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北海道寿都町 再生可能エネルギーを活用した循環型地域社会づくり

北海道寿都町は、1989年に全国の自治体として初めて町営の風力発電設備を設置した。相次いで設置した風力発電設備のFIT 調達期間の満了を控え、再エネ電気を活用した循環型地域社会づくりを目指している。

メイン画像 北海道寿都町(写真提供 寿都町役場)

<目次>
1.明治、大正期にニシン漁で栄える
2.1989年に自治体として全国初の風力発電設備を設置
3.風力発電設備の過半数2030年にFIT調達期間が終了
4.風力発電のノウハウを活用し再エネ電気の活用策を検討
5.洋上風力発電の導入推進へ 自治体の枠を超えた連携

 

明治、大正期に
ニシン漁で栄える

寿都漁港

寿都漁港(北海道寿都町)

寿都町は、北海道南西部の日本海に面し、北海道後志管内の西部、札幌市と函館市のほぼ中間に位置する。人口は2,647人(2024年9月30日現在)で、寿都湾を取り囲むように弓状に形成されている。総面積は95.25km²と小規模だが、海岸線は28.9㎞あり、漁業の営みを中心に集落が形成されてきた。

町の基幹産業は、漁業と水産加工業である。明治、大正期にはニシン漁で栄えた。当時は、足の踏み場もないほどニシンがとれ、全国各地からの出稼ぎ者であふれたという。現在は年間水揚量のうち約50~60%をホッケが占め、サケ、こうなご、ブリ、なまこ、ウニなど豊富な種類の水産物が水揚げされている。近年は、活け締め技術の導入など、鮮度保持・品質管理の徹底や、放流や養殖にも積極的に取り組んでいる。

寿かき

町の特産品の寿かき

町の名前にちなんでブランド化された「寿(ことぶき)かき」は、4月下旬から7月上旬頃に旬を迎え、あっさりとしたうま味とかき特有のクセのなさが特徴だ。春の1か月だけ獲れるこうなご(いかなごの稚魚)を原料とした「生炊きしらす佃煮」は町内に8社ある水産加工業者すべてで製造され、こうした水産加工品はふるさと納税の人気の返礼品となっている。

1989年に自治体として
全国初の風力発電設備を設置

寿都第5、第6

2023年3月に運転開始した寿都第5、第6風力発電所(写真提供 寿都町役場)

寿都町は、全国でも有数の強い風が吹く町として知られている。春から夏にかけて吹く南南東の強風(通称 だし風)と、秋から冬にかけて吹き荒れる北西の季節風が漁業や農業に悪い影響を与えてきた。町では、地域特有の強い風を有効活用することを目的に、1989年に全国の自治体としては初めて町営の風力発電設備を設置した。

99年に町営の施設での自家消費を目的として新たな風力発電設備を導入し、順調な稼働状況であったことから、地域の資源である風をまちづくりに活用するため、町営の風力発電施設を2003年にさらに導入し、売電事業に取り組んでいる。その後、07年、11年、23年に発電規模を拡大しながら増設し、現在は13基(出力合計2万560kW)の風車が稼働して、売電収益は町の貴重な財源となっている。11 年の導入の際には系統の変動緩和対策として、風力発電設備に蓄電池を併設し、現在では市町村で運営している風力発電所の設備としては国内最大の発電量を誇る。

風力発電設備の過半数
2030年にFIT調達期間が終了

寿都町役場

寿都町役場

寿都町は、02 年度に「寿都町地域新エネルギービジョン」を策定し、町が主体となって風力発電事業をはじめとする再エネの利活用や導入の検討を進めてきた。町では、住民との合意形成を図ったうえで再エネ発電設備の導入を進めている。特に風力発電に関しては、住民の理解度が高い状況にあると言われている。

しかし、風力発電の黎明期から取り組んできたことから、27 年には現在稼働する風力発電設備の過半数が、 FIT 買い取り期間の満了を迎える。このためFIT 調達期間の終了後の風力発電設備の有効活用について検討を開始している。

風力発電のノウハウを活用し
再エネ電気の活用策を検討

風太風力発電所

2007年に運転開始した風太風力発電所(写真提供 寿都町役場)

これまでの町営風力発電の運営で培ったノウハウを生かし、FIT 調達期間の終了後における風力発電エネルギーの利活用のほか、新たに町で導入可能性のある再エネの検討も行い、地域振興やレジリエンスの強化などの取り組みを加速させ、地域内でのエネルギー循環のシステム構築を目指している。

この検討のなかでは、これまでの売電事業から、自ら発電した電気を自らが使用する「電力の地産地消」への取り組みも検討し、町内の脱炭素化に向けた動きに貢献することも想定されている。

洋上風力発電の導入推進へ
自治体の枠を超えた連携

寿都

2023年3月に運転開始した寿都第5、第6風力発電所(写真提供 寿都町役場)

寿都町を含む北海道岩宇・南後志地区の6町村の沖合では、洋上風力発電事業が計画されている。23年1月に日本版セントラル方式の調査対象海域として選定され、同年5月に6町村の沖合の約2~10kmの海域が、再エネ海域利用法に基づく「有望な区域」に整理された。経産省によると、北海道岩宇・南後志地区沖は着床式で、最大出力は70万5000kWと想定されている。

北海道岩宇・南後志地区沖では、発電事業者による環境影響評価が実施されておらず、地域としてまとまり、地元の6町村、漁業協同組合が中心となって、洋上風力発電の導入推進にあたっている。この海域が、日本版セントラル方式のモデルになることが期待されている。

今年7月に開催された第1回法定協議会で、寿都町の片岡春雄町長は、「新たな海洋産業ができることに大きな期待を寄せている。発電事業者からの拠出される基金を3つの漁協に均等に配分するとともに、固定資産税についても6町村に均等に配分していただきたい。」と要望した。

DATA

北海道寿都町ホームページ


取材・文/高橋健一

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