【洋上風力】事業環境整備の見直し案を公表 第2・第3ラウンド事業者に長期脱炭素電源オークションへの参加容認
2025/11/20
洋上風力発電を完遂させるための事業環境整備の見直し案が11月19日、国の合同会議で公表された。第2・第3ラウンド事業者のみを対象に長期脱炭素電源オークションへの参加や公募占用計画の変更などを認める内容で、委員から特に異論は出されず了承された。
メイン画像:洋上風力第2ラウンド「新潟県村上市・胎内市沖」
1.事業環境整備の 見直し案を公表
2.供給価格を 0円/kWhに変更が条件
3.価格調整スキーム 将来の物価変動のみを反映
4.運転開始時期に 2年間の予備期間
5.長期脱炭素電源オークションへの参加 幅広く慎重に議論を
事業環境整備の
見直し案を公表
政府は、公募制度の見直しを含む事業環境整備について年内をめどに一定の整理をつける意向を明らかにしている。11月19日の会議では、国側から事業環境整備と新たな公募制度の見直し案が公表された。

電源投資の課題(出典 経済産業省)
事業環境整備の見直し案は、(1)第2・第3ラウンド事業者のみを対象に「長期脱炭素電源オークションへの参加」、「価格調整スキームの公募開始時点までの遡及適用」、「公募占用計画変更に係る柔軟な対応」、(2)基地港湾の柔軟な利用を促進する仕組みの構築、(3)一定要件下における海域占用許可の更新の原則化、(4)再エネ価値が適切に評価されるための環境整備、(5)脱炭素電源に係る投資を促進するための支援を認める内容だ。
供給価格を
0円/kWhに変更が条件

長期脱炭素電源オークションを活用するイメージ(出典 経済産業省)
このうち、長期脱炭素電源オークションへの参加については、第2・第3ラウンド事業者のみを対象として、プレミアム発生の可能性を完全に排除するため、公募占用計画における供給価格を0円/kWhに変更することを要することとする。また、事業者選定時の公募占用計画における供給価格がゼロプレミアム水準でなかった事業が、事後的に当該変更を行った場合も含むこととする。
次回以降の公募の予見性の観点から、今回の措置は黎明期にある第2・第3ラウンド事業のみに適用することとし、次回以降の公募においては長期脱炭素電源オークションへの参加は想定しないこととする。長期脱炭素電源オークションへの参加については、関係審議会で議論されることが望ましいとしている。
価格調整スキーム
将来の物価変動のみを反映

洋上風力第2ラウンド「秋田県八峰町・能代市沖」
価格調整スキームの公募開始時点までの遡及適用については、事業者選定済みの案件を対象に、保証金の増額を含む新たな制度を受け入れる場合には、価格調整スキームを適用することとする。公募の公平性や国民負担への中立性を確保する観点から、当該措置適用後の将来の物価変動のみを基準価格/調達価格に反映することとした。
公募占用計画の変更に係る柔軟な対応については、事業の継続のためにやむを得ない場合には、長期脱炭素電源オークションの活用や風車メーカーなどの変更を容認する。また、これらに伴う資金収支計画の変更やスケジュールの遅れなどにより審査および評価の結果が下がる方向での変更を含め公募占用計画の変更を柔軟に認める。ただし、公募の公平性に与える影響の大きさには留意し、計画変更の認定の判断に当たっては、必要に応じて学識経験者又は第三者委員会の意見を聴取することとする。
運転開始時期に
2年間の予備期間
また、風車メーカーやサプライヤーとの価格交渉力を確保させる観点から、スケジュールが年単位で遅延する計画変更も可能な柔軟性を確保した計画とするため、通常の工程で想定される運転開始時期に「2年間の予備期間」を設ける案も示された。
基地港湾については、事業者・業界団体の要望などを踏まえ、事業者負担の軽減や施工の効率化などの観点から、基地港湾の柔軟な利用を促進する仕組みの構築に向けて検討を進める。
一定要件下における海域占用許可の更新の原則化については、事業者選定済みの案件を含めて選定事業者による占用が占用許可審査基準に適合していることの全てに該当する場合、当該占用許可の更新が認められることを原則とする。認定公募占用計画の有効認定期間が終了した後、選定事業者が占用許可を更新し、事業を継続する場合、許可が認められる占用期間は最大10年となる。
長期脱炭素電源オークションへの参加
幅広く慎重に議論を
出席した委員からは、「長期脱炭素電源オークションへの参加については、幅広く慎重に議論してほしい」、「やむを得ない理由があるときに計画変更を認めるとしても、できるだけ早期の運転開始を目指してほしい」、「撤退に伴い没収した保証金を、地域振興に活用する仕組みを検討してほしい」などの意見や要望が出された。委員から特に異論は出されず、事業環境整備と新たな公募制度の見直し案が了承された。
洋上⾵⼒促進⼩委員会の委員⻑で東京⼤学⼤学院⼯学系研究科教授の加藤浩徳氏は、「ゼロプレミアム案件に限ると言いつつも、長期脱炭素電源オークションへの参加を認めることはこれまでの方針の大転換で、あくまでも第1ラウンドの状況を踏まえた例外的な措置であると理解しています。これにより国民負担が増加するということを真摯に受け止める必要があって、関係するみなさんやほかの審議会で慎重に議論していただき、広く国民から理解をいただく必要があると考えています。柔軟な計画変更を認める点については、事業の実施が遅くなりすぎるのは問題だという意見もあり、エネルギー政策目標を達成するため、関係者の努力に期待したいと思います」と述べた。国は今後、業界団体などから意見を聞いたうえで、年内をめどに一定の整理をつける方針だ。
DATA
交通政策審議会港湾分科会環境部会洋上風力促進小委員会 合同会議(第39回)
取材・文/ウインドジャーナル編集部
2026年1月16日(金)に開催する「第5回WINDビジネスフォーラム」では、日本風力エネルギー学会 会長で、足利大学総合研究センター特任教授の永尾 徹氏が「日本の風力産業の活性化、国産風車の再興を目指して」をテーマに、風力発電産業の再構築の必要性を訴えます。

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