注目キーワード

国内事例

「自動船位保持」の訓練センターを開設! 商船三井グループが洋上風力発電事業を支援

洋上風力発電設備の安全な据付けや設置、メンテナンスに欠かせないDP(ダイナミック ポジショニング/自動船位保持)。商船三井グループはこのほど、DPトレーニングセンターを開設し、その利用を広く内外に呼びかけた。DP事業の中核を担うMOLマリン&エンジニアリングの中島孝社長に、その狙いと洋上風力への取り組みについて聞いた。

商船三井グループのMOLMEC
オペレーター育成を支援

商船三井(MOL)とMOLマリン&エンジニアリング(MOLMEC)は、2022年6月、東京・虎ノ門にある商船三井本社ロビー階に「MOL DP(ダイナミック ポジショニング)トレーニングセンター」を開設した。DPに関する国際的な公的資格発行機関である英NI(ノーティカル インスティチュート)の認証を、日本で初めて取得したトレーニングセンターだ。実際の船舶の操舵室を模したDPシミュレーターが設置されており、DPS(ダイナミック ポジショニング システム)の操作を着実に身に付けることができる。


MOL DPトレーニングセンター。DPシミュレーターにより、実際の船舶で操船しているようなリアリティのある訓練を実施することができる。

DPSは、自動船位保持装置と訳される。船舶を海上の定点に保持したり、あらかじめ設定したルートで航行させることを可能とするシステムだ。海上の一点に留まり作業をする海底ケーブル敷設船や、海底油田・ガス田開発のためのOSV(Offshore Support Vessel/オフショア支援船)などに装備されてきた。

そして今日、洋上風力発電に関わる各種特殊船においても、DPSは必要不可欠なものとなっている。これから日本が洋上風力発電を進めていくにあたっては、国際標準の技術をもったDPオペレーターの育成が急務ともいえるのだ。DPトレーニングセンターの運用を担うMOLMECの代表取締役社長・中島孝氏は、次のように述べている。

「私たちは、このトレーニングセンターをMOLグループだけで活用するつもりはありません。MOLグループの船員・海事者の訓練や技術向上に役立てていくだけでなく、社外の様々なお客様やパートナー企業ほか社外の皆様にも幅広くご活用いただき、我が国の海洋事業、また洋上風力関連事業を共に伸ばしていきたいと願っています。その想いもあって、官庁街・オフィス街の只中にある商船三井本社に同センターを開設しました」(中島氏)。

同社では、既に、NIが発行するDPオペレーター資格を取得するためのトレーニング修了証書を発行できるコースを開講している。ここから巣立ったDPオペレーターが、洋上風力の現場で活躍する日も、そう遠くはないだろう。


開所式の様子(商船三井 橋本剛社長、MOLマリン&エンジニアリング 中島孝社長を囲んで。

船を定点に留めおくDP
洋上風力の建設・保守に必須

MOLMEC常務執行役員 DPシミュレーター部長の栗原歩氏はいう。

「洋上風力の現場で、DPオペレーターが必要とされるシーンは多岐にわたります。 例えば、風車を建設するときには、クレーンを搭載したSEP船(Self-Elevating Platform/洋上風力発電設備設置船)という作業用のプラットフォームで、風車のタワーやナセル・ブレード等を持ち上げて洋上に設置するために、DPによる正確な位置決めや船を一点に留めておくことは極めて重要であり、DPSを正確に操ることのできるオペレーターが必須となるのです。

また、風車と陸上をつなぐ、あるいは風車と風車をつなぐ電力ケーブルの敷設にも、DPオペレーターは欠かせません。DPSを装備したケーブル敷設船に乗り込み、風車とケーブルを接続するときの船位保持を行ったり、計画した場所に正確にケーブルを敷設できるよう操作します。

建設時だけでなく、メンテナンスにあたってもDPオペレーターは活躍します。大規模な洋上風力プロジェクトでは、メンテナンス技術者の宿泊設備も多数完備したSOV(Service Operation Vessel/大型作業支援船)で、寝泊まりしながら洋上ウインドファーム内を巡り、保守点検・修理作業をサポートすることになります。搭載されたDPSは、本船と洋上風車の距離を常時安全に保ち、本船から洋上風力発電プラットフォームに技術者を安全に渡すための大切な役割を担っています」(栗原氏)。

自動船位保持装置(DPS)を搭載した各種特殊船

 


SEP船(Self-Elevating Platform/洋上風力発電設備設置船)


ケーブル敷設船(現在は通信ケーブル敷設に運用しているが、電力ケーブル敷設にも使用できる)

