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シリーズ「再エネの未来」プラント保守から風車O&Mに新規参入、「風車に関することなら何でもチャレンジ」

エネルギープラントの保守を行うエイブル(福島県)は、新規事業として風車O&M事業に取り組んでいる。手探りのスタートだったが「風車に関わることにはすべてチャレンジする」との意気込みで、確実に実績を重ねている。発電事業部長の市場裕介氏に話を聞いた。

再エネ事業で雇用を確保
太陽光やバイオマス発電所を運営

“Be able to“を社名の由来とするエイブル(福島県)は、1991年の創業時からエネルギープラントを中心に建設・O&M(運用・保守)事業を展開している。「東日本大震災以来、今も東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業などを通じて復興に取り組んでいます。しかし、年間の被ばく線量の限度の関係から、どうしても従事できない従業員や作業員が出てしまう。そうした従業員の雇用を確保するために再生可能エネルギー事業を始めました」と、発電事業部長の市場裕介氏は話す。

同社は福島県内に数多くの太陽光発電所をもち、木質バイオマス専焼で国内最大級の「福島いわきバイオマス発電所(定格出力112MW)」を2020年1月から関西電力、九電工と運営している。現在、新規事業である風車O&M事業への本格参入に向けて取り組んでいる。

「風車メンテを地域産業に」
県内企業3社がタッグ

「福島県のワーキンググループへの参加をきっかけに、プラントのO&Mに携わった経験を生かせると考え、チャレンジを決意しました」と、市場氏は風車O&M事業への参入を決めた経緯を振り返る。

福島県は、2040年に県内エネルギー需要を再生可能エネルギー100%とすることを目指し、県内に風車数百基の建設を予定している。県は風力発電などさまざまなテーマのワーキンググループを開催し、再生可能エネルギー関連産業の育成に取り組んでいる。

「これから県内に設置される風車のメンテナンスを県内企業でできれば、地域に新たな産業が生まれる。風車O&M事業を地域の産業にしたい」との考えから、ワーキンググループの参加企業によって2021年に設立されたのが、地元企業の集合体「一般社団法人ふくしま風力O&Mアソシエーション(FOMアソシエーション)」だ。誠電社の代表取締役 渡辺誠氏が理事長を務め、同社とインテックは理事企業として参画している。

手探りで風車O&Mへ参入
「風車に関わることなら何でも」

とはいえ、同社にとって風車O&M事業はまったくの異業種。「実績やノウハウ、ネットワークはゼロからのスタート。営業先へのアプローチも手探りでした」と、市場氏は新規参入のハードルを語る。「今はまず実績を増やそうと、FOMアソシエーションや既存のネットワークをフル活用して、風車に関わることなら何でもチャレンジしています」。これまでに全国各地で4件の風車O&Mを受注したという。

同社スタッフは現場に出る前に、FOMアソシエーションの風車メンテナンス技術者のトレーニング施設「FOMアカデミー」を受講する。「アカデミーでは規定の講習のほかにもいろいろなことを教えてくれる。校庭にはデモ機もあるので、風車の現場を意識したトレーニングができます」。現場に出た若手社員からは、学んだことがすぐに役立つという声があがっているという。

ロボットや遠隔運転の応用も視野
風車メンテで安心・安全を支える

同社の強みは、原発の作業にロボットや遠隔運転の技術を積極的に導入し、開発や提案にも力を入れている点だ。高さ100メートルの排気塔をクレーンの先端につけたツールで遠隔操作して切断するロボットを自社開発、解体した。今後、こうした技術を風車O&Mにも応用していく考えだという。

今後の展望について「2040年再エネ100%という県の目標に向けて、地元企業としてあらゆる面で貢献するべく、全国のプラントに携わった実績をもとに、風力発電所の安心・安全な運転を支えていきたい。積極的な営業活動や人材育成はもちろん、ロボットやドローンなどの新たな技術開発にも取り組んでいきます」と、市場氏は力を込める。

話を聞いた人

株式会社エイブル
工事本部 発電事業部  
市場裕介氏


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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