【洋上風力第1ラウンド】新制度の肝は「想定供給価格幅」の設定、事業完遂につながる制度設計を
2026/05/04
経済産業省と国土交通省は、洋上風力第1ラウンド3海域で再公募の準備を進めている。再公募を実施するにあたっては、想定供給価格幅の設定が制度の実効性を左右しそうだ。
メイン画像:洋上風力第1ラウンド「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」
上限価格の設定方法も
事業の成否に大きな影響

適切な供給価格での入札がされる価格点の設計(出典 経済産業省)
洋上風力ラウンド事業の公募制度見直しでは、新たな枠組みを設けて明確な前進がみられる。ただ新制度の肝となる、「想定供給価格幅」の設定が実際に事業を完遂できる水準となるかが、最大の焦点だ。
想定供給価格幅とは「事業完遂のために必要と考えられる水準を前提としたうえで事業者が現実的な創意工夫を講じることを想定した価格」と「供給価格上限額」の間の価格幅である。政府は、第1ラウンド再公募と第4ラウンド以降の公募で、ラウンドごとに想定供給価格幅を設定して、事前に公表する方針だ。つまり今後、洋上風力の産業基盤や長期PPA市場の成熟に伴い運転期間の延長などによる発電コストのさらなる低減や、30年以上の長期PPAによる需要家確保が見込まれることを踏まえ、各公募占用指針においてその時点の事業環境に応じて設定することになる。
第3ラウンドまで供給価格上限額の設定は、経済産業省の調達価格等算定委員会で議論していた。想定供給価格幅も、この委員会で検討される見通しだが、2月末までに次回公募の想定供給価格幅についての会議は開かれていない。エネルギー問題に詳しいシンクタンクの研究員は「想定供給価格幅が適正に設定されるかどうかが、第1ラウンド再公募と第4ラウンド公募の選定事業者が事業を完遂できるかどうかのカギを握っている。今後開かれる調達価格等算定委員会で議論される想定供給価格幅が新たな枠組みの大きな柱となるので、要注目だ」と強調する。
特に上限価格がどのように設定されるのかは、事業の成否を左右する。上限価格での入札は100点、上限価格から想定供給価格幅を減じた、下限価格以下での入札は一律満点の120点となる。その差は20点であり、想定供給価格幅が大きい場合、公募に参加する事業者は難しい判断を迫られる。
「第1ラウンドの再公募と第4ラウンドの公募においては、36円/kWh以上での落札を許容する価格帯が必要であり、第1ラウンド初回公募の上限価格29円/kWhの再現では不十分だ。洋上風力が存亡の危機を迎えている状況で、再度の撤退を招くような価格設定は避けなければならない。政府は、選定された事業者が適正なリターンを得て発電事業を確実に実施できる想定供給価格幅を設定しなければならない」(シンクタンク研究員)。
ただ、政府の上限価格の設定方針に懸念の声もある。業界関係者は、「上限価格は、現状のコストを自然体で積み上げたものではなく、事業者の努力によってさらに引き下げられる余地がある部分を盛り込んだ価格として設定される。つまり、事業者の努力を前提に価格を抑えるという発想だ。事業者の努力は当然あるべきだが、いまはまだ黎明期である。技術的にも、事業者の努力だけでコストを下げられる余地はほとんどない。既存の技術で最善のものを使って、最適な配置を行い、現行の制度のもとで事業を進めている。将来的には、運転開始後に一定の年数が経過すれば運用コストが下がる可能性はあるが、いまの段階では時期尚早だ。そうしたコスト低減の余地を、現時点で政府が盛り込もうとしている点に違和感がある」と指摘する。

オークション参加容認は
投資回収へ大きな前進
第2、第3ラウンド選定事業者の救済策として、長期脱炭素電源オークションへの参加を認めたことは評価できる。資本費比率が約7割と高い、洋上風力発電事業にとって大きな前進だ。同オークションは初期投資を含む資本費を回収可能とする仕組みだが、FIT・FIP認定発電所は原則対象外であったため、洋上風力発電には適用できない状況が続いていた。
また、従来の同オークションの固定費入札上限額10万円/kW/年では投資回収が困難であったが、昨年4月に上限を20万円/kW/年に見直す方針が示された。この見直しにより、第2、第3ラウンド選定事業者の救済策としての現実味が高まった経緯がある。
前述のシンクタンク研究員は「大きな前進だが、安心するにはまだ早い。長期脱炭素電源オークションをどのような条件で実施するのかについての詳細がこれから決まるからだ。そもそもインフレが進んでいるので20万円/kW/年でも十分かどうかは不透明だ。また、第2、第3ラウンドの落札容量280万kW分をすべてオークションで落札できるかどうかもまだ決まっていない」と心配そうに話す。
PROFILE
松崎茂雄
エネルギー問題を20年以上にわたって取材。独自の視点で国の政策に斬り込む経済ジャーナリスト。趣味は座禅とランニング。

WIND JOURNAL vol.10(2026年春号)より転載
取材・文/ウインドジャーナル編集部








