【洋上風力第4ラウンド】事業者公募の評価基準を見直しへ「迅速性評価を各海域で統一」
2024/12/04
経済産業省は11月21日、洋上風力第4ラウンドから再エネ海域利用法の評価基準を見直す方針を示した。迅速性の評価については、港湾の利用期間に依存せず、各海域統一の考え方を設定することとしている。
部品供給のひっ迫や
インフレに対応して制度見直し
洋上風力発電への電源投資は、大規模かつ総事業期間が長期間にわたることから、収入・費用の変動リスクに対応できる事業組成を促進することが、投資の確実性を高めていく上で重要である。実際、世界的にも、サプライチェーンのひっ迫やインフレによる費用増大などによる収入・費用の変動を原因として、事業の中断や撤退も発生しており、それに対して所要の措置が講じられている。
今回の制度検討にあたっては、こうした世界的な情勢変化のなかで、日本国内における再エネ主力電源化の実現を確実なものとしていく観点から、引き続きコスト低減・迅速性を重視しつつ、収入・費用の変動といった環境変化に対して強靱な事業組成を促し、洋上風力発電への電源投資を確実に完遂させることを主軸としている。具体的には、国民負担に中立的な形で、事業実施の確実性を高めるための規律強化・環境整備を進めるとしている。
今回の制度見直しは、「迅速性評価方法の見直し」、「供給価格評価方法の見直し」、「価格調整スキームの導入」、「物価変動率反映に伴うIRRの引き下げ」、「入札保証金制度の見直し」が主な内容だ。11月21日に開催された総合資源エネルギー調査会の有識者会議で示された。
迅速性の評価を
各海域で統一
迅速性評価についての考え方(出典 経済産業省)(出典 経済産業省)
このうち、迅速性の評価については、現行の評価制度では、港湾の利用可能期間を踏まえて想定される最速の運転開始時期を設定しているが、第2ラウンド公募では、基地港湾を含む複数の港湾を利用する計画が提出されるなど、早期の運転開始に向けて
今後も多様な事業計画の提出が見込まれることから、最速の運転開始時期は、港湾の利用期間に依存しない各海域統一の考え方を設定する。
迅速性を求めた第2ラウンド公募全参加者の運転開始までの平均期間も、また、海外における直近の運転開始期間も約6年であることから、6年を基準日とし、そこからさらなる事業者の創意工夫(6ヶ月)を考慮した期間である5年6ヶ月を「満点(20点)」として、開発期間に応じて減点していく段階評価とするとしている。階段の幅(期間)や階段ごとの点差については、半年ごとに2点減点とする。
供給価格の評価
準ゼロプレミアム水準を新設
価格評価点のあり方について(出典 経済産業省)
供給価格の評価方法については、技術革新とコスト低減が日進月歩で進んでいることを踏まえ、最低供給価格を提案した事業者を基本として以下の算定式により評価している。当該算定式は、最低供給価格の提案者と次点の提案者の価格差が同じであっても、最低供給価格が低くなるほど、供給価格点差が大きくなる特徴がある。
供給価格点=(公募参加者の最低供給価格/提案者の供給価格)×120点
当該算定式では、たとえばゼロプレミアム水準(3円/kWh)での入札があった場合、次点の事業者が仮にプレミアム収入の生じない参照価格以下である9円/kWhで入札しても、その点差は80点となり、事業実現性評価(120点)で挽回が困難となるレベルの点差となる。このため、1事業者でもゼロプレミアム水準での入札があった場合には、事実上、他の事業者もゼロプレミアム水準で入札しなければ落札できない仕組みとなっている。
このため、新たに「準ゼロプレミアム水準」を設ける方針を示した。これは、現行のゼロプレミアム水準(3円/kWh)でなくとも、一定程度安価な入札であれば、国民負担の抑制効果はあるという考え方に基づくものである。「準ゼロプレミアム水準」は、過去3年間の風力発電プロファイル市場価格(全国値)の平均値14.94円/kWhを参考に検討し、国民負担をより抑制していく観点から、「14円/kWh」とする。
今回の制度見直しについて経産省では、洋上風力発電を確実に完遂させる観点から、選択的な措置の適用は認めず、第4ラウンド以降の応札・落札事業者に一律に適用するとしている。「価格調整スキームの導入」、「物価変動率反映に伴うIRRの引き下げ」については、調達価格等算定委員会でさらに検討する。
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DATA
取材・文/高橋 健一