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【東洋紡エムシー】洋上風力のコスト低減に貢献する高機能繊維「イザナス」、浮体係留索向けに耐久性能を向上

東洋紡エムシーは、超高強力ポリエチレン繊維の耐久性を向上させた、高強度・高剛性・軽量の新製品「イザナスULC」を開発した。極めて伸びにくい国内製造の浮体係留索素材として、洋上風力発電事業のコスト低減とエネルギー安全保障に貢献する。

メイン画像:大林組が青森県沖で実施したTLP型浮体の設置試験の様子。係留ロープに「イザナスULC」、吊り具に「イザナス」が採用された(上、画像提供:大林組)

 

<目次>
1.大水深の海域で施工・運搬コストを低減
2.TLP型浮体を実海域に設置する国内初の実証実験で採用
3.福井県の自社工場で製造 エネルギー安全保障に貢献

 

大水深の海域で
施工・運搬コストを低減

超高強力ポリエチレン繊維製のロープは、洋上風力発電の浮体係留索の有力な選択肢として注目されている。一方で、長期にわたって荷重がかかり続けることで、繊維が徐々に伸びてしまう「クリープ性」が、係留索素材としての課題とされてきた。浮体式洋上風力発電は、一般的な船舶係留のような短期使用とは異なり、20年から30年にわたる事業期間を通じて、過酷な潮流下でも洋上風車を安定的にとどめておかなければならない。そのため、係留索の素材にはクリープ性の改善が不可欠だと考えられてきた。

東洋紡エムシーの既存の超高強力ポリエチレン繊維「イザナス」は、ゲル紡糸法と呼ばれる特殊な製法を用いることで、有機繊維として最高レベルの高強度・高剛性を実現したスーパー繊維だ。その軽さ、細さを生かして、釣り糸や防球ネット、大型船舶の係留ロープなど幅広い用途に採用されている。

しかし、前述の通り長期間荷重がかかる環境には弱いという課題があり、その課題解決を目指して開発したのが「イザナスULC」だ。「10年ほど前、浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)の係留索用途を念頭に、『イザナスULC』の開発を始めました。超高分子量ポリエチレンを使う点は既存の『イザナス』と同じですが、原料組成や製造工程を大幅に見直すことで、クリープ性を低下させることに成功しました。軽量、超高強度、高剛性かつ極めて伸びにくいという特長が、洋上風力発電の浮体係留索の素材として高く評価をいただいております」と森重地加男社長は胸を張る。例えば、同じ使用荷重での比較では、「イザナスULC」製のロープは、ポリエステル製ロープより2割程度細く、重量も約5割軽量化できる。

「『イザナスULC』は高強度・高剛性で軽量という強みを発揮して、浮体係留索全体のコスト低減に貢献します。浮体式洋上風力発電は、大水深の海域への設置が想定され、海底と浮体をつなぐ係留索は相当な長さになります。『イザナスULC』は、従来の鋼製チェーンや合成繊維製ロープに比べて直径を細くでき、運搬や保管の負担を軽減できます。また、比重が1.0以下で水に浮くため水域保管が容易になり、施工効率の向上にもつながります」と森重氏は語る。

 


「イザナスULC」の原糸(画像提供:東洋紡エムシー)

 


東洋紡エムシーによる推定値。「イザナス」製ロープ、ポリエステル製ロープ、鋼製チェーンを、同じ破断荷重約1000トンで比較すると、「イザナス」製ロープが最も軽量かつ細い(画像提供:東洋紡エムシー)
「イザナス」は東洋紡エムシーの登録商標です。

 


 

TLP型浮体を実海域に設置する
国内初の実証実験で採用

「イザナスULC」は2024年、大林組が青森県沖で実施したTLP型浮体の設置実験で係留索として採用された。周辺海域への影響が少ないTLP型浮体を、洋上風力発電用として日本国内で初めて実海域に設置したこの実証実験では、東京製綱繊維ロープが「イザナスULC」を用いた合成繊維係留索を製造した。この取り組みを通じて東洋紡エムシーは、浮体式洋上風車向けロープ用原糸として、初めて日本海事協会の型式認証を取得している。「国内初の認証取得は、『イザナスULC』を用いた浮体係留索の商用化に向けた重要なマイルストーンと考えています」(森重氏)。

さらに、東洋紡エムシーは、海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所と連携し、「イザナスULC」を用いたロープの人工海水中における疲労強度評価にも取り組んでいる。こうした検証を通じて、異素材と組み合わせたハイブリッド式係留や、セミサブ型浮体に用いられるカテナリー係留にも「イザナスULC」が適用可能であることが確認されている。

国内初!
TLP型浮体の実海域での実証実験に参画



浮体は青森県沖3kmの海域に設置され、実際の波浪条件における浮体の動揺安定性や係留索の緊張力の変化などが検証された。(画像提供:大林組)

 


 

福井県の自社工場で製造
エネルギー安全保障に貢献

既存製品の「イザナス」も、すでに洋上風力発電のさまざまな現場で活用の実績がある。2023年に商業運転を開始した富山県入善町沖の洋上風力発電所では、モノパイルなどの大型部材の運搬時に使用される吊り具(ラウンドスリング)に「イザナス」が採用された。軽量かつ高強度であるため取り扱いがしやすく、現場の作業性の改善につながったという。

「政府は、第2次洋上風力産業ビジョンで、2040年までに国内調達率を65%に引き上げる目標を掲げています。『イザナス』『イザナスULC』はいずれも福井県敦賀市の自社工場で開発・製造していることから、当社も国内サプライチェーンの一翼を担い、温室効果ガス削減やエネルギー安全保障に貢献したいと考えています。さまざまな分野で活用の可能性がある素材ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください」と森重氏は力強く話している。

大型設備の運搬・施工時の
工事用部材としても活躍


「イザナス」は、洋上風力発電のモノパイルなどの大型設備を運搬・施工する際の吊り具として、作業の効率化に役立っている。(シライスリング®使用例。画像提供:東レインターナショナル)

 

プロフィール

代表取締役 社長執行役員 CEO

森重 地加男氏

 


 

問い合わせ


東洋紡エムシー株式会社
〒530-0001
大阪府大阪市北区梅田一丁目13番1号 
大阪梅田ツインタワーズ・サウス
TEL:06-6348-3445(イザナス営業グループ直通)
MAIL:izanas@toyobo-mc.jp

WIND EXPO【春】 に出展!
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取材・文/山下幸恵(office SOTO)

WIND JOURNAL vol.10(2026年春号)より転載

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