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陸上風力におけるリスクマネジメント 必要とされるO&Mと保険の姿とは

豊通インシュアランスマネジメント(TIM)は、再生可能エネルギー事業の持続可能性と成長を支える包括的なリスクソリューションを提供している。陸上風力におけるリスクマネジメントをテーマにしたセミナーを8月25日に開催した。

メイン画像:豊田通商グループ 再エネセミナー

 

<目次>
1.国内最大の事業会社の 保険手配で培ったノウハウ
2.点検・保守の重要性と これからのO&Mを議論
3.落雷の影響を 最小限に抑えるには
4.リスクを的確に定量化し 最適な保険設計を

 

国内最大の事業会社の
保険手配で培ったノウハウ


北海道豊富町 芦川ウインドファーム(写真提供 ユーラスエナジーホールディングス)

TIMは、保険会社の委託を受けることなく独立した存在である保険ブローカー(保険仲立人)である。同社の強みは、専門人材がチームとなり、リスク評価から保険手配まで一貫してサービス対応ができることだ。豊田通商グループの保険手配で培った実績とノウハウをもとに、さまざまな顧客ニーズに沿ったオーダーメイドの保険商品を設計する。今年3月時点で、建設中と操業中を合わせて6.4GW以上の再エネ案件の損害保険取り扱い実績がある。

豊田通商グループのユーラスエナジーホールディングスは、16の国・地域で事業展開し、5GWを超える風力・太陽光発電の連系容量を有する国内最大の風力・太陽光発電事業会社だ。グループ内に運転保守管理部門であるユーラステクニカルサービス(ETS)を有し、発電所の開発から建設、運転開始後の運転・保守に至るまで一貫して行う体制を構築している。

点検・保守の重要性と
これからのO&Mを議論


豊田通商グループ 再エネセミナー

8月25日のセミナーでは、ETS事業推進部長の髙木晋洋氏、東京海上ディーアール企業財産本部主席研究員の池田昌子氏、TIMプロジェクト保険部長の小峠智志氏が登壇し、「陸上風力におけるリスクマネジメント」をテーマに議論した。

陸上風力発電設備は2022年以降、水災をはじめとする大規模な自然災害の増加により多額の保険金が支払われるケースが増えている。それにより保険料の水準を表す保険料率は、約3年前に比べると1.5〜2.0倍の水準に達するなど、損害保険各社はリスク情報を注視するとともに、引き受け能力(キャパシティ)に合った引き受けを行う姿勢を強めている。

小峠 本日は、ここ数年、事故が多く発生しているブレードの安全対策を中心に、これからのO&Mについて議論していきたいと思っています。このセミナーを通じてO&Mの重要性をご理解いただき、これらが保険にもつながること、保険引き受け環境が以前よりもハード化しているなかにおいてはリスクをしっかり定量化して必要なカバーを入手することが肝要であるということを発信したいと考えています。

髙木 弊社は、北海道から鹿児島まで全国にある風力発電所38ヶ所、約460基の運転・保守管理を実施しています。全国に15ヶ所ある事業所に社員が常駐し、運転・保守管理担当として日々安定した電力供給を目指し業務を行っています。さらに24時間集中監視センターやデータ分析の専門部署を本社に設置して管理体制を強化し、いつトラブルが発生しても迅速に対処する体制を整備しています。今年2月からは、陸上風力発電所のO&M代行サービスを開始しました。維持管理のほかにリアルタイムの監視、部品の調達代行などを請け負っています。
 


 

落雷の影響を
最小限に抑えるには

小峠 日本国内では、風車への落雷が事故原因の多くを占めています。いまのテクノロジーでは落雷の影響は避けられないというのが自分の認識ですが、大きな事故にならないようにするためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

髙木 レセプタ(避雷装置)以外のところに雷が当たると、事故につながりやすいと考えています。雷がレセプタに当たるよう捕捉率を高めることが、被害を最小限に抑えることにつながります。また、落雷による被害リスクを抑えるため、雷雲が近づいてきたときに風車を停止させることが効果的な対策だと思います。弊社では、ブレードの状態を適切に把握することや、適切に記録を残すことを目的として、昨年度からすべての風車を対象にドローンを活用した点検を行っています。また、ブレードの不具合兆候をいち早く把握することを目的として、ブレードCMSの試験運用も実施しています。

池田 風力発電事業のリスクマネジメントを進めるにあたっては、起こり得るリスクを網羅的に洗い出したうえで、リスクの頻度や影響度に応じて対応策をとることが重要となります。代表的な対応手法が、「O&Mに代表されるリスクコントロール」と「保険に代表されるリスクファイナンス」です。適切な点検・保守を行うことで、事業全体のリスク量を下げつつ、頻度は低いものの影響度が大きい自然災害のようなリスクを保険ヘッジすることにより、事業者が保有するリスクが軽減されることになります。O&Mの質は、事故の頻度や損失に大きく影響を与えていると考えていますが、その効果を定量的に示すのは難しく、非常にもどかしく思っています。

小峠 風車ごとに個別に注意すべきこと、発生しやすい事故が存在します。将来的にはそうした情報を体系的に整理して、事故が発生する前に注意点や対策を事業者間で共有・サポートできるような役割を担うことができたらいいなと思っています。
 


 

リスクを的確に定量化し
最適な保険設計を

セミナーでは、TIMリスクソリューション部長の篠田昇二氏がリスクの定量化について解説した。篠田氏は、「風力発電の保険設計を進めるうえで、重要なポイントが『最大リスクの特定とそのリスクの定量化』です。保険業界において最大リスクの定量化とは、最大損害が発生した際の予想損害額、つまり保険会社が支払う保険金を予測するために発展した手法です。現在価値で現状復旧することを前提に、リスク量を評価します。保険ブローカーは、ステークホルダーの納得が得られるように、リスクを的確に算定することが求められます。そこで得られた最大リスク量をもとに、支払い限度額や免責金額を設定し、最適な保険設計の実現を目指します。物理的なリスク量の低減対策実施要否についてその費用対効果の検証を行います」と説明した。

最後に登壇したTIMの上野弘社長は、「本日は400人以上のみなさまに参加お申し込みをいただき、ありがとうございました。当社は、再エネ事業においては業界のプラクティスやプロジェクトファイナンス案件に精通した、経験豊富なリスクコンサルタントをそろえております。今後も再エネ取り扱い国内ナンバーワンブローカーを目指して、保険仲介を単純に行うだけでなく、業界の特性や顧客をしっかり理解しプラスアルファの機能や役割をもって顧客に役立ち、顧客から信頼される保険仲立人でありたいと考えています」と決意を述べた。

 


 

PROFILE

豊通インシュアランスマネジメント
代表取締役社長

上野 弘氏


東京海上ディーアール
企業財産本部リスクソリューションユニット
主席研究員

池田昌子氏


ユーラステクニカルサービス
事業推進部長

髙木晋洋氏


豊通インシュアランスマネジメント
プロジェクト保険部長

小峠智志氏

問い合わせ


豊通インシュアランスマネジメント株式会社
プロジェクト保険部 再生可能エネルギーグループ(東京)
東京都港区港南二丁目3番13号 品川フロントビル11階
TEL:03-4306-8245



株式会社ユーラスエナジーホールディングス
東京都千代田区大手町一丁目5番1号 
大手町ファーストスクエアウエストタワー
TEL:03-5404-5300


WIND JOURNAL vol.9(2025年秋号)より転載

Sponsored by 豊通インシュアランスマネジメント株式会社

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