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アルバトロス・テクノロジー 低コスト浮体式洋上風車の海上実験開始へ

浮体式洋上風車(垂直軸型)を開発するアルバトロス・テクノロジーは9月14日、ジェネシア・ベンチャーズから総額1億円の資金調達を行い、浮体式洋上風車の小型海上実験の準備を開始した。コスト削減による再生可能エネルギーの普及や純国産化による産業創造などを目指す。(画像:ウインドファーム想像図:風が吹く方向に20度まで傾く 平均風速程度ではほぼ直立)

低コストで製造可能
すべての部品を国内調達

日本は遠浅の海域が少ないため、洋上風力発電を本格的に進めるにあたっては、着床式ではなく浮体式が主力となると言われている。しかし、浮体式は超大型台風や冬期間の荒天にも耐えられるように設計するには、着床式よりも大幅に費用がかかることが課題となっている。

アルバトロス・テクノロジーが開発する浮遊軸型風車(Floating Axis Wind Turbine:FAWT)は、「回転する」円筒浮体で垂直軸型風車を支える仕組みだ。基礎を置く地面や海底が必要なく、クレーンを使わずに組み立てや海上設置ができるとしている。風車部分は、カーボン複合材料の連続引抜き成形により低コストで製造可能。発電機も含めてすべて国内調達できるという。

アルバトロス・テクノロジーは、電源開発(Jパワー)茅ヶ崎研究所、大阪大学と3者で浮体式垂直軸型風車の共同研究を実施し、革新複合材料研究開発センターICC(金沢工業大学)と連携して炭素繊維強化プラスチック風車の新たな製造方法を検討してきた。

従来の風車は、重量がある発電機を高い位置に置くため、頑丈なタワーと巨大な浮体を必要としていた。FAWTの垂直軸の風車は重い発電機を下に置くため全体が軽く、浮体を小さくできるという。また、海水を風車の軸受とする構造で、傾斜しても性能が低下しにくい特性があるため、最大出力時に風が吹く方向に20度傾くことを許容する。どの方向からの風でもエネルギーに変換し、風車の直径が10メートル以上であれば、性能は従来型の水平軸型風車と同等以上になるとしている。

24年度に
海上実験を開始へ

浮遊軸型風車は浮体も回転する

ジェネシア・ベンチャーズから調達した総額1億円の資金は、小型海上実験機の設計・開発に活用する。複数の大手電力会社や海運会社と連携して出力20キロワット未満の小型実験機を製造し、24年度に海上実験を開始する予定。風車部の製造は、連続引抜き成形を得意とする福井ファイバーテック(愛知)、浮体製造は、みらい造船(宮城)が担当する。

小型海上実験で解析、設計手法を確認したあと、大型機の海上実証プロジェクトにつなげる。将来的には商用機のプロバイダーとして風力発電事業者などと提携し、国内外の洋上風力プロジェクトへの入札参加を見込んでいる。

DATA

アルバトロス・テクノロジー ニュースリリース


取材・文/高橋健一

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電気運搬船のイメージ図(出典 パワーエックス)
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