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北海道の地域振興をテーマにスペシャル対談 「電気運搬船でエネルギー変革を」

北海道室蘭市とパワーエックスは今年5月、室蘭港のカーボンニュートラル形成と地域振興に向けた包括連携協定を締結した。MOPAの吉田昌弘氏とパワーエックスの佐藤直紀氏が「北海道のエネルギー変革」をテーマに対談した。

<目次>
1.2014年に出会い異国の地で意気投合
2.電気運搬船は2026年の完成を目指す
3.室蘭の地域振興に電気運搬船の活用を

 

2014年に出会い
異国の地で意気投合

MOPA 吉田昌弘氏(左) パワーエックス 佐藤直紀氏(右)

MOPA(室蘭洋上風力関連事業推進協議会)調査研究グループグループリーダーの吉田氏は、室蘭市で創業したDENZAI株式会社の取締役専務執行役員。佐藤氏は、株式会社パワーエックスの船舶・風力発電事業部長で、同社が今年2月に設立した新会社「海上パワーグリッド」の取締役もつとめる。海上パワーグリッドは、電気運搬船の設計、所有、販売、海上オペレーションといった、電気運搬船に関連する事業全般を担う。

吉田 2014年にデンマークで風車製造の仕事に携わっていたときに佐藤さんと出会いました。そのとき、佐藤さんはフィンランドの発電機メーカーの仕事をしていました。年齢が一緒だったこともあって、異国の地で意気投合し、その後、日本に帰ってきてからも、風車のサプライチェーンの構築について、たびたび相談させていただきました。

佐藤 その当時は、風車の発電機を製造するメーカーの立場で、吉田さんとお付き合いをさせていただきました。どのようにすれば風力発電関連産業が日本に根付くのかについて、会社の枠を超えて2人で熱心に議論を交わしていました。

電気運搬船は
2026年の完成を目指す

電気運搬船のイメージ図(出典 パワーエックス)

電気運搬船のイメージ図(出典 パワーエックス)

パワーエックスは、2021年に設立されたスタートアップ企業で、蓄電池関連事業を展開している。再生可能エネルギーで発電した電気を蓄電して海上輸送する「電気運搬船」の建造に着手し、初号船「X」は26年の完成を目指している。佐藤氏は、電気運搬船事業の中心的な存在だ。

佐藤 洋上風力発電事業を進めるにあたって、海底ケーブルがボトルネックになると考えていました。電気運搬船が実用化されると、海底ケーブルが敷設できない海域にも洋上風車を設置することができるようになります。北海道の西方沖だけではなく、苫小牧沖などの水深が深いエリアにも設置の可能性が広がります。

吉田 EEZ(排他的経済水域)や水深300メートル以上の海域では、海底ケーブル以外の選択肢が必須だと考えています。その一つの選択肢が電気運搬船ではないでしょうか。「島と島を電気運搬船で結ぶ」というアイデアを佐藤さんから以前にうかがいました。北海道は離島が多いので、電気の安定供給や災害時の対応という観点では、電気運搬船と北海道は非常に相性が良いと考えています。

佐藤 電気運搬船は、陸上風車の送電にも活用できると考えています。北海道の襟裳岬の周辺は、風況が良いエリアですが、札幌市などの大消費地への送電ルートが整備されていません。このようなところにも、電気運搬船を活用していただけたらと思っています。襟裳岬の周辺で、DENZAIさんの大型クレーンが風車を施工し、その電気を海上パワーグリッドが運ぶ形で、吉田さんと一緒に仕事ができたらうれしいですね。

室蘭の地域振興に
電気運搬船の活用を

MOPA調査研究グループグループリーダー 吉田昌弘氏

吉田 風車というのは、点ではなく線でつながなければいけないものでしたが、電気運搬船は、点と点をワープしてつなぐことができます。そうした意味では、北海道だけではなく、九州の離島やフィリピン、インドネシアなどの島が多い国々でも十分に活用できると考えています。その電気運搬船の寄港地として、室蘭港を是非とも活用していただけたらと思っています。

佐藤直紀さん

パワーエックス船舶・風力発電事業部長、海上パワーグリッド取締役 佐藤直紀氏

佐藤 いまはまだ詳細についてお話できませんが、室蘭港は三方を山に囲まれているため、波が穏やかで、電気運搬船にとって非常にオペレーションがしやすい港だと思っています。洋上風力関連の産業も集積しているので、何らかの形で室蘭港を活用させていただけたらと考えています。

天然の良港と呼ばれる室蘭港

吉田 室蘭には、古くから新日鉄室蘭や日本製鋼所などのような大きな製造工場が立地しています。そのような企業が再エネ電気のユーザーとしても、電気をつくる側としても、電気運搬船の事業に関わっていくことができたらと思っています。室蘭市は、2022年度から地元企業や大学などと連携して、既存のインフラを活用した水素供給の低コスト化に向けた実証事業に取り組んでいます。そのような水素製造や供給の分野にも、電気運搬船の再エネ電気を活用していけたらいいですね。現在、MOPAには120を超える企業が加盟しています。このように民間団体が主導して、地域に密着したネットワークが、日本国内にとどまらず、世界の国々に広がっていくことが洋上風力発電事業の発展につながると考えています。そのためにも、パワーエックスさんのような企業とのつながりを大切にしていきたいと思います。

DATA

MOPA(室蘭洋上風力関連事業推進協議会)
室蘭市と電気運搬船及び蓄電池の開発及び利活用に向けて包括連携協定を締結
室蘭市で水素サプライチェーンを構築する実証事業を開始


取材・文/ウインドジャーナル編集部

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電気運搬船のイメージ図(出典 パワーエックス)
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