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【洋上風力の人材育成】オンライン講座で「社会人にこそ専門教育を」

九州大学の洋上風力研究教育センターは、世界最高水準の洋上風力関連研究・教育の拠点づくりを目指して、2022年4月に設立された。社会人を対象にしたオンライン講座を開講している宇都宮智昭教授に、人材育成にかける思いを聞いた。

<目次>
1.専門知識を体系的に学ぶ「リカレント教育」を提供
2.入門編講義を学生にも開講 風力発電産業の間口を広げる

 

専門知識を体系的に学ぶ
「リカレント教育」を提供

洋上風力発電はこれまで日本になかった産業ですから、専門知識を持った人材が圧倒的に不足しているのが現状です。洋上風力発電について、より専門性が高く体系的な知識を得られる場はまだ多くはありません。だからこそ、社会人に向けた教育、いわゆるリカレント教育が必要です。

九州大学は、洋上風力発電の専門人材を増やすために、2022年に洋上風力研究教育センター(RECOW)を設立しました。独自の風車技術や浮体技術、風況解析技術、流体構造解析技術を有する九州大学、海洋エネルギー研究所を持つ佐賀大学、洋上風力発電事業の経済性などを研究している北九州市立大学が、大学生・大学院生向けに行っている講義をベースとして、社会人に向けてオンラインの「洋上風力発電人材育成講座」を開講しています。


宇都宮研究室がある九州大学伊都キャンパス(筆者撮影)

この講座では、企業のエンジニアなどを対象として、洋上風力発電プロジェクトの計画から設備の撤去まで、一連のフェーズに必要なエンジニアリングの専門知識を身につけてもらうことを目的にしています。

例えば、着床式の次のステージである浮体式洋上風力発電では、浮体の動揺解析に極めて高度な技術が求められます。専用のソフトウェアなども登場し始めていますが、正しい知識を持って使用することが重要です。データのインプットが不十分で、適切ではない答えが導き出されると、かえってリスクが増大する恐れがあるからです。ソフトウェアの機能を理解して使いこなすには、浮体の動揺解析手法についての深い知識が不可欠です。

こうした知識を身につけてもらうために、社会人向けの講義では演習やレポートなどを課すこともあります。仕事をしながら受講することはハードだと思いますが、受講者の皆さんからはたくさんの質問も寄せられていて、意欲的に学んでいただいていると手応えを感じています。


 

入門編講義を学生にも開講
風力発電産業の間口を広げる

洋上風力発電には、経済性や環境影響の評価、法制度などさまざまな分野が関係します。そのため、文系・理系を問わず多くの学生に洋上風力発電に関心を持ってもらいたいと考えています。入門編の講義は今年度後期から、社会人だけでなく、九州大学の全学部・全学年の学生も受講できるようにしました。「洋上風力について勉強できるから九州大学に入学しました」と話す学生もおり、若い人々の間で洋上風力発電への関心が高まっていると感じます。

ビジネスの裾野が広い洋上風力発電産業には多くの人材が必要ですが、足元の人材不足は深刻です。この講座を通じて、より多くの人に確かな基礎知識を身につけてもらい、日本の脱炭素化のために必要な洋上風力発電産業をリードしてほしいと考えています。

PROFILE

九州大学洋上風力研究教育センター
支持構造物・洋上送電研究部門長
九州大学工学研究院
教授

宇都宮智昭氏


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

WIND JOURNAL vol.7(2024年秋号)より転載

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