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国内事例

石狩湾新港沖で海上工事が本格化 蓄電池を併設

北海道石狩湾新港沖で、海上の工事が本格化している。7月からは国内最大のSEP船が洋上風車の設置にとりかかる予定。大規模な蓄電池システムを併設した洋上風力発電プロジェクトの建設が最終段階を迎えている。

(アイキャッチ画像 ジャケット式基礎の設置工事 写真提供:株式会社グリーンパワーインベストメント)

単機出力は
秋田沖の2倍近く

石狩新港沖の完成イメージ図

完成イメージ図(出典 グリーンパワーインベストメント)

札幌市に隣接する石狩市の石狩湾新港地域には大規模な工業団地があり、約3000haもの広大な敷地に700を超える企業が進出し、2万人以上が働いている。石狩湾新港沖の洋上風力発電プロジェクトは、「グリーンパワーインベストメント」が設立した特別目的会社「合同会社グリーンパワー石狩」が進めている。

計画では、小樽市と石狩市にまたがる石狩湾新港の沖合に、出力8000kWの風車を14基設置する。最大出力は11万2000kW。一般家庭約8万3000世帯分の電力を賄うことができる。FITにより、北海道電力ネットワークへ36円/kWhで20年間売電する。今年1月に本格操業を開始した秋田県の秋田・能代港湾区域と比べると、全体の出力は小さいが、単機出力は石狩湾新港沖が2倍近い。

蓄電池システムを併設
グリーン水素製造を検討

大規模な蓄電池システム800(写真提供 株式会社グリーンパワーインベストメント)

大規模な蓄電池システム(写真提供 株式会社グリーンパワーインベストメント)

2020年8月から陸上で送電施設の工事が始まり、2022年5月には海上で杭を打設する工事が開始された。海上の工事では、国内で初めて「ジャケット式」の基礎が施工される。ジャケット式は4本脚の格子状で、大水深、もしくは大口径杭の打設が難しい岩盤地質で使用される。地盤からの影響や波浪などの外力を受けにくく、鋼管杭で支持する構造形式のため、軟弱な地盤条件でも優位性を発揮する。石油ガスプラットフォームなどで多くの実績があるが、構造が複雑で、施工に特殊技術が必要だ。

現在、石狩湾新港沖では、ジャケット式基礎の設置が進められている。洋上風車の設置工事は、清水建設のSEP船が7月から開始する予定。地元の漁協との取り決めで秋さけ漁が始まる前までに済ませることになっていて、8月末までに14基の建設を終え、12月には商業運転を開始する方針。

今回の洋上風力発電プロジェクトでは、発電した電力を北海道電力に売電するが、余剰電力を蓄電池にためる予定。近くの陸地には、リチウムイオン電池の入ったコンテナが42台設置されている。将来的には、地域全体の需給調整や非常時のレジリエンス向上につなげるとともに、電気を使ってグリーン水素を製造することも検討している。


取材・文/高橋健一

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