長崎県五島市沖の浮体式洋上風車 来年1月稼働へ建設大詰め、大型量産化に対応した技術開発も
2025/07/29

長崎県五島市沖の浮体式洋上風力発電事業の建設工事が大詰めを迎えている。浮体の不具合によって工事をやり直し運転開始を延期したが、これまでに7基の風車が洋上に設置され、2026年1月の運転開始に向けて建設工事は大詰めを迎えている。
メイン画像:五島市沖浮体式洋上風力発電所完成イメージ(出典 五島フローティングウィンドファーム合同会社)
洋上風車8基のうち
7基の設置が完了
長崎県五島市沖の洋上風車
このプロジェクトは、戸田建設を代表企業としてENEOSリニューアブル・エナジー、大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力の6社が設立した「五島フローティングウィンドファーム合同会社」が実施している。出力2100kWの風車を8基設置し、総出力は1万6800kWである。
これまでに8基のうちの7基が洋上に設置された。今後は残りの1基の設置と海底ケーブル工事を進め、風車の各種試験調整を行い、2026年1月の運転開始を目指している。
浮体の不具合で
設置済み風車も再構築
ただ、このプロジェクトは最初から順調に進んできたわけではない。五島市沖洋上風力発電事業は再エネ海域利用法に基づく初めての事業として認定され、当初は24年1月の運転開始を予定していた。
五島市沖の事業では、戸田建設などが独自開発した、コンクリートを使って重心を下げ安定性を向上させたハイブリッドスパー型浮体に、日立製作所製の風車を据え付けている。戸田建設は、ほぼ同じ仕様の浮体式洋上風力発電の実証設備「はえんかぜ」を2013年に五島市椛島沖に設置し、16年には同市崎山沖へ移動して運転を継続している。
しかし23年5月、地上のヤードで製作中のハイブリッドスパー型浮体構造物2基に不具合が見つかり、その確認と原因究明および対策工法の検討を実施した。さらに当時、すでに設置済みの風車3基についても順次陸揚げして構造に問題がないか検証を行った。この結果、設置済みの3基についても不具合が確認されたため、該当部分を再構築した。これにより工事期間が長期化したため、運転開始時期を26年1月に修正した公募占用指針計画を国に申請している。
「過去に前例のないプロジェクトであるという性質上、事業を進めていく中での課題も初めて直面するものが多く、その解決策を探すのに苦労した」と担当者は打ち明ける。
8基の洋上風車は
地元の小中学生が名づけ親に
洋上風車8基の名称(出典 五島フローティングウィンドファーム合同会社)
五島フローティングウィンドファーム合同会社は今年4月、発電所と8基の風車の名称を発表した。発電所の名称は「五島洋上ウィンドファーム」。8基の風車の名称は、五島市と新上五島町の小中学生から公募して選定した。名称披露式では、風車名称を命名した小中学生に記念品のトロフィーを授与した。合同会社では「風車の名称が、ウェブサイトやイベントなどを通じて広く認知されることにより、地域振興およびカーボンニュートラル化の認知促進へ繋がることを期待している」としている。
系統用蓄電池で
出力制御を抑制
蓄電システム概念図(出典 五島フローティングウィンドファーム合同会社)
五島洋上ウィンドファームは来年1月の運転開始後、固定価格買い取り制度を利用して九州電力に売電する。しかし、九州地方では再エネの導入拡大に伴い出力制御がたびたび実施されている。
戸田建設はイー・ウィンドと共同で、五島市が実施する系統用蓄電池運用技術開発事業に応募し採択された。両社は発電予測に基づいた蓄電池の充放電制御アルゴリズムや、市場環境および制度変更に対応可能な蓄電池運用システムを今年度中に構築し、来年度から五島市内に設置する系統用蓄電池でシステムの運用を開始する。これにより出力制御を抑制し、五島ウィンドファームの電力を最大限活用していくことを目指している。
五島フローティングウィンドファーム合同会社は、洋上風車の大型化に対応した浮体の量産化に向けての技術開発を進めていく。同社は、「今後は五島市沖を含む全国の浮体式計画区域への事業参画を目指していきたい。そのためにも、より一層の国や自治体の支援および関係者との連携が重要だ」としている。
DATA
取材・文/宗 敦司