岩手県、イヌワシ保護へ 陸上風力の立地回避区域を設定へ
2024/03/21
国の天然記念物で絶滅危惧種のイヌワシの生息域を保全するため、岩手県は陸上風力発電施設の立地回避区域を設定する。全国でも初めての取り組みで、立地回避区域は、県の森林面積の約4割が該当する見込み。
岩手県の達増知事
環境保全と脱炭素の両立を
イヌワシの生息地は岩手県が全国で最も多い
岩手県の達増拓也知事は1月19日の記者会見で、「岩手県は再生可能エネルギーのポテンシャルが国内でも非常に高いと認識している。このポテンシャルを有効活用することによって、気候変動対策の推進や脱炭素化を進める責任がある。一方で、岩手県にはイヌワシなどの貴重な生物が生息するところが広くあり、生物多様性を守ることも岩手県によって重要な責任であると考えている。この2つを両立させるため、風力発電事業の立地を回避すべき区域を事業者向けに示したい。地域住民の理解のもとで、環境と共生した事業を進めていって欲しいと思う」と述べた。
イヌワシは大型の猛禽類で、クマタカやオオタカなどとともに食物連鎖の頂点に立つと言われるが、国内では生息数が500羽前後に減っていて絶滅が心配されている。岩手県ではこれまで35つがいの営巣地が確認されており、全国で最も多い。岩手県では、イヌワシが数多く生息していることは、たくさんの多様な生き物をはぐくむ豊かな自然環境が存在していることの証だとしている。
立地回避区域
森林面積の約4割が該当
岩手県によると、陸上風力発電施設の立地回避区域はイヌワシの重要な生息域や国立・国定公園の特別保護地区、国や県指定の保安林などを想定している。県の森林面積の約4割が該当する見込み。
岩手県では、今月中に立地回避区域を設定して事業者に示す方針。市町村が再生可能エネルギー促進区域を設定するのにも役立てたいとしている。立地回避区域以外の計画についても、地域特性を踏まえ、騒音や水質、景観への影響に関する約50項目のチェックリストを作成し、事業者に示すことにしている。
DATA
取材・文/高橋健一