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【新春深堀り解説】大手電力と商社の浮体式洋上風力技術研究組合に期待

日本の浮体式実証で2海域ともにセミサブ型が選定されたように、海外でもセミサブ型の商用化が進む。一方で新たな動きとして、大手企業が連携して日本の浮体式技術を世界最先端に高めようという動きがある。

ポルトガル北部沖に
東京ガスが出資参画

セミサブ型は基礎となる構造物の半分が海に沈んでいるため、揺れが少なく浮体が安定するという。さらに海面までの喫水が浅いことから、港湾内などで組み立ててから設置場所まで船で引いて運べる利点もある。

世界的にみても、セミサブ型の事業開発が進んでいる。ポルトガル北部沖で稼働している「ウインドフロート・アトランティック」は、2020年7月から出力8000kWの浮体式風車3基が商業運転している。浮体式構造は米国企業プリンシプル・パワー社製のセミサブ型だ。東京ガスはプリンシプル・パワー社に出資している関係から、24年8月にこの浮体式風車の運営会社ウインドプラス社にも出資し、海外の浮体式事業に初めて参画した。東京ガスは今後、この事業で得た知見を活かして、日本国内での大規模商用化を目指す。

セミサブ型以外の浮体式構造にはスパー型やTLP型がある。スパー型はバラストで安定させた円筒形の構造物で、水中での重心を浮力の中心より低くすることで安定性を得る。釣り道具のウキのようなものだ。長崎県五島市沖で事業化を進めている浮体式洋上風力発電所は、スパー型の変形版であるハイブリッドスパー型だ。下部をコンクリート、上部を鋼で構成する細長い円筒形の浮体構造。コンクリートは重量単価が鋼の1/10程度であり、これを下部に用いることで、すべて鋼から構成される従来のスパー型よりもコストを下げられるうえに浮体の重心を下げることにより安定性も向上するという。

TLP型は半潜水型の浮体構造物で、張力係留索で海底に固定され、安定性を確保する。喫水が浅く張力が安定しているため、構造物の小型・軽量化が可能だが、係留索やアンカーシステムにかかる応力が大きくなるという。

浮体式実証の「フェーズ1」では、セミサブ型とともにTLP型やスパー型の低コスト化の研究開発が行われた。しかし、「フェーズ2」では2海域ともセミサブ型が採用されたので、低コスト化されたTLP型やスパー型を実海域で実証する予定はいまのところない。


 

浮体式洋上風力発電
技術研究組合が発足

グリーンイノベーション基金などの国の支援とは別に、大手電力会社や総合商社が連携して日本の浮体式技術を世界最先端に高めようという動きがある。

東京電力リニューアブルパワーや関西電力、JERA、中部電力、東北電力の大手電力会社や総合商社の再エネ事業子会社など14社は24年3月、「浮体式洋上風力発電技術研究組合」を、国の認可を受けて設立した。同組合の理事長はNTTアノードエナジーの寺﨑正勝執行役員グリーン発電本部長。寺﨑氏は、九電みらいエナジー取締役の時に北九州市響灘の洋上風力開発を主導した。

同組合は、企業間の共同研究だけでなく、企業と大学、企業と公的研究機関の共同研究も行う。それに加えて、浮体式洋上風力市場の育成・発展を目指すほか、開発した技術・システムの国際標準化や日本の産業振興につながる活動にも取り組むという。

ある洋上風力業界関係者は、「設立された研究組合は、浮体式分野の電気事業連合会のような組織になることが期待されている。日本が誇る大企業がチカラを合わせて、低コスト化や量産技術の確立を推進することになる」と評価する。

EEZ拡大法案が
衆院解散で廃案に

浮体式洋上風力の推進にあたって、逆風となる懸念事項もある。24年の通常国会で、浮体式洋上風力発電の立地場所を排他的経済水域(EEZ)に拡大する再エネ海域利用法の改正案が継続審議となった。同改正案は衆議院を通過したものの、参議院内閣委員会でほかの法案審議に時間がかかり成立に至らなかったのだ。

その後、自民党総裁選のあとに衆議院が解散され、同改正案は継続審議されずに廃案になっている。政局のゴタゴタにより、日本の将来の基幹電源の足を引っ張ることは避けてもらいたい。

PROFILE

松崎茂雄

エネルギー問題を20年以上にわたって取材。独自の視点で国の政策に斬り込む経済ジャーナリスト。趣味は座禅とランニング。


WIND JOURNAL vol.7(2024年秋号)より転載

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