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バイデン政権がウクライナ危機で見直す、エネルギー安全保障とは?

ロシアのウクライナ侵攻の影響で、エネルギー安全保障が見直されるようになった。クリーンで信頼性の高いエネルギーを増加させ、エネルギー自立を強化するために、太陽光発電の国内製造へ政府支援措置が大きく求められている。

メイン画像:ウクライナに対するロシアの挑発的かつ不当な攻撃に関してバイデン大統領が制裁措置を発表、出典:White House

国産再エネの政策強化を
太陽光発電業界が国に要望

バイデン政権は、今年3月8日に、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの制裁措置としてロシア産の原油や天然ガスなどの全面輸入禁止を発表した。ロシアの原油と石油製品への依存度は約8%と他の国に比べると低いものの、紛争の影響は米国の交通部門のみではなく、電力部門にも波及しており、エネルギー政策を見直すきっかけとなった。

そんな中、「輸入エネルギーへの依存度を低め、国内のエネルギー生産を高めよう」という国内のエネルギー安全保障を求める声が上がり出した。太陽光発電を含めた再生可能エネルギーと貯蔵技術の開発・導入を奨励し、国内製造に投資することで、クリーンで信頼性の高いエネルギーを増加させ、多様化したエネルギー源で、エネルギーの自立を強化するというものだ。

ウクライナ危機を受けて、米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)は、連邦議会に太陽光発電への支援措置の拡大を呼びかけている。3月30日には、100を超えるクリーンエネルギー製造業者と生産者が、バイデン大統領とその他の議員に、連邦財政調整法における長期の「クリーンエネルギー税制優遇措置」に対する強力な支持を表明する請願書を送った。「太陽光製造法」とも呼ばれるクリーンエネルギー税制優遇措置は、生産税控除で、再エネ電源の発電量1kW時当たり定額が税額控除される政府政策措置である。

SEIAの社長兼最高経営責任者(CEO)であるアビゲイル・ロスホッパー氏は、「議会で検討されているクリーンエネルギーの導入と国内製造強化の支援措置は、エネルギー安全保障の問題を解決するための設計図であり、国内の製造と生産の歴史的な成長を促進するでしょう。 製造業者は、設備投資を行うために政策の確実性を必要としています」と、請願書で述べた。

この請願書に署名したクリーンエネルギー製造業者には、カドミウムテルル(CdTe)太陽電池 を生産し、薄膜パネルの製造・販売で世界トップのメーカーである「ファースト・ソーラー」、世界最高の変換効率を誇ったバックコンタクト方式(IBC) の結晶シリコン型太陽電池セル・パネルを開発した「サンパワー」の製造事業を引き継いだ「マキシオン・ソーラー・テクノロジー」、分散型市場用のマイクロインバーターの「エンフェイズ」、地上用追尾式架台の「ネクストラッカー」、そしてポリシリコンの「ヘムロック・セミコンダクター」など、主要な米国の太陽光発電関連メーカーが含まれていた。

2030年までに国内生産
50GW達成には政策の後押しが必須


米国のリーディング太陽光パネルメーカーである「ファースト・ソーラー」は、オハイオ州で3番目の太陽光パネル工場を建設すると2021年6月に発表した。2023年前期に稼働開始予定で、生産能力は3.3GWとなっている。出典:First Solar

2021年夏、SEIAは、2030年までに年間50GWの国内太陽光パネル生産能力を達成しようという目標を設定した。SEIAの最新のデータによると、今年3月時点で米国の太陽光発電製造部門は年間7.7GWの太陽光パネルを生産する容量を持っている。2021年に米国で導入された新規太陽光発電は23GW。つまり、国内供給は国内需要の約3分の1となっている。クリーンエネルギー製造の支援措置を議会で可決することで、輸入にかかるパネル・原材料の輸送コストと関税などの輸入コストを劇的に削減でき、太陽光発電業界が米国製の製品で需要を満たすことができるようになるということだ。

さらに、SEIAは、米国内の太陽光発電の普及において重要な政策の一つである投資税額控除(ITC)の延長も呼びかけている。ITCは、太陽光発電設備を含む、再生可能エネルギーの設備投資に適用される。太陽光発電設備の購入者であるホームオーナー、ビジネスオーナー、さらに発電事業者が、設備導入にかかった投資額の一定割合を税金の支払いから控除できる制度だ。つまり、この優遇措置で、納税義務者が支払うべき税金を削減することができる。2022年現在の税額控除率は、住宅、非住宅用共に26%であるが、2023年には22%に下がる。その後は、非住宅用に関しては2006年以降と同じ10%に戻り、住宅用に関しては税額控除の優遇措置は終わりを迎えることになる。

米国太陽光発電市場のリサーチ・コンサルティング会社であるSPVマーケットリサーチの創立者・チーフマーケットリサーチアナリストであるポーラ・ミンツ氏に、ウクライナ危機が米国のエネルギー政策へ与える影響を尋ねると、次のように語った。「脱炭素化政策を強化しているバイデン大統領が、『ビルドバックベター(バイデン政権による気候変動・社会保障関連歳出法案)』と『クリーンエネルギー税制優遇措置』の可決に影響を与えることを期待しています。しかし、中間選挙に近づくほど、議員はより投票を集められる法律をサポートするでしょう。そのため、これらの法案が可決するチャンスが低くなる可能性があります。ITC延長は可決すると思います」。

ちなみに、SPVマーケットリサーチの最新データによると、2021年の全世界における結晶シリコン系と薄膜系を合わせた太陽電池の出荷量を国別に見ると、1位の中国が全体の69%を占めた。一方米国は7位であったがシェアは1%だった。さらなる脱炭素化を進めるためには、太陽光発電を含むクリーンエネルギーの導入拡大が欠かせないが、エネルギー安全保障の視点からは、「輸入で導入拡大」から「国産品で需要を満たす」に転換を図り、真の国産エネルギーを目指したいものだ。

年々下がる米国太陽光発電投資税額控除(ITC)の控除率


出典:SEIAの資料を元に編集部が作成

ITCの2022年の税額控除率は、住宅、非住宅用共に26%である。2023年には22%に下がり、2024年には、非住宅用に関しては2006年以降と同じ10%に戻り、住宅用に関しては税額控除の優遇措置は終了するため、SEIAは延長を求めている。

PROFILE

モベヤン・ジュンコ

太陽光発電電池メーカーで7年間産業経験を積んだ後、2006年から太陽光発電調査会社米ソーラーバズでシニアアナリストとして活躍。2013年よりジャーナリストとして、米国の太陽光発電政策や市場トレンドに関する記事を日欧米のメディアに多数執筆。


文:モベヤン・ジュンコ

SOLAR JOURNAL vol.41(2022年春号)より転載

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