最新技術と30年の実績で
日本のDPをリード

DPSは、風・波・潮流などを感知する多種多様なセンサーと、それが本船に及ぼす影響を分析し、推力を制御するコンピュータ、そして前後左右に推力を発生させる複数の推進機からなる。最新のテクノロジーが凝縮されたものといって良いが、その歴史は長い。

MOLグループでは、通信ケーブル敷設船の運航管理に50年以上の経験を持ち、DPS搭載のケーブル敷設船についても約30年前から運航しているという。今回のDPトレーニングセンターにも、実際の運航を通して培われたノウハウが存分に活かされているといって良い。

また、最近では、アジアを代表する洋上風力プロジェクトである台湾・大彰化洋上風力発電所向けに、DPS搭載の新造SOVを投入している。これは、アジア初のSOV事業でもある。

広範な洋上風力事業を展開
MOLMEC人材募集中!

現在、MOLグループにおいて、DPの推進役ともなっているMOLMEC。同社は2021年4月にMOLマリンとMOLエンジニアリングが合併して誕生した。同社には船員系海技者のみならず、海洋環境、海洋土木、海洋観測など様々な技術者・コンサルタントが集結しており、その業務はDPだけに留まらない。

「当社は、商船三井グループが130年以上にわたる海運業を通じて培ってきた歴史と経験を活かすべく、洋上風力分野を筆頭に、様々な海洋事業分野をグループとして大きく展開させていくために設立されました。主な事業分野は、①海洋インフラ整備をサポートする海事コンサルティング、②優秀な船員、海技者を育成するための訓練事業、③海底ケーブル敷設船の運航管理、④海洋研究船や各種オフショア船(海洋特殊船)の運航支援、⑤船舶の安全運航や国際ルール等に関わるエンジニアリングオンサイト事業の5つです」(中島氏)。

洋上風力発電に関しては、「地質調査・選定支援」「海陸一貫輸送」「風車の組立・据付・設置」「送電ケーブル敷設」「海洋基地コンサルティング」「メンテナンス技術者輸送」とバリューチェーン全体に携わる。「MOLグループは、2050年GHGネットゼロを目指して、洋上風力は総力を挙げて取り組むべき事業の1つと位置づけています。当社は、その先頭に立って、すべてのステークホルダーに新たな価値を提供していきたいと考えています」と中島氏は話す。

MOLMECでは現在、広く社員を募集している。「港湾整備や立地環境調査といった各種海洋コンサルティングに知見のある方、洋上風力やDP関連の特殊船などに携わった経験のある方は大歓迎です。また一切経験がなくても我々の事業に共感してくれる方、洋上風力に取り組んでみたい、オフショア船など公益性の高い特殊船の運航に関与したい、という熱意のある方も大歓迎ですので、ぜひお問い合わせください」(中島氏)とのこと。躍進著しいMOLグループの中核海技頭脳集団であるMOLMECを通じ、脱炭素社会の実現に社会の一員として貢献できるというのは極めて魅力的だ。

日本の洋上風力発電は、まだスタート地点に立ったばかり。企業にも、個人にも、未知のフィールドを切り開く新しい力が求められている。

PROFILE

MOLマリン&エンジニアリング
代表取締役社長

中島孝氏


MOLマリン&エンジニアリング
常務執行役員 DPシミュレーター部長

栗原 歩氏

問い合わせ

株式会社商船三井
〒105-8688 東京都港区虎ノ門2丁目1番1号
TEL:03-3587-7117


MOLマリン&エンジニアリング株式会社


取材・文:廣町公則

WIND JOURNAL vol.3(2022年夏号)より転載

Sponsored by 株式会社商船三井

関連記事

風力発電業界最新ニュース

アクセスランキング

  1. 2022年度の促進区域、新たに3海域を指定へ。ラウンド2・3は合同で実施か
  2. カギを握る“地域共生”『WIND JOURNAL』vol.03 8/31発行!
  3. 発電を止めない! ナブテスコの“クラウド型”状態監視
  4. 知っておきたい世界や日本における、風力発電の最新・重要データ
  5. 洋上風力「ラウンド1」はすべて三菱商事系が落札! 圧倒的な低価格の理由は?...
  6. 世界で注目! 洋上風力発電における「アラミド繊維」の可能性
  7. 洋上風力「促進区域」の8市町が協議会、「漁業との共生」や雇用・地域経済発展に期待...
  8. 三菱商事チームの3海域総取りで激震! 「洋上風力ラウンド1」とは何だったのか?...
  9. 日本を“第2の本拠地”へ。Xodusの洋上風力コンサルが日本の浮体式を成功に導く...
  10. CTV(人員輸送船)で洋上風力を支える東京汽船

フリーマガジン

「WIND JOURNAL」

vol.03 | ¥0
2022/8/31発行

お詫びと訂正