【第2ラウンド動向】 秋田県八峰町、能代市沖の公募の行方
2023/01/10
経済産業省と国土交通省は12月28日、再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者の2回目の公募を開始した。秋田、新潟、長崎の計4海域が対象で、発電規模は計約180万kWに達する。このうち「秋田県八峰町、能代市沖」にはこれまでに6つの事業体が参入の意思を表明しているが、評価基準の見直しに伴い公募が一時中断するなど、異例の展開となっている。
公募が一時中断する
異例の展開
「秋田県八峰町、能代市沖」の促進区域(出典 経済産業省)
「秋田県八峰町、能代市沖」は、青森県と接する八峰町南部から能代市北部にかけての海域。国が示した公募占用指針によると、促進区域の面積は3239.4ヘクタールで、最大出力は35.6万kW。2022年12月28日から発電事業者の公募を開始し、2023年6月30日まで受け付ける。国による審査や第三者委員会による評価などを経て、2024年3月までに発電事業者が決まる見通し。
「秋田県八峰町、能代市沖」は2021年9月に洋上風力発電施設を優先的に整備する「促進区域」に指定された。2021年12月に発電事業者の公募をいったん開始したが、国が2022年3月、評価基準を見直す方針を示したことに伴い、公募が実質的に中断していた。この海域では、三菱商事洋上風力が2021年6月から環境影響評価の手続きを進めていて、2022年9月に第2段階の「環境影響評価方法書」の縦覧を終えていた。方法書によると、秋田県八峰町と能代市の沖合に出力1万1000~1万5000kWの風車を最大33基設置し、発電の最大出力は40万5000kWと見込んでいた。しかし2022年11月、国と秋田県に事業廃止を通知し、環境影響評価の手続きを中止している。同社は中止の理由を明らかにしていないが、国が評価基準を見直したことが背景にあるとの見方も出ている。
これまでに6事業体が
参加表明
「秋田県八峰町、能代市沖」には、これまでに6つの事業体が参入の意思を表明し、環境影響評価の手続きを進めている。このうち、ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)は、2017年12月にいち早く事業計画を公表した。その後、2020年9月に東北電力とENEOSが参画し、合同会社八峰能代沖洋上風力を設立している。JREは2012年8月に設立された再生可能エネルギーのスタートアップ企業。2022年1月に石油元売り最大手のENEOSに買収された。洋上風力公募の「第1ラウンド」には応札していない。第2ラウンドでは、JREが「長崎県西海市江島沖」で環境影響評価を実施している。
日本風力開発は、2019年2月に参入の意思を表明した。第1ラウンドで公募した「能代市、三種町、男鹿市沖」を含む秋田県北部全体の海域を対象に環境影響評価を実施している。計画によると、秋田県北部沖全体の発電の最大出力は72万2000kW。「八峰町、能代市沖」の個別の事業計画は明らかにしていない。日本風力開発は、青森県六ヶ所村や千葉県銚子市、石川県珠洲市などで、直営または子会社を通じて風力発電事業を展開している。ドイツ・ニーダーザクセン州にも、現地法人による風力発電所を設置している。第1ラウンドでは、豊田通商子会社のユーラスエナジーホールディングスなどとともに「秋田県能代市、三種町、男鹿市沖」と「秋田県由利本荘市沖」の2海域に応札している。
住友商事は、2019年7月に参入の意思を表明した。第1ラウンドで公募した「能代市、三種町、男鹿市沖」を含む秋田県北部全体の海域を対象に環境影響評価を実施している。計画によると、秋田県北部沖全体の発電の最大出力は54万kW。「八峰町、能代市沖」の個別の事業計画は明らかにしていない。第2ラウンドでは、「新潟県村上市、胎内市沖」「長崎県西海市江島沖」でも環境影響評価を実施している。
東京電力リニューアブルパワーは、2021年9月に事業計画を公表して環境影響評価の手続きを進めている。同社は、東京電力ホールディングスの再エネ事業会社。第1ラウンドでは、世界10カ国以上で再エネ事業を展開するオーステッド(デンマーク)と共同で「千葉県銚子市沖」に応札している。第2ラウンドでは、「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」でも環境影響評価を実施している。
RWE Renewables Japan 合同会社と九電みらいエナジーは、2021年11月に参入の意思を表明して環境影響評価を実施している。RWE Renewables Japan 合同会社は、ドイツに本社がある再エネ事業会社、RWE Renewablesの日本法人。第1ラウンドでも、九州電力子会社の九電みらいエナジーと共同で「秋田県由利本荘市沖」に応札している。第2ラウンドでは、RWE Renewables Japan 合同会社が「新潟県村上市、胎内市沖」で環境影響評価の手続きを進めている。
JERAは、2022年1月に事業計画を公表して環境影響評価を実施している。同社は、東京電力ホールディングス傘下の東京電力フュエル&パワーと、中部電力が50%ずつ出資し、燃料の上流開発・調達・トレーディング・輸送から、火力発電所の建設・運営までを手がけるエネルギー企業。第1ラウンドでは、北欧最大のエネルギー企業、エクイノール(ノルウェー)や電源開発とともに「秋田県能代市、三種町、男鹿市沖」と「秋田県由利本荘市沖」の2海域に応札している。第2ラウンドでは、「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」でも事業計画を公表して環境影響評価の準備を進めている。
「秋田県八峰町、能代市沖」は、評価基準の見直しに伴って事業者の公募が2022年3月に事実上中断し、同年11月に三菱商事洋上風力が環境影響評価を中止するなど、異例の展開が続いている。三菱商事不在のなか、6つの事業体が争う構図となっているが、隣接する能代港湾区域で国内初の商業運転を開始した各事業体の動きについても注視していく必要がありそうだ。
取材・文/高橋健一