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政策・制度

「夜明け前」の洋上風力。参入プレーヤーが劇的増加、「5兆円マーケット」を見越し

洋上風力の産業構想力強化に向けた官民協議会は2020年12月にまとめた「洋上風力産業ビジョン」で、「30年までの10GW」、「40年までの30GW~45GW」の方針を初めて打ち出した。一般社団法人 日本風力発電協会(JWPA)国際部長の上田悦紀氏に聞いた。

※本記事は2021年9月発行「WIND JOURNAL vol.1」からの転載です。

東電HDの参入表明が「分水嶺」

――洋上風力発電事業を取り巻く状況は?
現状は「夜明け前」というところです。一つ目の大きな動きは2016年の港湾法改正で、洋上風力発電事業者が港湾区域を20年間占用することを許可する「占用公募制度」の創設です。この法律は2018年に再改正され、占有期間は30年に延長されました。

二つ目の大きな動きは東京電力ホールディングスの小早川智明社長が2018年8月、東電が自ら洋上風力に参入すると表明したことです。知名度の高い「東電がやるのだったら」ということで政治と官庁が動き出したことから、これが「分水嶺」だと言えます。

三つ目の大きな動きは2019年4月、洋上風力の導入を促進する「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(再エネ海域利用法)が施行され、政府が指定した海域を発電事業者による30年間の占有権利が法制化されたことです。これで洋上風力関連の法律が整備され、事業リスクが低減して、安心して投資できるようになりました。

菅首相が20年10月に「2050年脱炭素」を宣言し、20年12月15日に「洋上風力産業ビジョン」を発表されたことは大きな動きです。「30年までの10GW」「40年までの30GW~45GW」とオフィシャルに言ったことは極めて大きな意義があります。

「着床式」の建設費5兆円規模
民間企業に「かなり魅力的」

――「洋上風力産業ビジョン」をどう受け止めますか?
「着床式」の建設コストは1kW当たり50万円ちょっとですので、「2030年に10GW」なら、建設費は5兆円相当です。10年以内に5兆円は、民間企業にとってかなり魅力的な数字です。これ以降、洋上風力に参入したいという企業が劇的に増えました。

建設会社も先行投資しています。五洋建設や清水建設、鹿島建設、寄神建設などが自己昇降式作業台船(SEP船)の建設計画を発表しています。SEP船を1隻作るのに200億~500億円以上かかります。投資する理由は、「将来の5兆円マーケットを国が保証している」と確信しているからです。

課題は「日本版セントラルシステム」
サプライチェーン、インフラも道半ば

――商用化に向けた課題は?
一つ目の課題は入札方法です。日本では今、入札前に風力発電施設に対する国の環境影響評価(環境アセスメント)や海底の地盤調査、系統協議を複数の事業体が自由競争のように、ばらばらに行っています。これをオランダやデンマークなどで中央官庁が主導する「セントラルシステム」に近いやり方に変えようというものです。6月2日にこの変更を試行するための調査会社決定の発表があり、徐々に進みつつあります。

二つ目の課題がサプライヤーチェーン(供給連鎖)の構築です。洋上風車メーカーや、輸送、建設の基盤がありません。東芝は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と組んで発電機などを格納するナセルを横浜の工場で生産すると発表ました。JFEホールディングスは洋上風力の土台の生産工場を作ると表明しています。今後、このような動きが続くと思います。

三つ目の課題はインフラ整備です。具体的には電力系統と、海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(ベ―スポート)の二点です。電力系統は、風力資源の豊富な北海道と東北から東京へ、風力発電の電気を直流高圧海底送電線で運ぶマスタープランが検討されています。一つ目の案は北海道沖から日本海側の秋田、山形を通り、柏崎刈羽まで1本でつなげるルートで、柏崎刈羽の原子力も送電線に連系させるというものです。

二つ目の案は、北海道沖から太平洋側に1本通して福島の原子力発電所の連系線に連系させるというものです。また同様に九州から本州に引く案も検討されています。

ベースポートは秋田港、能代港、鹿島港、北九州港の4港を「海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾」に初めて指定されました。

数万人規模の育成も課題

四つ目の課題は人的資源です。必要となる数万人の育成方法が検討されています。「長崎海洋アカデミー」や秋田県立大学が専門家の育成コースを開講します。

河野行革相が大なた-風力規制で

五つ目の課題は規制緩和です。ネックとなっている何百もの規制がリストアップされており、河野太郎行政改革担当相が非常に強力に取り組んでいます。例えば環境アセスの対象となる風力発電施設の規模については、現在の出力「1万kW以上」から同「5万kW以上」に緩和される見込みが強いです。たぶん今年中に解決すると思います。

PROFILE

一般社団法人日本風力発電協会(JWPA)国際部長
一般社団法人日本風力エネルギー学会(JWEA)
理事 兼 国際・広報委員長

上田悦紀氏

京都大学工学部機械工学科卒業後、三菱重工業(株)に入社。一貫して発電用大型回転機器(蒸気タービン、ガスタービン、大形風車)の設計開発に従事。日本風力発電協会に移籍して、現在に至る。


取材・文:山村敬一

WIND JOURNAL vol.1(2021年秋号)より転載

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