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三菱商事 秋田でグリーン水素製造の実証事業

三菱商事を中心とする企業連合が、秋田県沖での洋上風力発電を活用した水素製造システムの実証事業を計画していることが明らかになった。三菱商事は、英資源大手シェルなどとともに、欧州で洋上風力発電を活用した大規模な水素事業を進めている。欧州でのノウハウを生かし、日本国内で余剰電力の有効活用につながる水素製造システムの実用化を目指すものとみられる。(画像:洋上風車の建設が計画されている秋田県由利本荘市沖)

製造した水素を
港湾や市街地で活用

三菱商事を中心とする企業連合は、秋田県の「能代市・三種町・男鹿市沖」と「由利本荘市沖」の2海域で洋上風力発電計画を進めている。4年後の26年に着工し、「能代市・三種町・男鹿市沖」では28年に運転開始、「由利本荘市沖」では30年に運転開始する計画だ。

秋田県の佐竹敬久知事は今月21日の県議会で、三菱商事を中心とする企業連合が秋田県沖での洋上風力発電の余剰電力を活用して、「水の電気分解」による水素製造システムの実証事業を計画していることを明らかにした。製造した水素を輸送・貯蔵し、港湾内や市街地で活用する予定。佐竹知事は「秋田県内で水素のサプライチェーンが構築されることを期待している。県内企業の参画を促進し、水素の利用拡大に向けた取り組みを推進していく」と述べた。秋田県は今年度からスタートした「第2期秋田県新エネルギー産業戦略(改訂版)」のなかで、再エネを活用した水素製造の取り組みを重点プロジェクトのひとつに掲げている。

再エネなどを使って、製造時にCO2を排出せずにつくられた水素は、「グリーン水素」と呼ばれる。再エネ由来の余剰電力で水素を製造することができれば、余ってしまうクリーンな電気を捨てることなく活用でき、脱炭素にも大きな効果がある。秋田県のような電力需要が少ないエリアに設置された洋上風車についても、水素製造システムを導入することで最大限に電力を活用することが可能となる。

英シェルと連携
グリーン水素を製造

三菱商事の地域共生策のイメージ

三菱商事は英シェルなどと組み、オランダ沖を中心に30年までに最大400万キロワットの洋上風力発電所を建設する。洋上風車の電力を使ってグリーン水素をつくり、30年に年40万トンの水素製造を目指す。総投資額は25億ユーロ(約3370億円)に達する見通し。

三菱商事は、子会社で電力事業を手がけるエネコを通じて、英シェル、ノルウェーのエネルギー企業エクイノールなどが設立した事業会社に10%を出資している。この欧州事業の洋上風力発電所の完成とほぼ同時期に、秋田県沖の2海域の洋上風車が運転を開始する。水の電気分解による水素の製造には、莫大な量のエネルギーを必要とするが、三菱商事は欧州事業で培った技術と経験を生かし、秋田県内で水素製造システムの実証事業を進め、コスト低減や用途の拡大などの課題の解決を目指すものとみられる。


取材・文/高橋健一

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