【第2ラウンド動向】新潟県村上市、胎内市沖 東北電力が新たに参入
2023/02/22
国が事業者を公募している「新潟県村上市、胎内市沖」の洋上風力発電事業に新たに東北電力が参入の意思を表明し、環境影響評価の第1段階である計画段階環境配慮書の縦覧を2月22日から開始した。同海域の公募は7事業体が争う構図となり、競争がさらに激化するとみられている。
東北電力が
事業計画を公表
「新潟県村上市、胎内市沖」は、村上市の岩船港付近から胎内市と新発田市の境界にかけての海域。国が示した公募占用指針によると、促進区域の面積は9188.1ヘクタールで、最大出力は70万キロワット。再エネ海域利用法に基づく2回目の公募「第2ラウンド」の対象となる4海域のなかで、面積・最大出力ともに最も大きい。2022年12月28日から発電事業者の公募を開始し、2023年6月30日まで受け付ける。国による審査や第三者委員会による評価などを経て、2024年3月までに発電事業者が決まる見通し。
東北電力は2月22日に事業計画を公表した。計画では、村上市と胎内市の沖合に38~58基の洋上風車を設置し、最大出力は70万キロワット。1基あたりの出力は1万2000~1万8000キロワット。風力発電機の基礎構造は着床式で、モノパイル式とジャケット式を採用する。工事期間と運転開始時期は検討中としている。2月22日から3月23日まで、計画段階環境配慮書の縦覧を新潟県庁や村上市役所、胎内市役所などで実施するほか、同社のホームページでも公表する。「新潟県村上市、胎内市沖」は海域面積と最大出力が大きいため、これまでに国内外の6事業体が参入の意志を表明していたが、新潟県を事業エリアとする東北電力の動向が注目を集めていた。
東北電力は、2023年1月に秋田県の秋田、能代港湾区域で本格稼働した洋上風力発電事業に参画している。このほか、青森県つがる市、鰺ヶ沢町沖や岩手県久慈市沖で洋上風力発電の可能性調査を実施している。洋上風力発電公募の「第2ラウンド」では、「秋田県八峰町、能代市沖」で事業計画を公表して環境影響評価の手続きを進めている。
「新潟県村上市、胎内市沖」では、大成建設、本間組(新潟市)、コスモエコパワーが、2019年6月にいち早く事業計画を公表した。当初計画では、2028年度の営業運転開始を予定。洋上風力発電公募の「第1ラウンド」では、コスモエコパワーが「秋田県由利本荘市沖」に応札している。第2ラウンドでは、コスモエコパワーが「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」で環境影響評価を実施している。
RWE Renewables Japan 合同会社と三井物産、大阪ガスは、2021年4月に参入の意思を表明して環境影響評価を実施している。RWE Renewables Japan 合同会社は、ドイツに本社がある再エネ事業会社、「RWE Renewables」の日本法人。第1ラウンドでは、九電みらいエナジーなどとともに「秋田県由利本荘市沖」に応札している。第2ラウンドでも、九電みらいエナジーとともに「秋田県八峰町、能代市沖」で環境影響評価の手続きを進めている。三井物産と大阪ガスは、第2ラウンドでは「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」で事業計画を公表している。
大林組は、2021年9月に参入の意思を表明した。同社は、秋田、能代港湾区域の洋上風力発電事業に参画している。第1ラウンドでは、東北電力などとともに「秋田県能代市、三種町、男鹿市沖」に応札している。インベナジー・ウインド合同会社は、アメリカに本社がある北米最大の再エネ事業会社、「インベナジー」の日本法人。2022年2月に事業計画を公表して環境影響評価の手続きを進めている。同社は、北海道、東北、関東を中心に陸上風力発電事業を進めていて、山形県遊佐町沖でも洋上風力発電事業を計画している。
村上胎内洋上風力合同会社は、シンガポールを拠点にアジア太平洋地域で再エネ事業を展開する「ヴィーナ・エナジー」の日本法人の風力発電事業会社の100%子会社。2022年7月に参入の意思を表明した。ヴィーナ・エナジーの日本法人は、東北や北関東を中心に太陽光発電事業を進めている。青森県や熊本県に陸上風車を設置していて、茨城県鹿嶋市では鹿島港洋上風力発電事業に参画している。
住友商事は、2022年7月に事業計画を公表して環境影響評価の手続きを進めている。第1ラウンドでは、東京電力リニューアブルパワーなどとともに「秋田県能代市、三種町、男鹿市沖」に応札している。第2ラウンドでは、「長崎県西海市江島沖」でも環境影響評価を実施している。
新潟県沖の動向が
ラウンド全体に大きな影響
4海域の公募占用指針(出典 経済産業省)
「新潟県村上市、胎内市沖」は、同県を事業エリアとする東北電力が参入したことにより、さらなる競争の激化が予想される。事業者の選定を進めるうえで大きなカギを握るとみられているのが、今回から新たに導入される「落札制限」。国は、ひとつの事業体が大半の海域を落札しないよう、1事業体あたりの発電・送電容量の上限を計100万キロワットとする方針。仮にある事業体が最大出力70万キロワットの「新潟県村上市、胎内市沖」を落札すれば、ほかの海域の選考対象から除外される仕組みだ。「新潟県村上市、胎内市沖」の動向は、第2ラウンド全体の行方に大きな影響を与えそうだ。
DATA
新潟県村上市、胎内市沖洋上風力発電事業計画段階環境配慮書の縦覧について
取材・文/高橋健一