【トップインタビュー】FLOWRA 欧州の浮体式先進国と連携して世界標準の技術開発を目指す
2025/10/30
浮体式洋上風力技術研究組合は10月28日、第2回国際フォーラムを都内で開き、欧州の浮体式先進国と連携して、世界標準の量産化技術の確立と低コスト化の実現を目指す考えを強調した。寺﨑正勝理事長と髙清彦事務局長に今後の展望について話を聞いた。
メイン画像:右からFLOWRA 寺﨑正勝理事長、髙 清彦事務局長
2030年度までに
浮体式技術の実用化を目指す

FLOWRA 寺﨑正勝理事長
政府は2040年までに1500万kWの浮体式洋上風力発電の案件組成を目指している。今年6月には、再生可能エネルギー海域利用法を改正し、設置海域を現行の領海内(沿岸から約22.2km)から、さらに遠方のEEZ(沿岸から200カイリ=約370km)まで拡大している。
浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)は浮体式洋上風力発電設備の基盤などを低コストで量産できる技術の開発を目指している。2024年3月に大手商社や発電事業者などが設立し、現在は21社が参画する。FLOWRAは30年度をめどに技術の実用化を目指している。これまでに製造会社や施工会社など、国内の76社と技術を検討する体制を構築した。
スコットランドの
実験施設と覚書を締結

2017年にスコットランド沖で稼働した浮体式洋上風力発電所「Hywind Scotland」
今年9月にはスコットランドにある実験施設「欧州海洋エネルギーセンター」(EMEC)と、浮体式の技術開発に向けた覚書を締結した。EMECには潮の流れを利用した潮力発電の実験施設があり、実際の海域でさまざまな試験装置を使える環境を備えている。浮体式洋上風力発電設備の技術開発に向けても、実際の海域で試験できる環境の整備を進めている。
ー EMECとの連携の目的は
寺﨑理事長 EMECは、海洋エネルギーの技術開発を推進する基盤を築いた研究機関です。浮体式の技術開発を進めるうえで、今後はFLOWRAとしても実際の海域で試験をしていかなければなりません。欧州で実証をするわけにいきませんので、願わくは日本の海で同じような取り組みをしたいと考えて、EMECとの連携を進めることにいたしました。国に対しては、日本の海に常設の実証施設を設置していただくように要望しております。実際の海域に浮体式の実証施設を設置して、確実性や機能、新たな課題を洗い出していけたらと考えています。
EMEC(European Marine Energy Center)は英国政府、スコットランド自治政府、EUなどが出資する民間研究機関で、2003年に設立された。潮流発電の実証サイトがあるオークニー諸島はスコットランド北東沖にある。オークニー諸島のエディ島は遠浅の砂浜が広がり、洋上風力発電の適地だ。
ー EMECから学ぶべきことは
寺﨑理事長 EMECは実証サイトであることだけにとどまらず、オークニー諸島において地域振興の拠点になっています。地元の漁業者が中心となって、設備工事会社を設立して、実証サイトの建設などに関わり、雇用の場を創出しています。また、メーカーや研究機関の関係者が長期間滞在するようになり、大学の出先機関も開設されました。日本国内にもこのような常設の浮体式実証施設をつくって、地域の活性化に貢献できたらと考えています。
5つの作業部会で
課題解決に取り組む

FLOWRA 髙 清彦事務局長
FLOWRAでは浮体式洋上風力発電の共通基盤として「浮体システムの最適な設計基準・規格化などの開発」、「浮体システムの大量、高速生産などの技術開発」、「大水深における係留・アンカー施工などの技術開発」、「大水深に対応する送電技術の開発」、「遠洋における風況観測手法などの開発」の5つのテーマを設定し、それぞれのテクニカルワーキンググループを設置して、研究開発を進めている。このほか、開発した技術・システムの標準化にも取り組んでいる。
ー 研究開発をどのように進めていきますか
髙事務局長 FLOWRAは、「浮体式洋上風力の商用化」が最大のミッションです。5つのワーキンググループで共通のガイドラインを設けて課題の解決に取り組むとともに、技術戦略会議を定期的に開催して、有識者の意見を聞きながら、日本の浮体式洋上風力発電の商用化に向けてのベースがそろうように確実に研究開発を進めていきます。国際連携については、10月から欧州の国々との本格的な議論を開始し、大事な一歩を踏み出すことができたと感じています。
FLOWRAは10月28日、第2回国際フォーラムを都内で開き、英国・デンマーク・ノルウェー・オランダ・フランスの浮体式先進国と連携して、世界標準の量産化技術の確立と低コスト化の実現を目指す考えを強調した。
ー 世界標準をどのように目指していきますか
髙事務局長 世界標準の技術開発に向けて、海外の認証機関であるDNV(ノルウェー船級協会)やABS(アメリカ船級協会)と協力覚書を締結しました。これで世界標準を目指す枠組みができましたので、これからは日本の強みを生かして結果を出していく段階に入ったと考えています。加盟する21社の意見を集約しながら、課題の解決に取り組んでいきます。国際連携については、10月末から欧州の国々との本格的な議論を開始し、大事な一歩を踏み出すことができたと感じています。

FLOWRA 寺﨑正勝理事長
寺﨑理事長 今年8月に第2次洋上風力産業ビジョンとして浮体式洋上風力などに関する新たな産業戦略が公表されました。そのなかで、40年までに浮体式洋上風力で、原発15基分にあたる15GW以上の案件形成を図るとともに、29年度をめどに大規模浮体式洋上風力発電の案件形成を目指す方針が明確に打ち出されました。今後は新たな目標に向かって、国と連携して研究開発に取り組んでいきたいと考えています。
FLOWRAの組合企業(2025年10月30日現在)
・INPEX・中部電力・NTTアノードエナジー
・東京ガス・ENEOSリニューアブルエナジー
・電源開発・大阪ガス
・東京電力リニューアブルパワー
・関西電力・東北電力・九電みらいエナジー
・北陸電力・コスモエコパワー・北海道電力
・四国電力・丸紅洋上風力開発・JERA
・三菱商事洋上風力・中国電力
・ユーラスエナジーホールディングス
・東邦ガス
DATA
取材・文/ウインドジャーナル編集部
2026年1月16日(金)に開催する「第5回WINDビジネスフォーラム」では、福岡県北九州市洋上風力拠点化推進課の白井伸弥課長が、2025年春に運転開始を予定している北九州市響灘の洋上風力発電事業の将来展望や、浮体式洋上風力発電の総合拠点整備について講演します。

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