経産省、相次ぐブレード破損事故の防止対策 落雷対策の技術基準改正案などの意見公募
2026/05/21
経済産業省は5月15日、風力発電設備の技術基準の解釈と定期自主検査の方法の解釈に関する一部改正案を公表し、意見募集を開始した。秋田県内で相次ぐブレード破損事故を受けた措置で、事業者の管理体制強化を促す。
1.相次ぐブレード破損事故で 浮き彫りになった課題
2.技術基準の解釈改正で求められる 常時把握と空白時の点検
3.定期自主検査の解釈改正による 点検周期の見直しと高度化
4.意見募集は 6月13日まで受け付け
相次ぐブレード破損事故で
浮き彫りになった課題
2025年5月に秋田市でブレードが落下し、近くにいた男性が死亡
今回の制度改正の背景には、秋田県内で相次いで発生した風力発電設備のブレード破損事故がある。2025年5月には秋田市の新屋海浜公園でブレードの落下事故が発生し、近くにいた男性が死亡している。その後の調査で過去の落雷による炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の補強板の損傷などが原因と推定されると発表された。さらに今年4月には、秋田県男鹿市でもブレードが折れる事故が発生している。
男鹿市の事故をめぐっては、原因究明に不可欠な落雷検出装置が2025年8月から今年1月上旬までの長期間にわたって停止していたことが判明した。落雷で風車外部の変電設備が故障したことに伴い、検出装置を含む風車全体の運転を停止させていたためである。この運転停止期間中の落雷データが記録されておらず、適切な安全確認が行えないリスクが浮き彫りとなった。
風力発電事業者には、落雷検出装置の設置など、雷から設備を保護する措置が義務付けられているが、運転停止中であっても雷のリスクは排除できない。経産省は今年5月1日付けで全国の事業者に対し、運転停止中も含めた落雷データの確認や、データ欠損時の民間雷観測システムの活用などを求める緊急要請を行っている。今回の解釈改正は、こうした一連のトラブルや行政指導を踏まえ、保安基準を明確化して実効性を担保することを目指している。
技術基準の解釈改正で求められる
常時把握と空白時の点検
今年4月に秋田県男鹿市でブレードが破損
「発電用風力設備の技術基準の解釈」の一部改正案では、特に雷撃から風車を保護する措置の要件が厳格化された。従来の規定では、風車への落雷時に直ちに自動停止できるよう落雷検出装置を設置することを求めていた。改正案ではこれに加え、風車への雷撃の有無を「常に把握」することができる措置を講じることを明記している。
具体的には、落雷検出装置の設置に留まらず、監視カメラの設置や民間などの気象情報の利用といった複合的な手段を講じることを求めている。万が一、これらの措置によっても風車への雷撃の有無を完全に把握できなかった期間が生じた場合には、ブレード内部の内視鏡を用いた点検などを実施し、雷撃による損傷がないかを確認することを義務付ける。これにより、男鹿市の事例のように装置が停止していた期間の安全確認の盲点を無くす意図がある。
また、ブレードの素材に関する規定も追加された。ブレードに炭素繊維強化プラスチックのような導電性を持つ材料を使用する場合は、その材料と雷撃の電流を地中に逃がす引き下げ導体(ダウンコンダクタ)とを、適切に電気的接続を行うことを義務付けている。
2025年4月に発生した秋田市の事故では、ブレード内部において、炭素繊維強化プラスチック製の補強板と、ダウンコンダクタ、それに接続されたC形金属が、電気的に接続されていない構造であったことから、被雷時にそれらの間で大きな電位差が生じて放電が発生し、損傷が生じたと推定されると結論付けている。
定期自主検査の解釈改正による
点検周期の見直しと高度化
「電気事業法施行規則第94条の3第1号および第2号に定める定期自主検査の方法の解釈」の一部改正案では、ブレードの検査方法や周期に関する見直しが行われた。これまでブレード内部の気中部に関する点検周期は「2年または3年」とされていたが、落雷条件が厳しい地域における基準が具体化、厳格化された。
具体的には、発電用風力設備の技術基準の解釈の別図(下段にリンクを記載)に示される「A線で囲まれた地域」(主に冬季雷が発生する地域)に設置された設備については、内部全体の目視などの点検周期を「1年」へと短縮する。また「B線で囲まれた地域」に設置された設備は「2年」とする。なお、近年導入が進む洋上風力発電設備については、その設備に最も近接する行政区域がある地域に設置されているものとみなして、この地域区分を適用することとした。
さらに、アクセス不可能な範囲の検査方法についても改められた。従来の基準ではアクセス可能な範囲の目視などが中心であったが、改正案ではアクセス不可能な範囲について、内視鏡による点検や非破壊検査、あるいはこれらに類する方法を用いて損傷の有無を確認することを明記し、検査の高度化を求めている。ダウンコンダクタの導通試験に関しても、点検周期の規定が見直され、地域特性に応じた適切な頻度での健全性確認を促す内容となっている。
意見募集は
6月13日まで受け付け
経済産業省産業保安・安全グループ電力安全課が実施しているこの意見公募は、行政手続法に基づく手続きとして行われている。案件番号は、定期自主検査の方法の解釈に関するものが「595126090」、技術基準の解釈に関するものが「595126091」となっている。
2つの案件ともに、意見の受け付け開始は5月15日(金)で、受け付け締め切りは6月13日(土)の17時15分までとなっている。関係資料は、東京都千代田区霞が関の経済産業省本館9階にある電力安全課の窓口でも配布されている。
秋田県内での事故を契機とした今回の改正は、日本の風力発電の導入拡大と安全性の両立に向けた重要な節目となる。特に冬季雷地域を抱える自治体の担当者や、今後の開発が本格化する洋上風力発電の関係事業者にとっては、今後の保守管理計画に直結する内容であり、改正案の詳細な確認と迅速な対応が求められる。
DATA
「発電用風力設備の技術基準の解釈」の一部改正案に対する意見公募
「電気事業法施行規則第94条の3第1号及び第2号に定める定期自主検査の方法の解釈」の一部改正案に対する意見公募
発電用風力設備の技術基準の解釈の別図
取材・文:ウインドジャーナル編集部









