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WIND EXPO風力発電展に出展! サプライチェーンの構築が進む「アラミド繊維製の係留索」

係留索のサプライチェーンを早急に構築することは、日本の浮体式洋上風力発電事業にとって喫緊の課題だ。欧州で浮体式の実証機に採用された「アラミド繊維製の係留索」がWIND EXPO風力発電展に出展するということで、サプライチェーンの実態やメリットなどについて帝人の金 辰一郎氏(Kon Tatsuichiro)に詳しく聞いた。

パラ系アラミド繊維製の
係留索の特長は?

パラ系アラミド繊維は、鉄と比べて単位重量あたりの強度が8倍と高いため、浮体式洋上風力発電の係留索を軽量化して、現場での輸送や施工における負担を軽減できます。一般的な輸送物と同じようにコンテナに積んで輸送でき、敷設作業時の取り回しもスムーズで作業時間も短縮できるため、施工船や輸送車両などのコスト削減にも役立ちます。

係留索にはポリエステルやナイロンといった合成繊維が用いられることもありますが、パラ系アラミド繊維の単位重量あたりの強度は、ポリエステルやナイロンの4〜5倍以上。係留索をより細く、より軽くデザインできるので、作業負荷を軽減するだけでなく、製造設備の投資を抑えることもできます。

浮体式洋上風力発電を支える係留索には、長期耐久性と敷設のしやすさが求められる。

浮体係留用の係留索には20年以上の長期耐久性が必要になりますが、アラミド繊維製の係留索は、強い張力の長期的継続や繰り返しの変動に対する強度や寸法の安定性に優れ、高い疲労特性をもつことが、ラボ試験で確認されています。さらに、当社のパートナー企業であるFibreMax社(オランダ)が、独自のパラレル編組技術(特許取得済み)で製造しているアラミド繊維製係留索は、長期にわたって係留長を一定に維持できるため、敷設時の「プレストレッチ作業」を大幅に削減できると考えられます。

「プレストレッチ作業」とは、施工前に係留索を引っ張って伸ばし、遊びをなくす工程です。FibreMax社のアラミド繊維製係留索は、強い力が絶えずかかり続けても伸びにくい、寸法安定性の高さも強みです。これによって、プレストレッチ作業の工期を短縮できることに加えて、係留索として長年使っても、当初の係留地点からずれるなどの問題が起きにくい利点があると考えています。

 

浮体の係留索として
実用化に向けた取り組みは?

アラミド繊維製の係留索は軽量で柔軟なため、地元の輸送業者を起用することで地域経済に循環をもたらすと期待されている。

係留索のサプライチェーンの構築は、大型の浮体式洋上風力発電を国内に導入するにあたって、喫緊の課題の1つだといわれています。1000トン以上の超高強度で大口径の係留索のサプライヤーが少ないことや、現実的な輸送方法が確立できていないことが課題視されていますが、アラミド繊維製係留索に関しては、製造や輸送のサプライチェーンが既にすでに実用段階にあります。例えば、前述のFibreMax社製のアラミド繊維製係留索は、軽量で柔軟性があることから、コンテナなどで輸送でき、輸入貨物の一般的な輸送方法で対応が可能です。また、製造設備も自動化され、極めてシンプルであるため、国内を含む需要地周辺への工場立地が計画しやすいなどの利点があります。

実機への導入については、洋上風力発電設備のエンジニアリングを行う英国のマリン・パワー・システム社がこのほど、TLP(テンション・レッグ・プラットフォーム)方式の浮体に、当社のパラ系アラミド繊維「トワロン」を使ったFibreMax社製の緊張係留部を採用しました。テンドンと呼ばれる緊張係留部は、海底に固定し、張力をかけて風車を支える重要な箇所です。

これまではスチール製が用いられていましたが、今回、「トワロン」の軽量性・高剛性が評価され、初めて合成繊維製が採用されたのです。今後、スペインのビルバオ沖に実証機を設置する予定です。WIND EXPO風力発電展では、アラミド繊維製の係留索を間近で見ていただくため、実証機をイメージした実物大のテンドンを初公開します。

 

係留索に関する
環境負荷軽減の取り組みは?

使い終わったアラミド繊維製の係留索を回収し、アラミド繊維として繰り返し使用することを目指す『フィジカルリサイクル』。回収にあたっては、顧客への払い戻しなどのサービスも検討している。

当社は、パラ系アラミド繊維「トワロン」の使用済みの係留索をそのまま回収して、再びアラミド繊維に戻すフィジカルリサイクルに取り組んでいます。すでに欧州の当社ラボでは、リサイクル後の繊維も、初めて使用する繊維と同じ性能を確保できることが実証されています。将来、使い終えた係留索を当社が回収し、繊維として再利用する循環リサイクルモデルを実現したいと考えています。廃棄物の削減のみならず、事業としての環境負荷(発電量対比のカーボンフットプリントなど)の低減にも貢献していきます。

アラミド繊維は、洋上風力発電のライフサイクル全体の持続可能性に役立つ新素材です。WIND EXPO風力発電展では、現在取り組んでいるリサイクルプロセスについても説明しますので、ぜひ、多くの方に当社のブースを訪れていただきたいと思います。

 

WIND EXPO 2024春の帝人ブースイメージ


実物大のテンドンも見られる!

WIND EXPO【春】に出展!
ブース番号:W18-81

 

PROFILE

帝人株式会社
アラミド事業本部インダストリアル課(Aramid Business Unit Industrial Section)

金 辰一郎氏(Kon Tatsuichiro)

問い合わせ


帝人株式会社 アラミド事業本部
TEL:03-3506-4628
E-mail:teijin-aramid-web@teijin.co.jp


取材・文/山下幸恵(office SOTO)

WIND JOURNAL vol.06(2024年春号)より転載

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