインドエナジー)
国内で初めて実用化された
甑島の風力開発に取り組む
「1990年に国内で初めて実用化された鹿児島県甑島の風力発電所の建設に従事して以来、これまでに民間企業や自治体の多くの風力開発に携わってきました」。西日本技術開発は、九電グループの総合技術コンサルタント。約40年前から風力発電の調査・設計・建設などに取り組んできた。同社再エネグループの川島泰史さんは「九州の電力事業と社会基盤整備を支えてきた確かな技術力を活かして、風力発電の建設コンサルタントとして成長してきました」と胸を張る。
同社の従業員数は約630人。福岡市中央区の本社を中心として東京事務所、九州管内6営業所、原子力事業本部2事業所、九州管内4出張所、海外(ジャカルタ)事業所を拠点に事業展開を行っている。風力発電に関しては、火力・土木・環境の部門が連携し、事業化検討から調査・設計、運用支援までワンストップで対応できるのが強みだ。
北九州響灘の事業で
技術的ノウハウを蓄積
西日本技術開発は、2023年5月に工事を開始した北九州響灘ウインドファームの設計業務に携わり、洋上風力発電事業の技術的ノウハウを蓄積した。この事業は、九電みらいエナジーなど5社で設立した「ひびきウインドエナジー」が出力9600kWの風車を25基設置する。
北九州響灘の事業では、「許認可手続き」、「風車最適配置の検討」、「日本海事協会のウインドファーム認証(サイト風条件)の対応」、「電気事業法に基づく工事計画届出」などの業務を担当している。
風況と波の高さを
10日先まで高精度で予測
洋上風車の工事は陸上風車に比べて、気象条件に大きく左右される。同社の洋上風力海上作業支援風況・波浪予測システム(WANOP)は、10日先までの風況や波の高さなどを高精度で予測し、グラフィックで表示する。これにより、海上工事の種類・使用する船舶別の安全な作業期間を判定できる。地理情報システムの技術を活用して10日先までの気象情報をマップ化するとともに、国土交通省リアルタイムナウファス情報をAI統計手法によって補正し、波の高さの予測精度を向上させた。
WANOPは、比較的低コストで利用できるのが特徴だ。海上工事が本格化している北九州響灘ウインドファームにも導入されている。洋上風車の建設期間のみならず、運転開始後の維持・管理や保守作業でも活用できる。風況・波浪データを地元の漁業関係者に提供して、操業の安全・安心に貢献することも視野に入れている。今後、システムの運用実績を積み重ね、発電事業者や施工業者に対して積極的に導入をはたらきかけていく考えだ。
電気信号を解析して
いち早く異常を検知
風力発電設備は、運転中の故障リスクと隣り合わせだ。同社の電気信号解析技術を活用すれば、故障リスクを大幅に軽減できる。軸受や発電機などの重要部品の状態をリアルタイムで詳細に監視し、電気信号を解析していち早く異常を検知する。不具合の早期特定と計画的な修理が実現し、突発的な故障リスクを最小化する。その結果、修理コストを大幅に削減し、設備の稼働率を最大限に向上させることができる。
この技術は、設備に対して非侵襲的な方法を取ることで、風車に物理的な影響を与えることなく、幅広い種類の風車に適用できるのが特徴だ。これまでに約20基の陸上風車で診断を実施している。発電機軸受やスリップリングの異常の予兆を検知し、風車が故障して停止する前に部品を交換した。この技術は、株式会社TRIPOD、九州大学応用力学研究所(内田孝紀研究室)とともに特許出願中。(特願2024-20382)
西日本技術開発は、社会基盤を支えるプロフェッショナルとして、日本におけるカーボンニュートラルの課題解決に貢献するとともに、風力発電業界や現場で働くみなさまにご満足いただけるサービスを提供していきたいとしている。
お問い合わせ
西日本技術開発株式会社
火力本部 火力技術部 再エネグループ
福岡市中央区渡辺通2-1-82
電気ビル共創館7F
電話 092-713-0516
WIND JOURNAL vol.8(2025年春号)より転載
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