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浮体式導入元年、設置場所をEEZに拡大 今月上旬にも法案を国会提出へ

政府は、今年度中をめどに浮体式洋上風力発電の産業戦略と導入目標を策定する方針だ。それと並行して、排他的経済水域(EEZ)内に浮体式設備を設置可能にする関連法の改正案を今月上旬にも国会に提出する。

メイン画像:岸壁の整備が期待される久慈港(岩手県久慈市)

国内産業の強化と
魅力ある市場形成を議論

経済産業省と国土交通省は、洋上風力発電の導入拡大に加えて、関連産業の競争力強化、国内産業集積、インフラ環境整備などの相互の「好循環」を実現するため、2020年7月に「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」を設置し、同年12月に「洋上風力産業ビジョン(第1次)」を策定した。このビジョンでは、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWの案件を形成する目標を設定した。これまでに再エネ海域利用法に基づいて、着床式洋上風力を中心に計4.6GWの案件形成が進んでいる。

昨年6月には、官民協議会の下に新たな会議体を設置し、今年度中をめどに浮体式洋上風力産業戦略を策定し、国内外から投資を呼び込む方針。このなかでは、2040年までの洋上風力の全体目標である30~45GWのうち、どの程度を浮体式が担うのかについて、初めて目標値を設定するほか、国内産業の国際競争力の強化や、魅力ある市場形成などに向けた取り組みを議論する。

浮体式をEEZに拡大
2段階で事業者選定

政府は、浮体式設備の設置場所を現行の領海内からEEZに拡大する方針だ。洋上風力発電の先進地である英国の仕組みを参考にして、国が設置を申請した事業者に仮の許可を付与し、そのあと事業者が、漁業者などの利害関係者との調整を行い、合意が得られれば正式に許可する「2段階方式」を採用する。事業者の評価基準については、領海内と同じ内容とする方向だ。

2段階方式は、米国や豪州でも採用されている。早い段階から利害関係者との調整が進められることから、複数の海域で大規模プロジェクトを同時に展開することが可能になるというメリットがある。

設置可能エリアが
最大10倍に


日本の領海等概念図 (出典:海上保安庁)

日本の領海面積は約43万㎢だが、EEZを含めると約447㎢と、設置可能なエリアが最大10倍に増える。政府の総合資源エネルギー調査会「小委員会合同会議」では、委員から「EEZでは、広い漁場で漁を行うまき網漁業や底引き網漁業といった、いわゆる沖合漁業との協調が必要となる」、「従来の沿岸における共生策では、地域振興というコンセプトがあったが、EEZでは異なるものになるのではないか」といった課題が指摘された。

浮体式の導入を検討している自治体関係者からは、「事業実施区域が遠く離れているため、どの市町村の沖合なのかを決められないケースもあるのではないか」といった疑問の声も聞かれる。浮体式の先行区域である長崎県五島市沖や岩手県久慈市沖では、事業化に向けての模索が続く。着床式の適地が限られる日本は、浮体式の研究開発を加速していく必要がある。そのために、国を挙げて取り組むべき課題は少なくない。


WIND JOURNAL vol.6(2024年春号)より転載


取材・文/高橋健一

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