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経産省、FIT・FIP認定55件を取り消し 交付金返還命令を初適用

経済産業省は4月6日、再エネ特措法に基づき、2025年度に認定計画違反などが確認された55件の発電事業計画のFIT・FIP認定を取り消したと発表した。前年度の13件から4倍以上に急増しており、うち5件には制度開始以来初となる交付金返還命令が出された。認定計画と実態の整合性を常に確認し、定期報告などの行政手続きを確実に履行する体制づくりが求められる。

<目次>
1.摘発急増の背景と 認定取り消しの実態
2.初の交付金返還命令と バイオマス発電の不正
3.交付金一時停止措置の拡大と 多様化する違反項目
4.FIP制度の完全義務化と 優先給電ルールの改定
5.事業の適法性を維持し、収益を確保する方策とは

摘発急増の背景と
認定取り消しの実態

資源エネルギー庁が公表した再エネ特措法に基づく処分実績は、2024年度のFIT・FIP認定取り消し件数が13件であったのに対し、2025年度は55件と、わずか1年で約4倍にまで膨れ上がった。この急増の背景には、通称「再エネGメン」と呼ばれる経済産業省の現地調査による監視体制の強化がある。

FIT・FIP認定を取り消された案件の内訳を見ると、悪質性が際立つ事例が散見される。例えば、43件もの大量取り消しを受けた秋田県八峰町の太陽光発電事業は、認定計画上の設置場所以外に発電設備を設置していたことが判明している。また、ドラッグストアの自家消費型太陽光発電事業による5件の案件では、文書を偽造して提出するという重大なコンプライアンス違反が露呈した。

 

 

初の交付金返還命令と
バイオマス発電の不正

今回の発表において最も注目すべき点は、再エネ特措法に基づく「FIT・FIP交付金返還命令」が初めて適用されたことである。対象となった5件のうち、4件をバイオマス発電所が占めている。4件の取り消し理由は、いずれも「非バイオマス燃料の使用」であった。FIT/FIP制度において、バイオマス発電は使用する燃料の種類によって買い取り価格や交付金額が設定されているが、安価な非適合燃料を混焼させて不当に利益を得る行為は、制度の根幹を揺るがす背信行為とみなされた形だ。

太陽光発電においても、福島県会津若松市の発電所が、認定計画上の送電線路を敷設せずに移設規制を潜脱したとして、返還命令の対象となった。これまで「認定取り消し」はあっても、過去に遡って交付金の返還を求める措置は異例であり、不正に対する経済的ペナルティが実効性を持つ段階に入ったことを示している。

交付金一時停止措置の拡大と
多様化する違反項目

認定取り消しに至らないまでも、FIT・FIP交付金の一時停止措置を受けた事業計画も57件に上った。その理由は多岐にわたり、再エネ特措法だけでなく、関連する他法令の遵守も厳しく問われている。

内訳を確認すると、最も多いのは再エネ特措法に基づく定期報告の未履行であり、特に悪質性が認められる案件が29件確認されている。これに続き、森林法違反が10件、農地法違反が4件、電気事業法違反が1件となっており、さらに現地調査などで発覚した不適切案件のうち改善が見られない13件も停止措置の対象となった。

これは、発電事業者が単にエネルギー関連の法律を守るだけでなく、土地利用や環境保全、安全管理といった広範な法的責任を負っていることを再認識させる結果である。特に森林法や農地法に関する違反は、地域住民とのトラブルに直結しやすく、事業の継続性に致命的な影響を及ぼすリスクをはらんでいる。

FIP制度の完全義務化と
優先給電ルールの改定


2026年度から50kW以上の案件はFIPへの完全義務化を実施

処分実績の厳格化と並行して、2026年度からは制度運用のルールも劇的な変化を遂げる。導入から4年が経過したFIP制度は、いま最大の転換期にある。2026年度からは、50kW以上の案件についてFIPへの完全義務化が実施される。これは、これまでFIT制度の恩恵を受けてきた中規模以上の発電事業者が、市場連動型の価格体系への適応を余儀なくされることを意味する。さらに、地上設置型支援の原則廃止や、優先給電ルールの抜本的な改定も予定されている。

優先給電ルールの改定は、出力制御の頻度が増加する中での収益性に直結する課題である。市場価格を意識した発電管理や、ネガワット取引の活用、あるいは非化石価値の最大化といった高度な運用能力が、全ての事業者に求められることになる。これまでの「設置して放置する」モデルでは、適法性を維持することすら危うい状況に陥っている。

事業の適法性を維持し、
収益を確保する方策とは

このような厳しい規律が求められる現状において、事業者が取るべき道は明確である。第一に、コンプライアンス体制の抜本的な再構築だ。今回露呈した文書偽造や設置場所の相違といった問題は、現場任せの管理体制や、委託先へのガバナンス欠如から生じている。認定計画と実態の整合性を常に確認し、定期報告などの行政手続きを確実に履行するルーチンを確立しなければならない。

第二に、FIP制度下での収益モデルを再設計することである。固定価格に頼るのではなく、アグリゲーターとの連携を深め、インバランスリスクの低減や市場価格に合わせた供給調整を行う能力を身につける必要がある。特に蓄電池の導入は、出力制御対策としてだけでなく、市場価格が高い時間帯に放電することで収益を最大化するための必須アイテムとなりつつある。

第三に、地域社会との共生を土台とした事業運営である。森林法や農地法の違反が摘発の対象となっている通り、適切な開発許可の取得と維持、そして近隣住民との対話は、事業継続のための最低条件である。

再生可能エネルギーが主力電源として自立を目指す過程において、ルールの厳格化は避けて通れない。過去の知識や慣習に固執することなく、最新の制度変更を包括的にアップデートし、高い倫理観を持って事業に臨むことこそが、この激変期を生き残る唯一の手段である。経済産業省による今回の大量処分と初の返還命令は、すべての再エネ事業者に対する「規律ある成長」を促す強い警告と捉えるべきだろう。

 

 

DATA

経済産業省 2025年度に行った再エネ特措法に基づく処分の実績を公表します

取材・文/ウインドジャーナル編集部

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