【第2ラウンド深堀り解説①】第2ラウンド4海域 それぞれ別々の企業連合が選定事業者に
2024/03/25
洋上風力第2ラウンドで公募していた4海域の選定事業者が出そろった。1事業体あたりの発電・送電容量の上限を計100万kWとする落札制限を設けたこともあって、公募参加を見送る事業体が相次ぎ、4海域でそれぞれ別々の企業連合が選定された。
1. 秋田県八峰町、能代市沖 JRE、東北電力連合が選定事業者に
2. 秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖 JERA、伊藤忠連合が選定事業者に
3. 最大海域の新潟県沖も 運転開始時期が明暗分ける
4. 長崎県西海市江島沖 2事業体が大接戦に
秋田県八峰町、能代市沖
JRE、東北電力連合が選定事業者に
秋田県八峰町、能代市沖の評価結果(出典 経済産業省)
第2ラウンドで公募した4つの海域ともに運転開始予定時期が最も早い事業体が選定された。秋田県北部の「八峰町、能代市沖」は、3つの事業体が入札に参加した。選定事業者は、ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)、イベルドローラ・リニューアブルズ・ジャパン、東北電力の3社で構成する「合同会社八峰能代沖洋上風力」。代表企業のJREは、ENEOSグループの再エネ事業会社。イベルドローラ・リニューアブルズ・ジャパンは、スペインに本社があるイベルドローラの日本法人。事業計画によると、発電設備は着床式。発電設備出力は37万5000kW (1万5000kW×25基、Vestas製)。運転開始予定時期は2029年6月。
秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖
JERA、伊藤忠連合が選定事業者に
秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖の評価結果(出典 経済産業省)
3つの海域ともに運転開始予定時期が最も早い事業体が選定された。秋田県中部の「男鹿市、潟上市、秋田市沖」は、3つの事業体が入札に参加した。選定事業者は、JERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力の4社で構成する「男鹿・潟上・秋田Offshore Green Energyコンソーシアム」。事業計画によると、発電設備は着床式で、モノパイル式基礎を採用する。発電出力は31万5000kW(1万5000kW×21基、Vestas製)。運転開始予定時期は2028年6月。
この海域でも、公募に参加した3つの事業体が、いずれも実質的な下限価格であるゼロプレミアムの3円/kWh以下で応札したため、価格点では差がつかず、結果として運転開始時期が最も早い事業体が選定された。
最大海域の新潟県沖も
運転開始時期が明暗分ける
新潟県村上市、胎内市沖の評価結果(出典 経済産業省)
第2ラウンドで対象海域が最も広い新潟県村上市、胎内市沖は、4つの事業体が入札に参加した。選定事業者は、三井物産、RWE Offshore Wind Japan村上胎内、大阪瓦斯の3社で構成する「村上胎内洋上風力コンソーシアム」。事業計画によると、発電設備は着床式で、モノパイル式基礎を採用する。発電出力は68万4000kW(1万8000kW×38基、GE製)。運転開始予定時期は2029年6月。この海域では、上位3つの事業体が3円/kWh以下で応札し、ここでも運転開始時期が明暗を分けた。
長崎県西海市江島沖
2事業体が大接戦に
長崎県西海市江島沖の評価結果(出典 経済産業省))
長崎県西海市江島沖は、2つの事業体が入札に参加した。選定事業者は、住友商事、東京電力リニューアブルパワーの2社で構成する「みらいえのしまコンソーシアム」。事業計画によると、発電設備は着床式で、ジャケット式基礎を採用する。発電出力は42万kW(1万5000kW×28基、Vestas製)。運転開始予定時期は2029年8月。供給価格は22.18円/kWh。モノパイル式よりもコストが割高なジャケット式を採用するため、ゼロプレミアムの3円/kWhで応札した事業体はなかった。
2つの事業体が激しい主導権争いを繰り広げた長崎県西海市江島沖。「みらいえのしまコンソーシアム」は、事業実現性評価点で大きく下回ったものの、競合相手よりも7円/kWh近く低い価格を提示して、大接戦を制した。
公募参加を見送る
事業体が相次ぐ
秋田、長崎の計3海域で、Vestas製の風車を採用(長崎県西海市江島沖)
洋上風力第2ラウンドでは、1つの事業体が大半の対象海域を落札しないよう、1事業体あたりの発電・送電容量の上限を計100万kWとする落札制限を設けていた。この影響もあって、環境影響評価を事前に実施したにも関わらず、公募参加を見送る事業体が相次いだ。
入札の結果、4海域でそれぞれ別々の事業体が選定され、風車メーカーは、「秋田県八峰町、能代市沖」と「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」、「長崎県西海市江島沖」がVestas。新潟県村上市、胎内市ではGEが採用された。第1ラウンドで秋田、千葉の計3海域を落札した三菱商事は、第2ラウンド4海域の入札に参加しなかった。
取材・文/高橋健一