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北九州港、ひびきウインドエナジーと基地港湾の賃貸借契約を調印。今年10月から占用を開始

洋上風力発電事業の基地港湾である北九州港(福岡県北九州市)を、20年以上にわたってひびきウインドエナジーに貸し付ける賃貸借契約の調印式が9月3日、北九州市役所で行われた。基地港湾では、洋上風車の仮組み立てや検査を行い、来春にも風車本体を設置する。

(左から、九州地方整備局 坂井功副局長、北九州市 武内和久市長、ひびきウインドエナジー 水町豊社長。調印式で筆者撮影)

北九州港を長期貸し付け
秋田港に続き全国で2例目

(基地港湾の岸壁で鋼管矢板の前面に仮置きされた雑石を撤去する作業が進む。筆者撮影)

「本日、洋上風力発電事業のインフラの中核となる基地港湾の賃貸借契約調印式を迎えられたことを嬉しく思います」と、北九州市の武内和久市長は調印式で挨拶した。同市では、洋上風力産業の総合拠点化を目指す「グリーンエネルギーポートひびき事業」を2011年から進めている。「北九州港が物流、製造産業、積出・建設、運用・保守の拠点としてシナジーを生み出し、東アジアにおける洋上風力発電産業の強力な原動力となるように、戦略的に推進していきます」と力強く挨拶を締めくくった。

基地港湾とは、洋上風力発電設備の設置や維持管理の拠点となる港で、国が指定する。北九州港は2022年9月、九州で唯一の基地港湾として国土交通大臣に指定された。他に、秋田港、能代港、青森港、新潟港、酒田港、鹿島港が指定されている。事業者との賃貸借契約を締結したのは、今回が秋田港に続く2例目だ。

今回の賃貸借契約によって、ひびきウインドエナジーは、2024年10月1日から約23年間にわたって北九州港を占用する。契約期間は、現状復帰の期間を含めて2047(令和29)年3月2日までで、契約金額は非公開だ。面積は、国からの賃貸借が1.8ha、市からが4.6haの合計6.4ha。今年10月から基地港湾の一部を貸し出し、11月から全面供用となる。

港湾で風車の仮組み立てや検査
1日で洋上風車1基を設置

(今秋の供用開始に向けて、整備作業が大詰めを迎えている北九州港・筆者撮影)

ひびきウインドエナジーは、洋上での作業を最小限に抑えるために、基地港湾で風車の仮組み立てや検査を行うとしている。港湾の整備では、岸壁の水深を10mまで掘り下げ、地盤改良を行った。北九州港の地盤にはさまざまな種類の地層があることから、セメントを混ぜ込む深層混合処理などを施して地耐力を向上させたという。これによって、クレーン作業ヤードの確保や、風車設置作業線(SEP船)の着岸が可能になる。

岸壁の水深を10mとしたのは、北九州響灘洋上ウインドファームに設置される9.6MW基の建設を想定したためとしている。北九州港は、国の洋上風力公募の第2ラウンドで事業者が決まった長崎県西海市江島沖の基地港湾としても利用される。江島沖では15MWの洋上風車が採用されるが、北九州港で対応できる見通しだという。

北九州響灘洋上ウインドファームは昨年3月に着工。現在、全25基のうち、12基のジャケット式基礎が設置されている。来春にも、風車本体の設置工事を始める。風車を設置する際には、基地港湾でタワー内部に変電設備などをあらかじめ設置した上で洋上へ移動する。これによって、洋上でのクレーンによる吊り上げ作業を、タワー・ナセル・ブレード3枚の合計5回に抑え、1日で洋上風車1基の設置が可能になるという。

「新たな街のシンボルに」
地域と歩む洋上風力WFを目指す

(響灘で着々と進むジャケット式基礎の設置の様子。筆者撮影)

ひびきウインドエナジーの水町豊社長は、「北九州響灘洋上ウインドファームには、新たな街のシンボルとして、海中では魚が集まる魚礁として、新たな観光資源や教育の場として、多くの方々に親しみを持って活用してほしいと思います。当社は地域と歩む洋上ウインドファームの実現を目指しており、安全と環境に最大限配慮をして工事を進めていきます」と意気込みを述べた。2026年度以降には、住友商事と東京電力リニューアブルパワーが出資する合同会社が、長崎県西海市江島沖の洋上風力発電の基地港湾として北九州港を利用する予定になっている。


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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