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洋上風力のO&M「5つの課題」とは? 欧州で実績ある技術豊富な土井製作所に聞く

風力発電設備のライフサイクルコストを低減するには、O&Mの最適化が欠かせない。土井製作所は欧州において実績のある、数々の風力発電のO&M技術を取り扱っている。同社の嘉悦崇代表取締役社長が、日本の洋上風力O&Mが直面する課題を解説する。

洋上風力が直面する5つの課題
日本の気候に合ったO&Mが必要

国内で洋上風力を導入するにあたっての課題は、NEDOの「着床式洋上風力発電導入ガイドブック(最終版)」によると「設置海域・コスト・社会基盤・環境影響評価・社会受容性」の5つだ。中でもコストの低減は、世界の再生可能エネルギーに共通する課題とされる。

しかし、絶えず厳しい波風にさらされる洋上風力の場合、O&Mコストは陸上風力の1.2倍以上だという。また、洋上風力のO&Mコストは、運転開始の10年後ごろから毎年増大する傾向にあることも報告されている。「ライフサイクル全体でのコスト低減に重要なことは、メンテナンスの効率化と、点検などの停止期間を短縮して発電量を増加させ、収益を向上することにほかなりません」と嘉悦氏は語る。

経済産業省は、風力発電設備全般に対して「風力発電設備の定期点検指針」に基づいた定期点検を求めている。ブレード、ロータ、ナセルなどの設備そのものに関しては、陸上でも洋上でも点検の内容に大きな違いはないという。洋上風力では、それに加えて海底送電ケーブル、洋上変電所、港湾設備などのメンテナンスも必要になる。

欧州の洋上風力におけるさまざまなO&M技術の実績から、嘉悦氏は「海外の先行事例を参照しながらも、風や雷など日本特有の気候に合わせた検査標準の整備や定期検査の義務化が重要です」と強調する。

事業の遅延にペナルティを検討
適切なO&Mが効率化につながる

足元では、国が洋上風力発電事業者の公募に向けて制度の見直しを進めている。次回のラウンド2では、運転開始時期が遅延した場合に保証金を没収するというペナルティが導入されるとみられる。つまり、これからの洋上風力発電事業には、今まで以上にスピードが求められるということだ。

それに伴って、洋上風力発電設備のO&Mにもスピードが要求されるようになると嘉悦氏は指摘する。「常に潮風が吹き寄せる過酷な条件のもとで洋上風力発電所のライフサイクルコスト全体を最適化するには、高度なO&M技術が不可欠です。日本の洋上風力発電に適したO&Mを行うことで、事業のスピードアップや効率化を図ることができます。それが、ひいては我が国の電気料金を最適化することにつながるのです」(嘉悦氏)

競争力ある洋上風力発電事業を育てるのに欠かせないO&M技術。欧州の洋上風力O&Mで深い知見を蓄えた土井製作所が、国内でますます本格化する洋上風力発電事業を力強く支える。

話を聞いた人

株式会社土井製作所
代表取締役社長 嘉悦崇氏


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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