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【東京汽船】洋上風力の発展へ一翼担うCTVのパイオニア企業

日本での洋上風力発電向け交通船(CTV=Crew Transfer vessel)のパイオニア企業がある。横浜市に本社を構え1947年の設立以来、曳船(タグボート)事業を中核として、水先艇、交通船、警戒船、グループ会社で観光船、カーフェリーなどを展開する東京汽船だ。齊藤宏之社長に洋上風力発電での取り組みについて迫った。

メイン画像:福島でのJCAT ONE

東京汽船の主力事業

――主力事業を教えてください。
東京湾全域で24時間・365日体制で曳船(タグボート)業務を行っています。港湾での船舶の離着岸支援作業であるハーバー業務、浦賀水道・中ノ瀬航路における危険物積載船や大型船の進路警戒であるエスコート業務、防災業務などです。海難事故の際の曳船の緊急時出動を強みとしています。東京湾外では各地において、地元の合弁会社を通して曳船事業に参画しています。

また、水先艇、交通船、警戒船、グループ会社では港湾観光船、水上バス、カーフェリーなどを運航しており、海上での人の安全や快適性に関わる業務を行っています。

各地の実証事業でCTVを運航

――洋上風力発電業界に関わった経緯と実績は?
2011年ごろ、欧州で洋上風力発電向けの特殊交通船業務があるというのを知り興味を持ち、2012年に英国で現地視察をしました。そして2013年12月から今年の6月まで福島浮体式洋上ウィンドファームの実証研究事業向けに日本初のCTV「JCAT ONE」を運航する機会に恵まれました。

当社と造船所は今後の沖合離岸距離が短い日本各地の洋上風力発電用に小型船舶型CTVとして「PORTCAT ONE」を開発し、銚子沖着床式洋上風力発電実証研究で運航しました。同船は現在、北九州のバージ型浮体式洋上風力発電の実証事業で運航しています。


銚子でのPORTCAT ONE

 


北九州でのPORTCAT ONE

また、秋田県で秋田洋上風力発電(AOW)が進めている洋上風力発電の建設用に、2021年春に新たに4隻を投入しましたので、現在、単体で6隻を運航しています。さらに、AOWのO&M(運営・保守)用CTVとして地元3社と当社が設立した合弁会社が2隻のCTVを保有しています。


能代港でのJCAT TWO

――CTV事業を開始した理由は?
まず、当社の企業ミッション(社是)である「海上安全のサポート」との親和性です。

CTVは洋上風力発電の建設やO&M(運用&維持管理)の段階において、厳しい海象条件の下でも洋上風車作業員の安全な輸送と洋上風車施設への安全な移乗を目的として設計された船舶で、洋上風車の建設工期短縮化と稼働率向上に貢献します。この「海上での人の安全確保」は当社の企業ミッションそのものです。また、当社はグループとして曳船の他に、交通船、水先艇、水上バス、観光船、ローカルのカーフェリーなどサイズがCTVと近い種々の船舶を運航していますので、技術的なシナジーが発揮できるという点もあります。


JCAT THREEの操舵室

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