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鹿児島県、いちき串木野市沖の経済波及効果と住民理解醸成の委託事業者を公募

鹿児島県は、いちき串木野市沖における洋上風力発電の事業化に向けて、船舶航行の安全性確保や地域経済への波及効果を検証する業務を委託する事業者を公募する。専門的な実態調査を通じて具体的な区域図を作成するとともに、フォトモンタージュや経済予測を用いて地域住民の合意形成を推進する。

<目次>
1.「準備区域」整理を受けた 安全確保と合意形成の加速
2.船舶交通の安全性検証と デジタル区域図の作成
3.フォトモンタージュと 経済予測による合意形成の深化
4.事業規模と プロポーザルの選定基準
5.鹿児島県 2026度洋上風力発電検討事業業務委託

「準備区域」整理を受けた
安全確保と合意形成の加速


鹿児島県いちき串木野市沖

鹿児島県は、カーボンニュートラルの実現と地域経済の活性化を目指し、洋上風力発電の導入を目指している。対象となる「いちき串木野市沖」は、2025年4月に再エネ海域利用法に基づく情報提供が行われ、同年10月には国の第三者委員会による審議を経て「準備区域」に整理された。

しかし、この過程で国土交通省などから区域内の船舶航行に関する安全確保を求める意見が寄せられた。今回の公募は、こうした背景を踏まえ、船舶航行の実態を精緻に調査し、地域住民が抱く景観や経済面での不安を解消するための客観的なデータを得ることを目的としている。

 

 

船舶交通の安全性検証と
デジタル区域図の作成

今回の業務の大きな柱の一つが、対象区域(約67.29平方キロメートル)およびその周辺海域における船舶交通量の詳細な調査である。委託された事業者は、観測用レーダーや目視によって、一般貨物船から漁船、プレジャーボートに至るまで、多種多様な船種・船型の航跡を48時間以上にわたり連続観測する必要がある。

さらに、得られた観測データを基に、洋上風車が設置された場合の交通流の変化を予測するシミュレーションを実施する。AIS(船舶自動識別装置)を搭載していない小型船舶の影響も考慮に入れ、安全な離隔距離の確保や航行時間の増加量などを分析し、最終的には海図と重ね合わせた詳細な区域図として成果をまとめる。これにより、既存の海上交通と発電事業が共存できる体制を整える方針だ。

フォトモンタージュと
経済予測による合意形成の深化

また、洋上風力発電の地域住民の理解醸成に資するため、洋上風車が建設された際の景観を具体的にイメージできるよう、対象区域およびその周辺海域における洋上風力発電のフォトモンタージュを10 パターン(起点)程度作成する。どのような風車がどの程度の大きさで見えるのかを具体化することで、抽象的な不安を解消する狙いがある。

また、経済面では、建設から維持管理、撤去に至る事業ライフサイクル全体の総事業費を推計し、県内全域への経済波及効果を算定する。鹿児島県内の企業や漁業関係者の参画による雇用創出効果や、地域共生基金の活用による地域振興策、さらには固定資産税などの地方自治体収入など、多角的な視点から分析を行う。これらの調査結果は、2027年1月下旬に開催予定のシンポジウムで公表され、県民への情報提供と意見交換の場として活用される。

事業規模と
プロポーザルの選定基準

業務の契約上限価格は2512万4000円(消費税及び地方消費税を含む)と設定されている。履行期限は2027年3月19日までとなっており、年度を通じて広範な調査と分析が求められる。審査においては、船舶調査や経済分析の手法の妥当性はもちろん、地域住民の理解を促進するための企画の具体性が重視される。鹿児島県は、民間企業が持つ高度な知見と経験を公募によって募ることで、事業の透明性を確保しつつ、洋上風力発電の導入に向けた確実な一歩を踏み出そうとしている。
 


鹿児島県 2026年度洋上風力発電検討事業業務委託

1. 目的
「準備区域」に整理されたいちき串木野市沖において、船舶航行の安全確保に向けた実態調査及び区域図作成を実施するとともに、景観イメージの作成や経済波及効果の算定を通じて地域住民の理解醸成を図る。
2. 業務委託期間
契約締結の日から2027年3月19日まで
3. 見積もり上限額
2512万4000円(うち消費税及び地方消費税の額 228万4000円)
 

スケジュール
• 質問受付締切:2026年5月18日(月)17:15まで
• 参加表明書類提出締切:2026年5月25日(月)17:15まで
• 企画提案書類提出締切:2026年5月下旬(予定)
• プロポーザル審査:2026年6月上旬(予定)

 

DATA

鹿児島県 2026年度洋上風力発電検討事業業務委託プロポーザルの実施について


取材・文:ウインドジャーナル編集部

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