第2ラウンド 4海域に20社前後が応札か 今回も売電価格が焦点に
2023/06/30
経済産業省と国土交通省は6月30日、再エネ海域利用法に基づく促進区域で洋上風力発電事業者の2回目の公募を締め切った。第1ラウンドと同様に、各事業体が売電価格をどのように算定したのかが重要なポイントになりそうだ。
4海域の
公募締め切り
激戦の様相を呈している「新潟県村上市、胎内市沖」
洋上風力発電の事業者を公募しているのは、「秋田県八峰町、能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」、「新潟県村上市、胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の計4海域。事業者の公募は2022年12月28日に開始され、6月30日午後5時で締め切られた。
国の公募占用指針で、公募参加者は選定結果の公表前に、公募参加の事実や公募占用計画の内容などを意図的に開示しないことと定めている。このため、詳しいことは明らかにされていないが、4海域に合わせて20社前後の事業体が応札したとみられている。国による審査や第三者委員会による評価などを経て、2024年3月までに4海域の発電事業者が決まる見通し。
今回実施される2回目の公募「第2ラウンド」は、新たなルールが適用されている。事業者を選定する際、評価点全体の240点のなかに「事業計画の迅速性」という項目が設けられ、20点が新たに配点された。このほか「売電単価」に120点、「電力安定供給」に20点、「運転開始までの事業計画」に15点、「事業実施体制・実績」「資金・収支計画」「周辺航路、漁業などとの協調・共生」「地域経済への波及効果」「国内経済への波及効果」「関係行政機関の長などとの調整能力」に各10点、「運転開始以降の事業計画」に5点が配分されている。
第2ラウンドでは、ひとつの事業体が大半の対象海域を落札しないよう1事業者あたりの落札制限を設けている。1事業体あたりの発電・送電容量の上限を計100万kWとする規制を設け、これを超えた場合は新たな落札をできなくする。国は落札制限の対象とする公募は、現時点では第2ラウンドの4海域のみとする方針を示している。
新潟県沖は
事業迅速性を高く評価
4海域の公募占用指針(出典 経済産業省)
事業計画の迅速性評価基準については、提案する運転開始のタイミングによって段階的な評価基準(満点20点)を設定し、早期の運転開始を促している。「秋田県八峰町・能代市沖」と「秋田県男鹿市、潟上市・秋田市沖」は、2027年6月以前に運転を開始する提案を20点満点、同年7月~2028年6月運転開始を16点、同年7月~2029年6月運転開始を12点とする。
「新潟県村上市、胎内市沖」では、2029年6月以前に運転を開始する提案を20点満点、同年7月~2030年6月運転開始を13.33点、同年7月~2031年6月運転開始を6.67点とする。「長崎県西海市江島沖」では、2028年8月以前に運転を開始する提案を20点満点、同年9月~2029年8月運転開始を15点、同年9月~2030年8月運転開始を10点とする。
「新潟県村上市、胎内市沖」は、提案した運転開始時期が遅くなればなるほど、評価点を大きく引き下げているのが特徴だ。同海域は、公募する4海域のなかで面積と出力が最も大きく、第2ラウンドで最大の激戦区と言われているが、事業計画の迅速性を事業者側に強く求めている様子がうかがえる。
前回と同様
売電価格が焦点に
4海域の公募占用指針(出典 経済産業省)
第2ラウンドでは、対象となる4海域すべてにフィード・イン・プレミアム(FIP)を適用する。FIPは、再エネの市場価格に関係なく、決められた買取価格が維持される固定価格買取制度(FIT)と異なり、市場価格にプレミアムとして補助金が上乗せされるのが特徴。
今回の公募では、秋田、新潟の計3海域の入札上限価格を19円/kWh、「長崎県西海市江島沖」は29円/kWhに設定している。第1ラウンドでは、公募した3海域すべてで上限価格を29円/kWhに設定した。今回は秋田、新潟の計3海域で、前回よりも10円低い水準に定めている。「長崎県西海市江島沖」は地質構造上、海底に固定する基礎工法にジャケット式を採用することを想定しているため、ほかの3海域よりも上限価格を引き上げた。
評価基準が見直されたとはいえ、今回の公募でも「売電価格の低さ」の評価点が前回と同様に全体の5割を占めている。建設資材が高騰するなか、各事業体がFIPの適用をふまえて売電価格をどのように算定したのかが重要なポイントになりそうだ。
DATA
取材・文/高橋健一