浮体式実証「フェーズ2」2海域ともに セミサブ型を選定
2024/10/15
経済産業省は、浮体式洋上風力発電の導入に向けた実証事業を、「秋田県南部沖」、「愛知県田原市・豊橋市沖」で実施する。2海域ともにセミサブ型の浮体が選定され、波紋を広げている。
セミサブ型で現場実証
関係者は戸惑いの表情
「北海道沖が選ばれなかったことにも驚きましたが、2海域ともにセミサブ型が選定されたことは全く想定していませんでした」。今年6月、国内メーカーの担当者は経産省の発表を見て戸惑いの表情を隠せなかった。浮体式実証「フェーズ2」には4道県5区域の応募があり、有識者による第三者委員会の意見を踏まえて昨年10月に「北海道石狩市浜益沖」、「北海道岩宇・南後志地区沖」、「秋田県南部沖」、「愛知県田原市・豊橋市沖」の4海域を候補区域に選定した。
「少なくとも1ヶ所は北海道沖が選定され、それぞれ別々の施工方法が選ばれる」というのが大方の予想だった。しかし、実証区域に選ばれたのは、「秋田県南部沖」、「愛知県田原市・豊橋市沖」の2海域。いずれも、セミサブ型の浮体で実証を行う。
秋田県南部沖は水深約400mの海域に、1万5000kW以上の風力発電機2基を設置する。丸紅洋上風力開発が幹事会社で、計9社が選定された。愛知県田原市・豊橋市沖は水深80~130mの海域に、1万5000kW以上の風力発電機1基を設置する。中部電力系のシーテックが幹事会社で、計5社が選定された。
経産省の発表に大喜びしているのは、愛知県の関係者だ。大村秀章知事は、「実証区域は良い漁場なので漁業関係者としっかり調整を行ってもらう必要がある。事業が円滑に実施されるよう県として積極的に協力していきたい」と話した。幹事会社のシーテックは、「浮体式洋上風力発電の早期のコスト低減と導入拡大を目指した技術開発に取り組んでいく」としている。
NEDOはセミサブ型を
プッシュするわけではない
次世代浮体式洋上風力の技術開発のイメージ(出典 NEDO)
NEDOは、総額2兆円の「グリーンイノベーション基金」を活用して2022年から「フェーズ1」として、台風、落雷などの気象条件やうねりといった海象条件などが存在するアジア市場に適合し、日本の強みを活かせる要素技術の開発を4つの分野で取り組んできた。2024年度からは、「フェーズ2」として、システム全体として関連要素技術を統合した浮体式洋上風力の実証実験を開始する。
7月に開催された大阪大学の共同研究講座で、NEDO再生可能エネルギー部の三枝俊介氏は、「2件ともセミサブ型だが、NEDOはセミサブ型をプッシュするわけではない。どの形式を優先するかを事前に決めていたわけではない。コスト、タクトタイム、実施体制、今後の取り組みなどをヒアリングして今回の結果に至った」と説明した。
セミサブ型に限定して現場実証を開始する日本の浮体式洋上風力発電。2海域ともに、5年後の2029年度の運転開始を目指している。
DATA
グリーンイノベーション基金「浮体式洋上風力発電実証事業」の実施海域及び事業者を決定しました
取材・文/高橋健一
WIND JOURNAL vol.7(2024年秋号)より転載