【洋上風力第1ラウンド】占用指針の改訂完了、3海域は6月中にも具体的な手続き開始へ
2026/06/08
経済産業省と国土交通省は6月5日、「一般海域における占用公募制度の運用指針」の改訂を公表した。今後は洋上風力第1ラウンド3海域の事業者公募に向け、6月中にも各海域ごとの指針案公示といった具体的な手続きが順次開始される見通しだ。
メイン画像:洋上風力第1ラウンド「千葉県銚子市沖」
洋上風力の占用公募制度
運用指針改訂の経緯

洋上風力第1ラウンド「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」
今回の改訂は、昨年8月に三菱商事が第1ラウンド3海域から撤退を表明したことを受けて、洋上風車や送電ケーブルといった風力発電に係る電源投資を、激変する国際情勢や経済環境のなかでも確実に完遂させる観点から実施されたものである。世界的な資材価格の高騰、さらに事業収入・費用の変動リスクが高まるなかで、大規模かつ長期間におよぶ洋上風力プロジェクトを安定的に維持・継続できる強靭な事業組成が求められていた。そのため、国は事業者選定の評価基準をより現実的な市場環境に即したものに見直すため、専門家による審議を重ねるとともに、広く市場関係者からの意見を集約する手続きを進めてきた。
今回の改訂の背景には、過去の公募から得られた知見や、世界的なサプライチェーンの逼迫、為替レートや金利の変動など、事業者が直面するリスクの高度化がある。長期にわたる安定的な電力供給を担保するためには、単に低価格を競うだけでなく、確実な着工と維持管理を遂行できるだけの事業実施能力を厳格に評価することが不可欠であるとの判断に基づいている。

占用公募制度の改訂内容
4つのポイント
公募占用計画の評価の概要(出典 経済産業省)
今回の運用指針の改訂にあたり、国は今年1月22日から2月22日までの期間にパブリックコメントによる意見募集を実施した。その結果、計74者から301件もの多くの意見が寄せられ、業界内における関心の高さが示された。提出された意見には、価格設定の柔軟性や評価基準の明確化を求める声が多く含まれており、これらの内容を踏まえて確定した改訂のポイントは、主に以下の4点に集約される。
第1に「想定供給価格幅の設定」である。国民負担の抑制と事業完遂を両立させるため、上限価格との間に一定の価格幅を設け、価格点の採点に柔軟性を持たせた。これにより、極端な低価格入札による事業の頓挫リスクを低減させる。第2に「事業実現性評価点の配点の見直し」、第3に「より精緻な事業実現性の採点」が挙げられる。企業の財務基盤や施工計画の詳細性を確認する基礎的・高度なチェック項目が設けられ、事業の確実性が厳格に評価される。資金計画や収支計画におけるインフレ、為替、金利などの感度分析シナリオの適切性も厳密に審査されることとなる。第4のポイントは「迅速性の配点の引き下げとスケジュールの柔軟性の確保」であり、エネルギー政策目標への貢献を考慮しつつも、無理のない現実的な開発期間の設定を促す仕組みとした。
なお、これら4つの主要な改訂点以外の具体的なルール、例えば特定の事業者に案件が集中することを防ぐ「落札制限」や、「選定事業者が撤退した際のルール」などについては、今回の共通指針ではなく、今後海域ごとに策定される個別の公募占用指針において明記される予定である。また、事業者間で関心の高い具体的な「供給価格上限額」の数値や、過去の選定事業者を対象とした「長期脱炭素電源オークションへの参加機会の付与」といった環境整備策についても、今回の共通指針の本文内には含まれておらず、今後の個別指針や各委員会の審議に委ねられる。
第1ラウンドの公募開始は
早くても秋以降にずれ込む見通し

事業者選定手続きのイメージ(出典 経済産業省)
共通の運用指針が改訂されたことを受け、洋上風力第1ラウンド「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の計3海域における具体的な公募手続きが本格的に動き出す。
しかし、事業者が実際に公募占用計画を提出する本格的な公募開始の時期については、今後の法的な手続きを踏まえると、一定の期間を要することに留意が必要だ。海洋再エネ整備法に基づき、各海域固有の公募占用指針を策定するにあたっては、まず「供給価格上限額」などについて調達価格等算定委員会の意見を聴取しなければならない。その後、上限価格や評価基準を盛り込んだ「公募占用指針案」が提示され、約1ヶ月間にわたる一般からの意見募集(パブリックコメント)が実施される。
経済産業省および国土交通省の動向を考慮すると、6月中から夏にかけて、これら調達価格等算定委員会の開催や、各海域の指針案に対するパブリックコメントの手続きが順次開始される見通しだ。寄せられた意見の精査や調整期間が必要になるため、国が各海域ごとの正式な「公募占用指針」を公示し、事業者の応募受け付けをスタートする実質的な公募開始の時期は、早くとも2026年秋頃にずれ込む可能性が極めて濃厚である。
指針の正式公示後は、原則として6か月以上の公募占用計画提出期間が確保される。自治体の担当者や参画を予定している風力発電関連事業者にとっては、2026年秋の公示から2027年春頃にかけての時期が計画づくりのヤマ場となる。新たに導入された「想定供給価格幅」などの採点ロジックや、サプライチェーン形成、地域共生策の評価基準を深く精査し、現実的かつ強靭な事業計画を練り上げるための猶予が、結果として事業者側に十分に与えられるスケジュール感となりそうだ。

DATA
取材・文:ウインドジャーナル編集部








