INPEX 英国沖大規模洋上風力の株式取得
2023/03/08
石油開発国内最大手のINPEXは3月2日、英国沖「モーレイイースト洋上風力発電所」の株式を取得したと発表した。三菱商事子会社の出資分を買い取った。出資比率は16.7パーセント。今後は、国内外で洋上風力発電の取り組みを加速する方針。
英国北部沖の
大規模発電事業に参画
モーレイイースト洋上風力発電所(出典 三菱商事)
モーレイイースト洋上風力発電所は、英国北部にあるモーレイ湾の沖合約22キロで、2022年4月に商業運転を開始した。9500キロワットの風車を100基設置し、総発電容量は約95万3000キロワット。発電した電力は英国のCfD(Contract for Difference)制度に基づき、15年にわたって電力小売事業者に売電する。
同事業の持株会社はモーレイイースト・ホールディングス(英国)。株主はEDP Renewables、ENGIE、中国三峡集団、Diamond Green Limitedの4社。このうちDiamond Green Limitedは、三菱商事の欧州・中東・アフリカ地域での発電事業の統括会社、Diamond Generating Europe(DGE)傘下に設立した中間持株会社。三菱商事グループと関西電力グループ、三菱HCキャピタルグループが出資していたが、IPEXは三菱商事子会社の出資分を買い取った。取得額は非公開。
洋上風力発電事業を
国内外で加速
長崎県五島市沖の積み込み作業(出典 INPEX)
INPEXは、国内外で石油・天然ガスなどの権益を持つ大手石油開発企業。2021年4月に国際石油開発帝石からIPEXに社名を変更した。2022年2月には「長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision @2022)」を策定し、洋上風力発電や地熱発電を中心とする再エネ事業を推進している。
長崎県五島市沖では、戸田建設が中心となって建設を進めている浮体式洋上風力発電事業に参画している。2100キロワットの風車を8基設置し、最大出力は1万6800キロワット。2024年1月の商業運転開始を目指している。洋上風力発電公募の「第1ラウンド」では、住友商事や東京電力リニューアブルパワーなどと共同事業体を設立して「秋田県能代市、三種町、男鹿市沖」に応札している。
2021年12月には、オランダ沖で操業している「ルフタダウネン洋上風力発電所」と「ボルセレ III/IV 洋上風力発電所」の株式を取得した。オランダの総合エネルギー事業会社「Eneco」が出資する2つの発電事業に参画し、洋上風力発電の先進地の欧州でノウハウを蓄積している。
ルフタダウネン洋上風力発電は、総発電容量が12万9000キロワット。オランダ西部にあるノルドバイクの沖合約20キロに3000キロワットの風車を43基設置している。ボルセレⅢ/Ⅳ洋上風力発電所は、総発電容量が73万1500キロワット。オランダ南西部にあるウエストカッペレの沖合約22キロに9500キロワットの風車を77基設置している。
英国沖の洋上風力発電事業に参画することについて、IPEXは「世界各地のプロジェクトで培った浮体式洋上設備の建設・運用経験を活かし、洋上風力発電事業への取り組みを加速します。今後も、エネルギー開発と安定供給の責任を果たしつつ、2050年ネットゼロカーボン社会の実現に貢献すべく、エネルギー構造の変革に積極的に取り組んでまいります」とコメントしている。
DATA
取材・文/高橋健一