DENZAIグループ、2500トンクレーンを導入 巨大化する洋上風車に対応
2024/07/02
DENZAIグループは今年4月、ドイツ製でつり上げ能力が2500トンのクレーンを導入した。中国を除く東アジアでは最大規模の移動式クレーンで、日本国内はもちろん、韓国、台湾などにおける浮体式洋上風力発電プロジェクトへの参入を目指す。
(メイン画像 2500トン吊りクローラークレーン 写真提供:DENZAIグループ)
北海道室蘭市で創業
海外事業を拡大
2500トン吊りクローラークレーン(写真提供 Liebherr Japan)
DENZAIグループは、1972年に北海道室蘭市で創業した重量物輸送や重機建設の会社グループ。バングラデシュを皮切りに台湾、デンマーク、韓国、ベトナムなどに現地法人を次々に設立。海外はシンガポールに本社があり、2020年には韓国のソウルに海外プロジェクト管理事務所を設立し、いまでは世界15ヶ国で事業を展開している。
DENZAIグループが今年4月に導入したのは、独Liebherr製の2500トン吊りクローラー(移動式)クレーン「LR12500-1.0」。アジア太平洋地域で最初に導入される最新型のクローラークレーンだ。作業半径は48mで、重さは951トンまで吊り上げられる。ここ数年、世界の洋上風力発電事業は、風車の巨大化が進んでいる。「LR12500-1.0」は、1台で第1ラウンド、第2ラウンドで設置される洋上風車の高さや重さの要件を満たすという。
DENZAI株式会社の上村浩貴社長
DENZAI株式会社 代表取締役社長CEOの上村浩貴氏に、2500トンのクレーンを導入した目的や今後の事業展開などについて聞いた。
――2500トンクレーンを導入した目的は
日本のクレーン専業の会社として、次世代の大型風力発電機に対応できる機械を導入して、安定的にかつ効率的にプロジェクトが遂行されるようにサポートしたいという思いで導入しました。
――今後は、どのような事業展開を考えていますか
洋上風力発電の分野では、日本、台湾、韓国の3つの市場でキープレイヤーになりたいと思っています。特に大型風力発電機や基礎構造体の輸送・組み立て作業において、マーケットの大きなシェアをとりたいと考えています。
将来的には、ベトナムやフィリピンを加えた5つの市場をメインターゲットにできたらと思っています。2500トンのクレーンを導入してから、海外からの問い合わせが増えているので、大型案件の受注につなげていきたいと考えています。
――巨大化が進む洋上風車にどのように対応していきますか
2030年頃には18MWや20MW規模の超大型風車の開発が見込まれることから、それに向けて5000トンクラスの固定式クレーンを導入することを決めています。
導入する時期については2028年頃を見込んでいますが、マーケットの動向をみながらクレーンのスペックや正式な導入時期を決めていきたいと考えています。
WFOアジア洋上風力サミット2024に登壇した上村浩貴社長(写真提供 WFO)
――室蘭洋上風力関連事業推進協議会の理事長として、室蘭エリアの活性化をどのように進めていきたいですか
製鉄所や製油所、製鋼所、造船産業が室蘭になかったら、わたしたちDENZAIグループも存在していなかったと思います。今後も地元の企業や自治体と協力して、常に新しい産業を室蘭に呼ぶ込み、根付かせていく活動を続けていく必要があると考えています。次世代に新しい産業の種を残すため、今後も関係者と一緒に連携して取り組んでいきたいと思っています。
秋田県八峰町、能代市沖で
室蘭港が拠点港のひとつに
天然の良港として知られる室蘭港(北海道室蘭市)
洋上風力第2ラウンド「秋田県八峰町、能代市沖」の事業で、室蘭港が建設期間の拠点港として活用されることになった。MOPA(室蘭洋上風力関連事業推進協議会)の理事長をつとめる上村氏は「これまで室蘭市や地元企業のみなさんと勉強会を重ねながら、室蘭港のポテンシャルの高さを各方面にアピールしてきました。ラウンド事業の建設の拠点港として正式に決まったことは、たいへん喜ばしいと思っています。これにとどまらず、今後事業化が期待される北海道沖のラウンド事業においても、室蘭港が建設において中心的な役割を果たし、地元に新たな産業が根付いていく大きなきっかけになればと考えています」と期待を寄せる。
今後の浮体式洋上発電事業に向けて上村氏は、洋上風力向けに活用できる港湾用地の拡張ができないか、室蘭市や関係者に働きかけるなどしていく必要があると表情を引き締めた。
DENZAI株式会社の上村浩貴社長
洋上風力発電は
地方の企業に大きなチャンス
DENZAIグループは、地方都市の室蘭市で誕生し、グローバルなエンジニアリング企業に成長した。いまでは、海外への進出を目指す地方の企業のモデルのような存在になっている。これについて、上村氏は「お客さまに対して、良いサービスを競争力のある価格で提供できれば、海外から見積もり依頼が次々に届いて、台湾や韓国で事業が一気に拡がっていったという経験があります。海外への進出を目指す地方の企業にとって、洋上風力発電事業は大きなチャンスです。地方の中小企業のみなさんにとって海外展開をするのは敷居が高いと思われがちですが、ほかの産業に比べて参入がしやすい分野ではないかと考えています」と述べ、風力発電業界への参入を目指す地方の企業にエールを送る。
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取材・文/ウインドジャーナル編集部