洋上風力建設の先進拠点に 秋田県能代港の埠頭拡張工事、外周護岸がほぼ完成
2024/04/05
洋上風力発電の基地港湾に指定されている秋田県能代市の能代港で拡張した埠頭(ふとう)の外周護岸がほぼ完成した。SEP船や大型部材を運ぶ船が寄港する4万トン岸壁の整備は、今年の夏に完成する見通しだ。
2020年9月に
基地港湾に指定
埠頭の外周護岸がほぼ完成した能代港(秋田県能代市)
秋田県能代市の周辺では、洋上風力第1ラウンドの「能代市、三種町、男鹿市沖」と第2ラウンドの「八峰町、能代市沖」の事業が計画されている。国土交通省は2020年9月、能代港、秋田港(秋田県)、鹿島港(茨城県)、北九州港(福岡県)の4港を全国で初めて洋上風力を整備する際の拠点「基地港湾」に指定した。
能代港では、洋上風車の部材の荷さばきや一時保管、組み立てを行うヤードを確保するため、海を埋め立てて10.4ヘクタール埠頭を拡張する。秋田県は、2022年度から工事に着手した。総事業費は60億円。
拡張工事では、西側275m、南側377mの外周護岸をL字型に囲むようにして築造し、内側に土砂を投入して埠頭用地として整備する。西側に鋼管矢板を設置し、南側に捨て石を投入して回りを囲む。これまでに、拡張した埠頭の外周護岸がほぼ完成した。今後も護岸工事と埋め立てを継続し、今年度末に完成を目指す。
秋田県の港湾計画では、能代港の埠頭を19.8ヘクタール造成する変更案が示されているが、今回拡張するのは約半分の10.4ヘクタール。秋田県では、貨物量などの動向に応じてさらに拡張するかどうかを判断するとしている。
埠頭の拡張工事と並行して、国土交通省が、SEP船や大型部材を運ぶ船が寄港する4万トン岸壁の整備を進めている。今年3月に完成する予定だったが、埠頭の地盤改良が難航したため、工事完成を今年夏に延期する見通しだ。
ホテルがほぼ満室
アパートの建設ラッシュも
秋田県能代市 新築のアパートはすでに満室
能代市内では、アパートの新築ラッシュが続いている。2022年12月に能代港湾区域で国内初の大規模洋上風力発電が運転開始し、その後も能代市南部沖と北部沖の事業化が決まり、関連事業者の住宅の確保が課題となっている。
能代市には、全国から自治体関係者などの視察も相次いでいて、周辺のホテルは満室に近い状況が目立つ。能代市の齊藤滋宣市長は、JR能代駅前にある大栄百貨店ビルの土地で、千葉県市川市の事業者が2026年のオープンを目指してホテルの建設を計画していることを今年の9月定例市議会で明らかにしている。
旧高校跡地を
再エネ工業団地に
秋田県の再エネ工業団地が整備される旧能代西高校跡地
秋田県は2022年度からスタートした「第2期新エネルギー産業戦略(改訂版)」で、再エネ由来の電力を活用して、国内最大級の産業集積拠点の形成を目指す方針を掲げている。秋田県内では、三菱商事を中心とする企業連合が洋上風力発電を活用した水素製造システムの実証事業を計画している。地元の商工関係者は、水素エネルギーや脱炭素に関連する企業の進出を期待している。
秋田県は、能代市北部にある旧能代西高校跡地に、再エネで電気をまかなう工業団地を整備する方針だ。旧能代西高は約39ヘクタールの敷地があり、洋上風車の建設の拠点となる能代港にも近い。
三菱商事の企業連合が
8ヘクタールを占有
ホテルの建設構想が浮上しているJR能代駅前のビルの土地
能代市・三種町・男鹿市沖では、三菱商事を中心とする企業連合が2027年6月に洋上工事に着手し、2028年12月に運転を開始する予定。三菱商事を中心とする企業連合は埠頭の8ヘクタールを最長30年占用できる。
八峰町、能代市沖は、ジャパン・リニューアブル・エナジーを中心とする企業連合が2027年5月に洋上工事に着手し、2029年6月に運転を開始する予定。建設時の港湾利用の詳細については明らかにされていない。
DATA
取材・文:高橋健一