千葉県銚子市 三菱商事系企業連合とエリアビジョン策定
2023/02/20
千葉県銚子市の越川信一市長は、同市沖で洋上風力発電事業を進めている三菱商事系企業連合に参加を求め、観光振興と地域振興を目的としたエリアビジョンを策定する考えを明らかにした。2月10日に開会した市議会定例会に、メンテナンス港として活用する名洗港の整備負担金やビジョン策定経費などの関連予算案を提出している。
銚子市の名洗港を
5年間で整備
千葉県銚子市沖の設備概要(出典 千葉銚子オフショアウィンド合同会社)
千葉県銚子市沖では、陸上工事が2025年1月から、洋上工事は2027年2月から開始する計画。運転開始は2028年9月の予定。発生した電気は約50キロ離れた東京電力新佐原変電所(千葉県香取市)を経て首都圏などに送られる。洋上風車の建設拠点は鹿島港(茨城県鹿嶋市)、操業・保守の拠点は名洗港(銚子市)とする。鹿島港は、洋上風力発電設備の設置などの基地港湾として国土交通省が整備を進める。名洗港は、千葉県が23年度から5年間で整備する方針。防波堤の建設や海底のしゅんせつや埠頭の整備などに総額約48億円がかかる見通しで、千葉県は2023年度予算案に初年度の調査や工事の費用を計上している。名洗港は、千葉県が改訂した港湾計画に基づき、洋上風力発電の建設補助・維持管理のための拠点港湾として長期的な活用を見込んでいる。
2月10日に開会した銚子市議会定例会では、2023年度の当初予算案が審議される。一般会計の総額は251億2,000万円で、前年度を5.2%上回る積極型予算となっている。洋上風力発電関連では、千葉県が進める「名洗港の整備負担金」として2億1354万円、三菱商事系企業連合と連携した漁業の共存・共栄策などを検討する「洋上風力推進経費」として320万円、「名洗~外川エリアビジョン策定経費」として500万円を計上している。
銚子市の越川市長は施政方針のなかで、「銚子市沖の洋上風力発電については、三菱商事を中心とする事業者から提出された計画が2022年12月、国の正式な認定を受けました。三菱商事は35年ぶりの国内支店を銚子市に開設し、同社の中西勝也社長は再エネは地域分散型電源であり、各地域の特色を生かした産業を興すと決意を述べています。銚子市はバラエティに富んだ「食のまち」として発展してきました。洋上風力により、再生可能エネルギーのまちという新たな特色が生まれます。人間が生きるうえで欠かせない食料とエネルギーを生産し供給する。地産地消ができる。これほど豊かな価値と魅力を持つまちはありません。洋上風力を新たなまちづくりのエネルギーに変え、銚子創生に挑んでまいります」と決意を述べた。
観光・地域振興へ
エリアビジョンを策定
風車景観とジオパークの調和を目指す屛風ヶ浦(千葉県銚子市)
「名洗~外川エリアビジョン策定経費」の500万円は、銚子市東南部の名洗港、周辺の外川漁港、銚子マリーナ、銚子マリーナ海水浴場、景勝地の屏風ケ浦を対象に、一体化のあり方や整備の手法などを幅広く検討するための費用。同市は、エリアビジョンの検討に三菱商事系企業連合の参加を求める方針。銚子市の越川市長は、「千葉県が改訂した名洗港港湾計画では、『風車景観とジオパークが調和したエコツーリズム拠点の形成』『海洋性レクリエーション活性化に資する銚子マリーナの拠点化』の方針が示されました。洋上風力を交流人口の拡大につなげ、名洗から外川に至る地域の魅力を高めるため、南海岸のエリアビジョンを策定します。マリーナ、海水浴場、屏風ケ浦、ジオパーク、千葉科学大学、名洗港、外川漁港、外川の街並み。こうした地域資源に、洋上風力の活用を加えたエリアビジョンを策定し、観光振興・地域振興を目指します」と説明する。
千葉県銚子市沖の公募占用計画では、「持続可能な漁業支援体制の構築」「地域産業・雇用の振興」「住民生活の支援」という地域共生策の3つの方針が示された。協力会社への出向による技術習得など、洋上風力発電関連の人材育成の具体策も盛り込まれている。三菱商事系企業連合は、地域住民全体のメリットにつながるような施策が実施できるよう、政府・自治体の助成制度や、グループ企業、協力企業のリソースを最大限活用していくと話している。
取材・文/高橋健一