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浮体式洋上風車を開発するベンチャー、アルバトロス・テクノロジーが1億円を調達

垂直軸型の浮体式洋上風車を開発するアルバトロス・テクノロジーが、総額1億円の資金調達を行った。同社の垂直軸型風車では、設備費用を従来の約半分に抑えることができる。今回調達した資金をもとにデモ機を製作し、海上実験に取り組むという。

(アイキャッチ画像:ウインドファーム想像図。風が吹く方向に20度まで傾き、平均風速程度ならほぼ直立だという。出典:アルバトロス・テクノロジー)

大型浮体のない「浮遊軸型風車」
浅い港でも基地港にできる可能性

浮体式の垂直軸型風車を開発するアルバトロス・テクノロジーが、独立系ベンチャーキャピタルのジェネシア・ベンチャーズから総額1億円の資金調達に成功した。アルバトロス・テクノロジーが開発に取り組んでいるのは「浮遊軸型風車(FAWT:Floating Axis Wind Turbine)」という浮体式洋上風車だ。開発にあたって、同社は低コストかつ国内における部材の調達率を高めることを重視している。


(浮遊軸型風車(FAWT)が回転する様子。出典:アルバトロス・テクノロジー)

FAWTは、円筒形の浮体の上に3枚の羽がついていて、風によって浮体も同時に回転する。海水が風車の軸受となり、傾斜しても性能が低下しにくいことが特徴だ。最大出力時、風が吹く方向に最大20度まで傾くという。

強風が吹いても直立不動の状態を維持しなくてよいため、大型の浮体を必要としない。また、風車部分はカーボン複合材料を用いて製造コストを抑え、発電機も含めた部材はすべて国内で調達できるようデザインされている。さらに、組み立てや海上への設置の際にクレーンが不要で、水深の浅い港でも基地港として活用できるとしている。

設備費や維持費も大幅に削減
浮体式風車のゲームチェンジャー

アルバトロス・テクノロジーによると、垂直軸型風車の性能は、風車直径10メートル以上のスケールであれば水平型風車と同等以上だという。同社は、設備費用を水平型風車の半分程度に削減するとともに、垂直軸型のデザインを利用して保守・運転維持費用を大幅に抑制することを見込んでいる。

同社はこれまで、電源開発と大阪大学の3者で共同研究を行い、金沢工業大学の革新複合材料研究開発センター(ICC)などと連携して炭素繊維強化プラスチック風車の新しい製造方法を検討してきた。

今回調達した資金は小型海上実験機の設計や開発に使用するという。大手電力会社や海運会社と連携しながら、第一弾として出力20kW未満の小型実験機を製作し、2024年度中に海上実験を開始したいとしている。

浮体式洋上風車の常識を覆すFAWTについて、同社は「基礎を置ける地面も海底も無いからこそコストが下げられる」とし、浮体式風車の分野のゲームチェンジャーとして洋上風力の主電源化に取り組むと意気込んでいる。

DATA

株式会社アルバトロス・テクノロジー プレスリリース


文:山下幸恵(office SOTO)

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