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関西電力が原子力コーポレートPPAで窓口設置、既設の発電所を活用

関西電力は7月9日、既設原子力発電所と水力発電所を活用したオフサイト型コーポレートPPA(フィジカルPPA)の実現に向けて、法人を対象とした問い合わせ窓口を開設すると発表した。原発を活用したフィジカルPPAは、国内初の取り組みで、これにより季節・天候・時間帯に左右されにくい安定的な脱炭素電力を供給するとしている。

メイン画像:関西電力美浜原子力発電所(福井県美浜町)

<目次>
1.関西圏のDC新設に 原子力PPAで供給拡大
2.RE100で 原子力は対象外
3.規模が小さいPPA市場 再エネへの影響は?
4.再エネ市場を 毀損しないような慎重な運用を

 

関西圏のDC新設に
原子力PPAで供給拡大

 

関西電力のフィジカルPPAスキーム(出典 関西電力)

 
関西電力は原子力PPAという新たなスキームにより「電気」と「環境価値」を一体的に供給することで需要家の脱炭素化に貢献し、燃料や市場価格変動リスク低減に寄与することが期待されるとしている。

AIの活用拡大でデータセンター(DC)の建設が急拡大しており、これに伴ってDC向け電力需要が増えて、電力の取り合いも起きていると言われる。またDC事業者としても電力調達における脱炭素化が強く意識されるようになっているなかで、米国でもハイパースケーラーなどが原発と電力調達契約を交わす事例も出てきている。特にDCは24時間365日稼働するものであり、太陽光や風力発電のような変動制電源はDC電力需要とのマッチングはあまり良くない。

GHGプロトコルのスコープ2改訂で検討されているアワリーマッチングが導入されると、変動性再エネ電源の場合は蓄電設備が必須となる。その意味では、トラブルなどがなければ1年中一定出力で稼働している原子力はDC向けのカーボンフリー電力として相性が良く、首都圏に次いでDC新設が集中している関西圏では原子力PPAの供給拡大が見込まれそうだ。

 

 

RE100で
原子力は対象外

ただこの原子力PPAにはいくつか疑問点もある。これまで国内のフィジカルPPAは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを活用したものが中心となっている。再エネPPAの最大の意義は、企業の契約によって「世の中に新しい再エネ発電所が増える(=追加性がある)」ことだが、関西電力の新たな取り組みは既設発電所の電力を供給するもので、追加性がない。新規に再エネ電源が導入されないどころか、PPA市場に原発の大規模電源が流入することで、再エネ電力の供給にブレーキがかかり新規投資が阻害されかねないという懸念が出ている。

また国際イニシアチブである「RE100」は、脱炭素化の手段として原子力発電を認めておらず、あくまで再エネのみを対象としている。そのためRE100参加企業は原子力PPAだけでは目標を達成できなくなる。原子力PPAによって再エネ開発が停滞した場合、世界基準の『再エネ100%』を目指す輸出企業やグローバルIT企業が、将来的に日本国内で再エネPPAを十分に調達できなくなるという、中長期的なしわ寄せにつながる可能性も指摘されている。
 

規模が小さいPPA市場
再エネへの影響は?

 

コーポレートPPA契約数の推移(出典 自然エネルギー財団)

 
また最も大きな問題は、国内のPPA市場の規模がまだ小さいこと。DC向け電力需要の拡大などを背景に市場は急拡大しているが、その規模はまださほど大きくなっていない。自然エネルギー財団の調査によると、2025年時点のコーポレートPPA契約件数は148件まで拡大しているが、その大半は太陽光発電である。24年のコーポレートPPA電力の容量規模は900MW台と言われている。25年に前年比1.5倍強に拡大したと想定しても、その規模は1400MW程度にすぎない。

この程度の規模でしかないPPA市場に、原子力発電の電力が大規模に流入して再エネのPPA販売先を原発電力が奪うことにならないか、という懸念が生じている。それでなくとも、原発の再稼働によって再エネの出力抑制が頻発しているなかで、再エネの事業性はより不透明になりそうだ。
 

再エネ市場を
毀損しないような慎重な運用を

原子力発電は安定電源とされているが、必ずしも24時間365日確実に運転されるわけではない。特に日本の既設原子力発電所は、運転開始から長期にわたって稼働している設備が多く、トラブルによる停止も少なくない。また地震などの自然災害による停止リスクもある。問題は停止期間中の代替電力調達コストを契約でどのように扱うのか。関西電力は他の電源を保有しているため、そこから同等の金額で供給を確保するのか、それとも卸電力市場から時価で調達するのか、供給方法によって需要家側のコストは大きく変動する。

また10~20年の長期契約となるコーポレートPPAで将来の制度変更に伴う安全対策費用やバックエンド費用負担などをどう考えるかなど、契約上どのように対応するかも今後注目すべき点といえる。いずれにしても原子力PPAが再エネ市場を毀損しないような方法で慎重に運用されていくことを強く望んでいる。

 

 

DATA

関西電力 既設の原子力・水力発電所を活用したオフサイト型コーポレートPPAの窓口開設について


取材・文/宗 敦司

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