【洋上風力第3ラウンド】青森県沖、山形県沖の選定事業者を公表 2海域とも風車はシーメンスガメサ製
2024/12/24
経済産業省と国土交通省は12月24日、洋上風力第3ラウンドで公募していた「青森県日本海南側」と「山形県遊佐町沖」の選定事業者を公表した。青森県沖はJERAを代表企業とする企業連合、山形県沖は丸紅を代表企業とする企業連合が選定された。
青森県日本海南側
JERAが代表企業に
青森県日本海南側の促進区域(出典 経済産業省)
青森県日本海南側と山形県遊佐町沖は2023年10月に再エネ海域利用法に基づく促進区域に指定され、今年1月から事業者を公募していた。このうち、青森県日本海南側には、3つの事業体が公募占用計画を提出した。選定事業者は、JERA、グリーンパワーインベストメント、東北電力の3社で構成する「つがるオフショアエナジー共同体」。事業計画によると、発電設備は着床式。発電設備出は61万5000kW(1万5000kW×41基、Siemens Gamesa Renewable Energy製)。運転開始予定時期は2030年6月。
青森県日本海南側の評価結果(出典 経済産業省)
青森県日本海南側の公募に参加したのは、選定事業者の「つがるオフショアエナジー共同体」と、CI IV Transfer Coöperatief U.A.、東急不動産、北陸電⼒、戸田建設の4社による「⻘森南洋上⾵⼒開発合同会社」、ヴィーナ・エナジー(シンガポール)が設立した「津軽七里長浜洋上風力合同会社」の3つの事業体だ。3つの事業体ともに、運転開始予定時期は2030年6月を提案した。また、価格点は3つの事業体ともに満点の120点を獲得している。これはすべての事業体が供給価格をゼロプレミアムである3円/kWh以下で入札したことを示している。結果として、最も高い事業実現性評価点を獲得した「つがるオフショアエナジー共同体」が選定された。
経産省では「他社では⼗分検討されていないリスクを特定・分析して、具体的かつ有効な対応策が根拠資料とともに示されていること、津軽港をO&M港としての活⽤のみならず、多様な⽅法で活⽤することを検討していることを評価した」としている。 CI IV Transfer Coöperatief U.A.は、Copenhagen Infrastructure Partners P/S(デンマーク)が管理している投資ファンドの子会社。
青森県日本海南側の公募占用計画(出典 経済産業省)
公募占用計画によると、建設時の拠点港は青森港(青森市)。O&Mの拠点港は青森港と津軽港(鰺ヶ沢町)を活用する。代表企業のJERAは「3社は、それぞれが有する豊富なノウハウと強みを持ち寄ることで相乗効果を発揮し、十分な実力と実績を備えたコンソーシアムとして、長期的、安定的かつ効率的な発電事業を実現します。今後、本コンソーシアムは『青森県沖日本海(南側)における協議会意見とりまとめ』を尊重し、地域および漁業との共存共栄を目指して開発を進めてまいります。本事業は長期にわたるプロジェクトであることから、地域・関係各所の皆さまにご理解いただけるよう丁寧な説明を続け、ご協力をいただきながら、地域および国内経済の発展と日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります」とコメントしている。
青森県日本海南側と山形県遊佐町沖は2023年10月に再エネ海域利用法に基づく促進区域に指定された。このうち、青森県日本海南側は、県の西部のつがる市と鰺ヶ沢町の沖合で促進区域は1万375ha。同海域の法定協議会では、事業者が漁業への影響を調査すること、発電事業で得た利益を今後設置される基金に拠出し、地域や漁業の振興に役立てること、つがる市を含む世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」に影響を及ぼさない事業計画とする、こと、事業者選定から15年間の地域振興策として、漁業者への支援や地元を活用したサプライチェーンを構築することなどを意見集約している。
山形県遊佐町沖
丸紅が代表企業に
山形県遊佐町沖の促進区域(出典 経済産業省)
山形県遊佐町沖には、4つの事業体が公募占用計画を提出した。選定事業者は、丸紅、関西電力、BP Iota Holdings Limited、東京瓦斯、丸高(山形県酒田市)の5社で構成する「山形遊佐洋上風力合同会社」。事業計画によると、発電設備は着床式。発電設備出力は45万kW(1万5000kW×30基、Siemens Gamesa Renewable Energy製)。運転開始予定時期は2030年6月。BP Iota Holdings Limitedは、英国ロンドンに本社を置く BP p.l.c.の100%子会社。
山形県遊佐町沖の評価結果(出典 経済産業省)
山形県遊佐町沖の公募に参加したのは、選定事業者の「山形遊佐洋上風力合同会社」と、ユーラスエナジーホールディングス、Equinor Japan、ENEOSリニューアブル・エナジー、豊⽥通商、戸田建設の5社による「山形鳥海ウインドパワーコンソーシアム」、東京電⼒リニューアブルパワー、住友商事、三井不動産、東⽇本旅客鉄道の4社による「やまがたゆざコンソーシアム」、九電みらいエナジー、SSE遊佐洋上⾵⼒発電合同会社、⽯油資源開発の3社による「ゆざウインドパワー コンソーシアム」の4つの事業体だ。青森県日本海南側と同様に4つの事業体ともに、運転開始予定時期は2030年6月を提案した。また、価格点は4つの事業体ともに満点の120点を獲得している。青森県日本海南側と同様にすべての事業体が、供給価格をゼロプレミアムである3円/kWh以下で入札したことを示している。結果として、最も高い事業実現性評価点を獲得した「山形遊佐洋上風力合同会社」が選定された。
経産省では「調整⼒確保や系統混雑緩和に資する取り組みに関し、蓄電池の設置などの計画が具体的に⽰されていること、⼭形県漁協への⼈材派遣による中⻑期にわたる⽔産物の販路拡⼤など、遊佐町漁業の持続的発展につながる具体的な手立てを提案していること、他社と⽐較して商務条件の履⾏の確実性が⾼いオフテイカーをより多く獲得していることを評価した」としている。
山形県遊佐町沖の公募占用計画(出典 経済産業省)
公募占用計画によると、建設時の拠点港は酒田港(酒田市)。O&Mの拠点港としても酒田港を活用する。代表企業の丸紅は「本事業は、山形県遊佐町沖に発電容量45万kWの着床式洋上風力発電所を建設し、保守・運営を行うものです。本事業を通じて、地域社会の発展と国内洋上風力産業の活性化、ならびにゼロカーボン社会の実現に貢献していきます。丸紅は、2021年3月に気候変動長期ビジョンを策定し、中期経営戦略『GC2024』ではグリーン戦略を企業価値向上に向けた基本方針の一つと位置付けています。電力分野においては、日本を含む世界各国で発電資産を保有・運営しており、国内初の商業ベースでの大型洋上風力発電案件である秋田港・能代港洋上風力発電事業にも筆頭株主として参画しています。これらの発電事業で得られた知見・経験をもとに、今後も再生可能エネルギー発電事業の開発に取り組んでいきます」とコメントしている。
山形県遊佐町沖は、秋田県境にある遊佐町の沖合。促進区域は、吹浦漁港の南側から酒田市との境界にかけての約4100ha。同海域の法定協議会では、海岸線から約1.8kmの範囲には洋上風力発電設備を設置しないことや、沖側からの設置を検討すること、それに事業者は地域や漁業との共存共栄の理念を理解し、信頼関係の構築に努めること、超低周波音などの影響に地域住民から不安の声が示される場合は、必要な措置を検討することなどを意見集約している。
DATA
「青森県日本海南側」、「山形県遊佐町沖」における洋上風力発電事業者の選定について
取材・文/高橋健一