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北九州・響灘をグリーン水素の一大拠点に。風力発電などの活用も期待

福岡県は、北九州市の響灘地区にグリーン水素の利活用拠点を構築するため、官民による協議会を立ち上げた。風力発電などによって水素を生成し、大規模な水素サプライチェーンの要所としたい考えだ。

北部九州の大規模拠点目指し
官民が構築に向けタッグ


(北九州市若松区の響灘風力発電施設。筆者撮影)

福岡県は4月27日、北九州市若松区の響灘臨海部をグリーン水素の利活用拠点として整備する方針を明らかにし、地元企業などで構成する「福岡県水素拠点化推進協議会」を設立した。会長を服部誠太郎 福岡県知事、 副会長を武内和久 北九州市長が務め、水素関連の企業や団体30社が会員として参画する。5月11日には第1回総会が開催された。

グリーン水素とは、水を電気分解して水素を生成する際に再生可能エネルギーを利用するもの。国は、水素をカーボンニュートラル達成に不可欠なエネルギー源と位置付け、大規模な水素サプライチェーンの構築を目指している。足元では、国家戦略としての「水素基本戦略」の改定に向けて、この5月末にもとりまとめが行われる。

その一環として、国は水素の利活用拠点を今後10年間で8ヶ所程度整備する考えを示しており、支援制度の予算化が予定されているという。県はこの支援制度を利用し、水素需給のポテンシャルが高い響灘地区を中心とした水素の利活用拠点を整備する考えだ。将来的には山口県や大分県のコンビナートなどとの連携も視野に、北部九州における大規模拠点を目指す。

拠点の構築にあたって、県は風力発電や太陽光発電のほかに下水や工業プロセス由来の水素を含めた水素供給のベストミックスを図る。また、自動車や鉄鋼などさまざまな産業が集積する地域特性から、水素需要のポテンシャルが高いことも強みだとしている。

水素関連の実証など着々
再エネ余剰電力の活用可能性も

福岡県や北九州市による水素に関するこれまでの取り組みには、2010〜2014年度に実施された「北九州水素タウン」がある。八幡東区東田地区に全長1.2キロメートルの水素パイプラインを敷設し、供給した水素を市街地で活用するものだ。2018年度に再始動し、実証事業を通じて法規制やコスト削減といった課題の抽出に取り組んでいた。

また、2020〜2022年度には、環境省の「CO2フリー水素製造・供給実証事業」において、水素サプライチェーンの低コスト化に向け、響灘地区の風力発電や太陽光発電の余剰電力を効率よく使用するエネルギーマネジメントシステムを開発した。

響灘地区では4月、最大出力22万キロワットの響灘洋上ウインドファームが着工したばかり。運転開始は2025年度を予定しており、グリーン水素も視野に入れた今後の活用方法が注目される。(参考:『出力22万kW 北九州響灘洋上ウインドファームが着工』)

DATA

福岡県:グリーン水素で成長する地域を目指し、「北九州市響灘臨海部」を中心とした水素大規模拠点を構築


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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