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酒田市沖の洋上風力発電 山形県が想定海域案

酒田市沖への洋上風力発電の導入について山形県は1月24日、共同漁業権漁場となっている区域を想定海域とする案を示した。今年度中に想定海域と地元の意見をとりまとめ、事業化に向けて先行している「遊佐町沖」と同様に、再エネ海域利用法に基づく「有望な区域」への選定を目指す。

遊佐町沖の想定海域と接続


山形県酒田市沖の想定海域案(出典 山形県)

酒田市沖への洋上風力発電の導入を目指し、山形県は地元の漁業関係者や商工関係者などで構成する酒田沿岸域検討部会で事業化した場合に風車を設置する想定海域について議論を重ねてきた。山形県が示した想定海域案は、水深や船舶の航行、港湾、航空路、海底ケーブルの状況、漁業権の設定区域などとともに、海域を利用している漁業者の意見をふまえて設定した。北側は「有望な区域」に選定されている遊佐町沖の想定海域と接続し、南側は鶴岡市との境界にかけての共同漁業権漁場を想定海域案としている。大型船舶が航行する港湾エリアは除外した。山形県エネルギー政策推進課は「この範囲と区域であれば、漁業実態もすでに把握されており、利害関係者も特定されていることから、導入に向けた検討を進めることが可能と考えた」と説明している。

これまでの議論で、地元の漁業者からは「漁業者の意見の変遷をきちんと絵のなかに書き、いまの漁業者がどう考えて海域が決まったということが将来的にわかるような決め方をしていただきたい」「組合員を集めて酒田市沖の洋上風力について協議を行った。賛成、反対、どちらの意見もあったが、これからも丁寧な説明をお願いしたい」「遊佐町沖の洋上風力の話が出た時に、酒田の漁業者からかなりの反対意見が出たが、議論を重ね、遊佐の海域の事業に関しては、遊佐の漁業者の意見を尊重することになった。酒田の想定海域に関しては酒田の漁業者の意見を尊重したい」といった意見が出された。内水面の漁業関係者は「最上川でふ化事業をしているサケ、サクラマス、生育段階の一定期間を庄内の沿岸部で育つアユへの影響も考慮して議論を進めて欲しい」と要望した。商工関係者からは「酒田市沖で風車を設置する際、陸路の物資運搬など、現在の庄内の交通インフラを考えると脆弱な部分がある。交通渋滞をはじめ、地域住民の生活や経済活動が滞るようなことが露見するようなことがあってはならない」といった指摘があった。

酒田市沖
今年度中に想定海域を決定


有望な区域に選定されている「山形県遊佐町沖」

1月24日の検討部会では、新エネルギー・産業技術総合研究開発機構(NEDO)の担当者が酒田市沖で実施している「日本版セントラル方式」による調査について説明した。「日本版セントラル方式」は洋上風力発電の普及を促進するため、特定の海域で発電事業者を公募する前に国が一括して調査を行う新しい制度。酒田市沖では、風況や海底地盤、気象海象、環境影響評価関連、漁業実態、導入可能性(ポテンシャル)試算の6項目を調べた。その結果、水深は15メートル未満が9%、30メートル未満が43%、45メートル未満は97%、最も深い箇所は49メートルであることが報告された。また、岩盤が露出している箇所は確認されず、海底の多くは砂地であるという調査報告も示された。

山形県は、今年度中に4回目の検討部会を開催し、漁業振興策を検討するとともに酒田市沖の想定海域と地元の意見をとりまとめる方針。山形県沖では、秋田県境に近い遊佐町沖が事業化に向けて先行しており、3段階のうち2段階目の「有望な区域」に選定されている。山形県は、検討部会でとりまとめる想定海域と地元の意見を国に情報提供し、再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定に向けた有望な区域への選定を目指すことにしている。

DATA

山形県酒田沿岸域検討部会


取材・文/高橋健一

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