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洋上風力モニタリング検討会初会合 追加的な環境保全措置などの事業上リスクも議論

環境省と経済産業省は7月30日、第1回洋上風力発電におけるモニタリング等に関する検討会を開催した。事業者向けのガイドライン策定に向けて、追加的な環境保全措置などの事業上リスクも議論する予定だ。

<目次>
1.年度内に事業者向けガイドライン案を策定
2.事業上のリスクも検討会で議論する予定
3.モニタリングは項目により選定事業者と国で分担


年度内に事業者向け
ガイドライン案を策定


洋上風力発電におけるモニタリングと順応的な取り組み(出典 環境省)

検討会のメンバーは、風力発電の専門家だけでなく、海洋産業の専門家や、野鳥・海洋生物の研究者なども名を連ねている。初会合では、法政大学名誉教授の田中充氏を座長に選任した。経産省産業保安・安全グループ電力安全課の前田 了課長が「2030年に向けて再生可能エネルギーを伸ばすため、新しいフロンティアとして洋上風力発電事業をしっかりやっていく。しかし、環境を見ていかないとサステナブルな取り組みにはならない。さまざまな視点から議論していただき、しっかりした制度をつくっていきたい」とあいさつした。

会議は、計4回開催される予定。案件形成の初期段階から政府や自治体が関与し、より迅速・効率的な調査を行うセントラル方式の検討の状況を見定めながら、今年度中にモニタリングに関する「事業者向けガイドライン案」を作成する。

事業上のリスクも
検討会で議論する予定


一般的な順応的な取り組み手法例(出典 環境省)

続いて、出席した委員が「モニタリングに関する基本的な考え方」と「想定されるモニタリング項目」について議論した。再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業は、建設前の環境影響評価手続き(環境アセスメント)を経て、建設工事、風力発電所の稼働へと移るが、モニタリングが行われるのは最後のフェーズである。事前の環境アセスメントだけでは把握できない影響も多々あるからだ。

モニタリングのデータは、将来的な政策や後続事業の環境保全措置に活用されるだけにとどまらず、洋上風車の稼働後に環境に重大な悪影響が出た場合は、選定事業者に対して追加的な環境影響の低減措置が求められる。

出席した委員からは、「モニタリングが調査のための調査であってはならない。追加措置を求める環境被害のレベルについてもガイドラインに盛り込むべき」といった意見が出された。

追加的な措置が求められた選定事業者は、場合によっては環境保全のために莫大な出費が必要になるおそれもある。そうした追加的な環境保全措置などの事業上のリスクについても、検討会で議論する予定だ。

環境省では、モニタリングの対象について、影響を及ぼす要因となるものと、影響を受けるものに区分けする方針を示している。たとえば、工事(打設・杭打ちなど)や稼働中の水中音などは前者であり、これは概ね選定事業者がモニタリングを行う。その一方で、バードストライクの発生状況や海生生物の生息状況などは後者だ。しかし、影響を受けるものについては選定事業者だけで調査するは難しいため、国が関与せざるを得ない。野鳥の飛行ルートの変化などは、選定事業者にモニタリングを任せるのは現実的に難しいからだ。

モニタリングは項目により
選定事業者と国で分担

検討会では、事務局から欧州の先進事例が紹介された。欧州では、モニタリング実施の主体は国によって異なる。日本では、国なのか選定事業者なのか、また具体的な役割分担も今後の議論を通じて詳細を決めていく。出席した委員からは、海洋状況や生態系が似ている台湾の事例も知りたいという意見が出された。

モニタリングで得られたデータの扱いについても意見交換した。英国では一般公開することを基本としているが、委員からは、海外ではそのデータが二次利用されることによって研究者の人材育成にも役立っているとの意見があった。モニタリングデータの分析は環境省が主体となって行うことになっているが、データの取り扱いをどうするのかについては、第3回の検討会で本格的に議論する予定だ。

そもそも、言葉としては、「モニタリング」の他にも、「アセスメントの事後調査」、「環境監視」など似たような言葉がいくつかある。次回以降の検討会では、そうした言葉の意味するところを整理していく必要がありそうだ。

DATA

洋上風力発電における第1回モニタリング等に関する検討会


取材・文/横山渉

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