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世界初! TLP方式の浮体式洋上風力発電に合成繊維製ケーブル採用。軽量化でコスト低減

TLP方式の浮体式洋上風力発電の係留索として、合成繊維製ケーブルが採用された。これまで鉄製が主流だった係留索だが、合成繊維製ケーブルにすることで軽量化でき、コストやメンテナンスの負担を軽減できるという。合成繊維製ケーブルには、帝人のアラミド繊維が使われる。

浮体の係留索に合成繊維製ケーブル採用
素材は帝人のアラミド繊維

洋上風力発電のエンジニアリング会社、英国のマリン・パワー・システム(MPS)社は2月1日、TLP方式の浮体式洋上風力発電のテンドンと呼ばれる緊張係留部に、FibreMax社の合成繊維製ケーブルを導入すると発表した。TLP方式の緊張係留部にFibreMax社の合成繊維製ケーブルが導入されるのは、これが世界初だ。合成繊維製ケーブルには、帝人のアラミド繊維「トワロン®︎」が使われるという。

※アラミド繊維製ケーブルの構造
(中心部を占める黄色の繊維がパラ系アラミド繊維「トワロン®」)

TLP(Tension Leg Platform)とは、浮体を係留する方式の一つで「緊張係留」ともいう。係留索を海底に固定し、張力をかけて風車を支える仕組みで、通常、緊張係留部には銅管など剛性の高いものが用いられることが多い。今回、合成繊維製ケーブルを導入するMPS社の「PelaFlex」というTLPは、風車を傾けることなく安定させることができるという。

今回使われる帝人のアラミド繊維は、単位重量あたりの強度が鉄の8倍、重量が鉄の5分の1という合成繊維だ。従来、鉄製が主流だった浮体式洋上風力発電の係留索などにアラミド繊維を使うと、重量あたりの強度の向上、耐久年数の延長、メンテナンスの手間を軽減できるなどのメリットがある。(参考『世界で注目! 洋上風力発電における「アラミド繊維」の可能性』)

軽量化の波及効果大きく
コストに加え地域経済にも好影響

係留索に合成繊維製ケーブルを用いると、浮体式洋上風力発電の大幅な軽量化に役立つ。MPS社によると、合成繊維製ケーブルを導入しない場合と比べてコストを低減できるという。また、鉄製の係留策より輸送が容易なため、発電所近郊の物流事業者などを起用することもできるとしている。こうした特長から、合成繊維製ケーブルの活用は、事業コストの削減や地域の経済循環にも役立ち、洋上風力発電事業の発展に貢献すると期待される。

同社のギャレス・ストックマンCEOは「パートナー企業やサプライヤーは、まさにチームの一員。FibreMax社と提携したことによって、業界トップクラスの技術を取り入れ、世界市場に向けて信頼性の高い浮体式洋上風力発電のソリューションを開発できる」と話す。

FibreMax社の再生可能エネルギー部門の責任者であるサンダー・ファン・ヘルヴォート氏は「今回のプロジェクトは、MPS社のPelaFlexシステムと、帝人のアラミド繊維を用いた緊張係留部という2つの革新的な技術の結集だ。今後も、協力関係をさらに深めながらプロジェクトの成功を目指していきたい」と語った。

※写真は合成繊維(アラミド繊維)製ケーブルの一例。

DATA

Marine Power Systems NEWS


文:山下幸恵(office SOTO)

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