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脱炭素の自治体交付金を大幅増 来年度予算案を閣議決定

政府は12月23日、来年度予算案を閣議決定した。再生可能エネルギー関連では、洋上風力発電の基地港湾の整備促進などに427億円。脱炭素に取り組む自治体を重点支援する交付金として350億円。洋上風力などで発電した電気を首都圏などの需要地まで効率的に送る「直流送電システム」の技術開発費などに10億円が計上された。

基地港湾の整備促進などに
427億円

20年9月に基地港湾に指定された鹿島港(茨城県鹿嶋市)

来年度の政府予算案では、一般会計の歳出総額が過去最大の114兆3812億円に達している。岸田首相が重視する防衛・GX(グリーントランスフォーメーション)・子ども予算を大幅に増額しているのが特徴だ。景気回復を前提に税収は過去最高の69兆4400億円を見込むが、35兆6230億円の国債を発行して歳入の3割を借金に依存する。

再エネ関連では、洋上風力発電の建設拠点となる「海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)」の整備促進などに427億円が計上された。基地港湾は、洋上風力発電設備の設置や維持管理に利用される。20年9月に秋田、能代(秋田県)鹿島(茨城県)、北九州(福岡県)の4港が初めて指定された。国土交通省は港を管理する自治体を対象に、22年3月から5月にかけて意向を調査した。その結果、基地港湾の指定を希望したのは、稚内、留萌、石狩湾新、室蘭(北海道)、青森、久慈(岩手県)、酒田(山形県)、新潟、福井、御前崎(静岡県)、伊万里(佐賀県)の計11港。指定されると、重厚長大な資機材を取り扱うことができる岸壁や埠頭用地、それに利用船舶が安全に航行できる航路・泊地などが整備され、最長30年間にわたり複数の発電事業者に埠頭を貸し付けられる。

30年度までの
自治体の脱炭素化を加速

22年4月に脱炭素先行地域に選定された秋田県大潟村

来年度予算案では、30年度までの脱炭素化に取り組む自治体を継続的かつ包括的に支援する「脱炭素交付金」に350億円を計上した。今年度当初予算の200億円から大幅に増額し、自治体の脱炭素化を加速する。このうち320憶円は「脱炭素先行地域」に選定された自治体に対して、太陽光や風力といった再エネ等設備の導入に加え、再エネ利用最大化のための基盤インフラ設備(蓄電池、自営線等)や省CO2等設備の導入などを支援する。30億円は、再エネを活用して地域の電力を賄うことを可能とする供給網の整備促進に充てる。環境省では、再エネの導入などによって脱炭素に積極的に取り組む「脱炭素先行地域」を25年までに、全国で少なくとも100か所選定することにしている。

政府は12月22日に開いたGX実行会議で「地域間を結ぶ系統(送電網)を、今後10年程度でこれまでの8倍以上の規模で整備を加速する」との基本方針を決めた。来年度予算案では、北海道と本州を結ぶ海底送電ケーブルの研究開発費用としてエネルギー対策特別会計に10億円を計上した。政府は30年度までに整備し、洋上風力などで発電した電気を北海道から首都圏へ送れるようにする。

政府はエネルギー安定供給と脱炭素化を推進するため、新たな国債「GX経済移行債(仮称)」を23年度から発行する。20兆円規模の資金を調達し、企業の脱炭素化の取り組みを支援する。民間からの投資意欲を高めて、今後10年間で官民合わせて150兆円以上のGX投資を目指す。GX経済移行債の償還財源は、二酸化炭素(CO2)の排出量をお金に換算して企業が負担する「カーボンプライシング(CP)制度」で賄う方針。

また、来年度予算案では環境省が新たに設立した官民ファンド「株式会社脱炭素化支援機構」に財政投融資で400億円を拠出する。脱炭素化支援機構は、国の財政投融資からの出資と民間からの出資(設立時は計204億円)を原資としてファンド事業を行う株式会社。50年のカーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素につながるさまざまな事業への投融資(リスクマネー供給)を行い、脱炭素に必要な資金の流れを太く、速くし、経済社会の発展や地方創生、知見の集積や人材育成など、新たな価値の創造を目指す。


取材・文/高橋健一

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