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洋上風力O&Mのプロフェッショナルが教える、これが日本に必要なO&Mツールだ!

洋上風力発電という今まで国内になかった産業において、どのようにO&Mに取り組むべきなのか。欧州の洋上風力O&Mの事情に詳しい土井製作所に最先端のO&M事情を聞く。同社の嘉悦崇代表取締役社長が、日本の洋上風力に最適なO&Mツールを解説する。

高強度樹脂バンドなら腐食ゼロ
表面処理に役立つ最新の動力工具

洋上風力のO&Mには、ロープを使ってタワーに登ったり船で往来したりといった、今までにない作業が多く発生する。その一方で、O&Mの作業時間をできるだけ短くし、発電のダウンタイムも最小化しなければ、発電事業としての収益性が低下してしまう。そこで、O&M作業効率を上げるための専門のツールの出番だ。

O&Mツールとして土井製作所の代表取締役社長である嘉悦崇氏が紹介するのは、まず、海底ケーブルなどの浮上設備の結束に便利な「スマートバンド」だ。「これは世界最高強度の樹脂バンドを製造する英国のメーカーが開発したもので、樹脂製なのでそもそも錆びません。それだけでなく、自由に結束できメンテナンスフリーのため、コストをおさえられる点も大きな魅力です」と嘉悦氏は話す。
スマートバンドは、組み合わせなどによって1トン以上の強度で結束ができ、欧州の海洋構造物のほか、日本の公共工事でも採用実績があるという。

次に、海中の建造物の維持に活躍するのが、構造物の表面処理や多様な作業に役立つ「モンティパワークリーンテック サブシーシステム」だ。嘉悦氏によると「サブシーシステムの最大の特徴は、水中での一種ケレン表面処理や研磨、洗浄などの作業を水流回転式動力工具で気泡やオイル漏れ無しで、静かに施工できる点です。再腐食や施工不良の主な要因である施工者による差を極力減らすこともできます。再腐食等はすなわち再施工、コストが増える要因ですから、これは大変重要なポイントなのです」という。

陸上では、ブリストルブラスターコードレスが発売された。作業時にはほとんど火花が出ず安全で、粉じんも少ないため、効率的かつ地球環境にやさしい点もアドバンテージだといえる。コードレスタイプ開発により長年の現場のニーズに応えられた、と嘉悦氏は強調する。

水の噴射で海中の付着物を除去
環境や作業者への負担も軽減

さらに、海中構造物や作業船の清掃作業などに最適なのが水中ポリッシャー工具の「サブシーシステム・キャビテーションロータークリーナー」だ。回転式のキャビテーションで付着物を吹き飛ばしながら清掃し、付着物のバキューム機能もある。エアーではなく水を噴射するため、泡の発生が抑えられ、作業者の視界を遮ることがないという。「その道のプロ渋谷潜水工業様のご協力を頂き、実際の潜水作業でも試していただいたのですが、作業音も小さく、作業時の視界や音にほとんど支障がないと好評でした。水を噴射するため、エアーと異なり水深に関係なく使用できる点も高く評価いただきました」と嘉悦氏も太鼓判を押す。

また、サブシーシステムは、ユニットを交換することで海中でも「ブリストルブラスター」と同様の表面処理を行える等の特徴も持っている。

1927年創立の土井製作所は、地中線材料の総合メーカーとして電力・通信関連事業、公共事業など幅広い分野のインフラ構築を支えてきた。2022年には創立95周年の節目を迎えた。次の100周年に向けては「防災減災・インフラメンテ・脱炭素」の3分野におけるソリューションを充実させていきたいと嘉悦氏は力を込める。

 

↑サブシーシステム・キャビテーションクリーニングガンの使用シーン

 

↑ブリストルブラスターサブシーの使用シーン

 

話を聞いた人

株式会社土井製作所
代表取締役社長 嘉悦崇氏


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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