海外メーカーへの依存が課題。吹き飛ばす活力を日本の風力発電産業に
2026/06/17
洋上風力発電のサプライチェーン構築が大きな課題となっている。九州大学洋上風力研究教育センター(RECOW)の吉田茂雄教授は、国産風車メーカーの不在が国内産業の空洞化や技術開発の遅れなどの深刻な問題を引き起こしていると訴えている。
国産風車メーカーの不在
周辺技術の開発にも影響
私は佐賀大学海洋エネルギー研究所と九州大学応用力学研究所の教員として洋上風力発電の研究をしています。また、RECOWの人材育成講座の「洋上風車工学」の講義を担当しています。この講義では、2025年度後期から、佐賀大学と九州大学の間で単位互換ができるようになり、両大学で洋上風力発電に興味を持つ学生が増えています。
私の専門は風車工学で、風車の超大型化に必要な空力モデルや統合最適化手法の研究開発、浮体に適した新しいコンセプトの風車の研究などを行っています。具体的には、15MW以上の浮体式洋上風車を想定し、風車の空力弾性的特性や制御を考慮して、風車の発電電力量の最大化、発電コストの最小化につながる技術を研究しています。
風力発電の総量と発電コスト、CO2排出量を考えると、必然的に風車は大型化します。しかし、いま国内には数MWを超える風車を設計・開発・製造できるメーカーはありません。日本のエネルギー安全保障や風力発電産業への影響を考えると、国産風車メーカーの不在は極めて深刻だと考えています。
2023年度の日本の電力供給に占める風力発電の割合は約1%ですが、将来はこの割合が10%を超える可能性があります。海外の大型風車メーカーは、風車の設計の詳細をブラックボックスにしていますから、このまま海外製の風車に依存すれば、日本の電力のかなりの割合をブラックボックスの技術に頼ることになります。将来の主力電源となる風力発電の要の風車がすべて海外製であるということは、エネルギー安全保障の面で大きな問題です。
大型風車メーカーがない中、風車の部品、施工、O&Mなど、風力発電に関するさまざまな技術開発が進められています。しかし、すべての技術は風車が前提となるので、国産の風車なしには、風車要素や周辺技術の開発・社会実装は進みません。また、日本と同様に、諸外国も国内調達比率を引き上げようとしており、周辺技術単独での海外進出にも大きな期待はできません。国産風車メーカーがない現状は産業面でも好ましくありません。

風力発電業界の産業競争力を
強化する取り組みを
北海道石狩湾新港沖と福岡県北九州市響灘沖の事業で、洋上風力サプライチェーンにおける政府の第1次目標である国内調達比率60%を達成しました。その裏側には大変な努力があったと思いますし、その努力には敬意を表します。これは将来、風力発電産業の大きな推進力になるでしょう。
その一方で、この目標値は国産風車がなくても実現し得るものです。政府は昨年8月、40年までに国内調達比率を65%以上に上方修正した第2次目標を公表しました。しかし、風力発電産業の質的な転換、つまり、国内市場における国内企業の売り上げ・利益の向上から、自動車に続く大きな産業への転換を図るには、国際的に競争力がある国産風車メーカーを核とした風力発電産業の再構築が不可欠と考えています。
そうなるには、本質的には社会の活力が必要だと思います。これはそれぞれの企業が生み出せるものではなく、国として産業競争力を強化する取り組みが不可欠です。風力発電事業は規模が大きく、いまや欧州や中国の風車メーカーとの技術的なギャップは拡大しています。これを打開するには、風車の国産化と洋上風力発電の事業化を促進するための政策・施策と、この前提が整った上で、産業界を挙げたチャレンジが必要です。活力のある産業には、若く意欲のある研究者・技術者が集まり、自律的に成長が加速することが期待できます。そのために私も尽力したいと考えています。
PROFILE
九州大学 応用力学研究所/
洋上風力研究教育センター
佐賀大学 海洋エネルギー研究所
吉田 茂雄教授
取材・文/山下幸恵(office SOTO)
WIND JOURNAL vol.10(2026年春号)より転載










