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経済効果40億円! 五島市が目指す地域脱炭素の街づくり戦略。市の担当者に聞く【特集:長崎県五島市】

日本で初めて、浮体式洋上風力発電の商用運転を始めた長崎県五島市。今、風車が作った電気は地域新電力を通して地域に供給されている。これによって地域に何がもたらされたのか、また、建造中のウインドファームや地域脱炭素の方向性について、市の担当者に詳しく聞いた。

(アイキャッチ画像:浮体式洋上風力発電設備「はえんかぜ」。画像提供:五島市)

「地元でできることは地元で」
風力発電事業に参入する企業も

長崎県五島市、福江島沖合の浮体式洋上風力発電設備「はえんかぜ」(出力2MW)。2011年に始まった環境省の実証事業の一環で、当初、五島市椛島沖に建設された。移設を経て、現在の崎山沖で2016年から商用運転を続けている。晴れた日は、福江港から「はえんかぜ」がゆったりと回る姿が遠くに見える。

「はえんかぜ」が生み出した電気は、地域新電力の五島市民電力によって島内の事業者や家庭に届けられる。五島市では、洋上風力発電はどのように受け止められているのだろうか。「洋上風力発電には10年以上取り組んでいることもあって、市民の間では、五島は再生可能エネルギーが豊富だという認識が浸透してきている印象です」と、五島市総務企画部未来創造課ゼロカーボンシティ推進班の簗脇太地係長は話す。

再エネ関連事業の支援にあたっては、市が事務局を担う「五島市再生可能エネルギー推進協議会」とは別に、地元企業が立ち上げた「五島市再生可能エネルギー産業育成研究会」のリーダーシップが大きかったと簗脇氏は振り返る。同研究会の「地元でできることは地元で(行う)」との考えから、浮体に用いるコンクリートの製造や風力発電設備のメンテナンスなどを市内の企業が行う。「洋上風力発電事業者などと協力し、ノウハウを学びながら新事業を展開、成長している企業もいます」と簗脇氏は語る。

地域雇用や経済循環にも効果
風力発電を軸に地域脱炭素を推進


(福江港から見た建造中の洋上風力発電設備の様子。画像提供:五島市)

五島市沖では今、新たな浮体式洋上風力発電設備8基によるウインドファームの建造が進んでいる。福江港近辺では、巨大なブレードのついた風力発電機が横たわる珍しい光景が見られる。8基の総出力は16.8MWにのぼり、運転開始は2024年1月の予定だ。

簗脇氏によると、ウインドファームの建造が始まったことで、関連工事に約150名が従事するようになったという。また、新しい洋上風力発電事業における五島市への経済波及効果は約40億円と予想されている。これには、飲食業や宿泊業など建設作業に関わるあらゆる産業が含まれる。

五島市がエネルギー政策の中心に据えるのは、洋上風力発電だ。新たなウインドファームで発電した電気も地域で活用し、さらなるエネルギーの地産地消を目指す。今後は、五島市再生可能エネルギー推進協議会をゼロカーボンシティを実現するための組織に改変し、民間企業や小売電気事業者などもさらに巻き込んでいく考えだ。太陽光発電設備と蓄電池の住宅・事業者向けPPAモデル事業やEV(V2H)などへの補助を検討し、地域脱炭素に力を入れていきたいと簗脇氏は意気込みをみせる。

話を聞いた人


五島市 総務企画部 未来創造課 ゼロカーボンシティ推進班 係長 簗脇太地氏
(画像提供:五島市)


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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