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北九州市を日本のアバディーンに 洋上風力産業推進機構が正式に発足

福岡県北九州市で5月22日、響灘洋上風力産業推進機構が正式に発足した。市が進める「グリーンエネルギーポートひびき」構想を民間から支える役割を担うもので、英国のアバディーンのような「浮体式洋上風力ハブ」を目指す。ただその目標達成には多くの課題が横たわっている。

 

<目次>
1.日本全国と東アジアがターゲット 浮体式の一大産業拠点を目指す
2.メンテナンス事業や人材育成で拠点 国内洋上風力の停滞が課題

 

日本全国と東アジアがターゲット
浮体式の一大産業拠点を目指す

 


北九州港の浮体式拠点エリア(出典 響灘洋上風力産業推進機構)

 
響灘洋上風力産業推進機構(REACH:Renewable Energy Alliance for Cluster Hub)には、九電みらいエナジー(福岡市)をはじめ、クラフティア(旧社名:九電工)や西部ガスなど地元企業のほか、日揮、日鉄エンジニアリング、商船三井、ジャパンマリンユナイテッドなど約50の企業・団体が参画し、サプライチェーンの構築や浮体式拠点の開発を主導する。

REACHはこれまで任意団体として活動してきたが、これを機に一般社団法人となり、より本格的な活動を開始する。昨年5月には北九州市に「浮体式拠点開発に向けての提言書」を提出した。これは北九州市が響灘地区で計画する浮体式拠点の開発に関する提言であり、拠点のターゲットを日本国内の全海域および東アジア海域と設定し、官民連携(PPP)方式のもと響灘西地区(72ヘクタール)の特徴を活かした開発を行い、2030年度の浮体式拠点稼働を目指す。

このためグローバル市場で高い経験値を持つ開発主体を選定し、各機能拠点において戦略的に事業展開する企業をパートナーとして、浮体式拠点の開発、管理・運営、浮体基礎や係留装置などの製造・搬出、風車据え付け、積み出し、O&M、海陸物流事業などの事業を行う考えだ。
 


北九州響灘洋上ウインドファーム(写真提供 ひびきウィンドエナジー)

 
北九州市では今年3月、発電容量22万kWという国内最大の洋上風力発電所である「北九州響灘洋上ウインドファーム」が商業運転を開始した。REACHはこれを機に北九州市を洋上風力関連産業の大拠点とすることを目指して一般社団法人化された。
REACHは今後、同市若松区のひびき地区で、①風車や部品原材料の物流、②風車部材の製造、③設置場所への積み出し、④洋上風力発電所の維持管理――の4つの機能を果たす拠点化を進める。このうち風車部材製造では、デンマークのベスタスが国内拠点工場の候補地の一つとしていることから、誘致活動を積極展開していく。
 

 

メンテナンス事業や人材育成で拠点
国内洋上風力の停滞が課題

 


基地港湾として整備された北九州港の部材置き場(写真提供 ひびきウィンドエナジー)

 
REACHには、発電事業者だけでなくゼネコンや港湾事業者、重工メーカー、鉄鋼メーカー、海運会社、メンテナンス会社、金融機関、大学・研究機関など、洋上風力のサプライチェーン全体が参画している。これはデンマークのEnergy Cluster Denmarkや英国のScottish Offshore Wind Energy Councilといった風力産業クラスターをモデルにしている。そのなかでも、英国で海洋油田開発を基盤として洋上風力産業の集積地となったアバディーンのような姿を北九州で実現しようとしているようだ。

REACHでは響灘を洋上風力産業の集積地とするため、基礎構造物や海底ケーブル、変電設備、O&Mサービスへの企業の参入を支援する。そのうえで、風車のメンテナンスや高所・海上での作業要員など人材面での不足を補うため、大学や専門機関と連携し、人材育成プログラムの構築を進めていく。こうした取り組みを積み重ねて一大産業集積地を構築して国内洋上風力の主力拠点とし、さらに東アジアへの事業展開を図っていく。これにより北九州市をアジアの洋上風力製造・保守基地にするための産業政策プラットフォームとしていく考えだ。
 


日鉄エンジニアリング若松工場で製造されたジャケット式基礎(写真提供 ひびきウィンドエナジー)

 
だが、それには大きな課題がある。欧州で洋上風力の拠点が成立した背景には、各拠点でギガワット級の案件が毎年継続的に具体化しているのに対して、日本ではまだ案件が限定的であり、昨年8月に事業者が撤退した第1ラウンドの再公募もまだ行われていない。このため現状では洋上風力市場への参画を目指す企業が工場を建設しても安定した稼働が見込めず、投資決定がなかなかできない状況だ。

北九州市響灘は今後、世界に競合が育っていない浮体式の分野で優位性を確保していく方針だ。日本国内では大規模な浮体実証が開始され、浮体係留索やアンカーなど係留システムで日本企業は競争力を持つと言われている。ただ浮体式の風車として今後20MW級が主流になると、150mを超えるブレード長や2000トン以上のタワー重量、数万トンに達する浮体重量を響灘港が支えられるかどうかが問われる。

さらに、アジアへの輸出拠点化を目指すとなるとスピードの問題もある。第1ラウンド再公募や第4ラウンドの公募が停滞するなか、国内での産業集積構築が遅れていくことで、その間に韓国や台湾などがアジアの一大拠点化していくことも考えられる。「日本のアバディーン」の実現には集積地としての能力と人材確保、O&M事業の成立に加えて、日本の浮体式風力市場を早期に立ち上げていくことが特に重要となりそうだ。
 

 

DATA

北九州市 浮体式拠点開発にかかる「提言書」受理について


取材・文:宗 敦司

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